プレーは荒削りだが、そのタフネスとアジリティーが申し分ないファン・ウィジョ。ガンバの新エースの座を掴めるか!? 写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ27節]鹿島2-1G大阪/9月23日(土)/カシマスタジアム
 
 後半アディショナルタイムに逆転ゴールを決められた。ガンバ大阪にとっては、ダメージの残る黒星だ。
 
 前半は開始7分に先制点を挙げるなど、出色のチームパフォーマンスを披露した。ところが終了間際に同点とされると、形勢は一気に逆転。後半は王者・鹿島アントラーズの総合力に圧倒され、手も足も出せない。再三のピンチをなんとか凌いで1ポイント奪取を図ったものの、最後は相手CB植田直通のCKヘッドに屈した。
 
 そんな完敗に終わったゲームで、涙ぐましいまでの献身を見せていたのがファン・ウィジョだ。今夏にKリーグ城南FCから移籍してきた韓国代表FWで、開始7分に仰天ゴールを決めた張本人だ。GK東口順昭のパントキックを敵陣深くで受け、足下に収めると、俊敏な身のこなしで鋭くターン。背負っていたCB昌子源をわずかに引き離すと、ゴール前25メートルの位置から迷わず右足を振り抜いた。
 
 いまひとつパンチの足りないショットながら、これが元日本代表GK曽ケ端準の意表を突いてゴールイン。韓流ストライカーは、「東口が素晴らしいボールをくれた。持ち出した瞬間、どういうわけか急に『撃たなければいけない!』という気持ちになって……。いいコースに飛んでよかった」と、照れくさそうに振り返った。キーパーの位置は見ていない。無謀ともいえる強引さが生んだ、言うなれば天性の感覚で決めたゴールだ。
 
 試合を通して際立っていたのが、ボールへの異常なまで執着心とチェイシング。絶え間なくダッシュを繰り返し、90分間で鹿島のボール保持者に6回もスライディングを仕掛けた。前半は重鎮、遠藤保仁が前線に配備され、2トップを形成。このふたりの追い込みがガンバを前がかりにさせ、主導権を握った。
 
 だが後半、長谷川健太監督は遠藤を下げて、基準点型の長沢駿を投入する。単調なロングボールが増え、ガンバは全体のラインが間延びしていく。プレスのスターターとして十二分に機能していたファンも、後半は持ち前の機動力が空回り。それでも、無駄だと分かっていても、死ぬ気でボールを追い続けた。
 
「水曜日の天皇杯(柏レイソル戦)は出たかったけど出れなかった。僕は休養が十分なのだから、ほかの誰よりも走らなければいけない。貢献しなければいけないと思っていた。点を決めてもチームが勝てなかったから、心の底からは喜べないものだよね」
 
 図抜けたフィジカルを持つが、どこか荒削りで、ポストプレーの精度も水準以上とは言えない。それでも愚直なまでにひたむきにゴールを目ざし、フォア・ザ・チームの精神を貫いて見せる。どこかスマートにプレーするばかりで、闘志と気迫に欠ける選手が多い現在にガンバにあって、ファンは眩いばかりの輝きを放っていた。
 
 かつてアトレティコ・マドリー時代のジエゴ・コスタ(現・チェルシー)は「守備的FW」と呼ばれていた。もちろん、揶揄ではない。ディエゴ・シメオネ監督の戦術を体現すべく、みずからが急先鋒となって身を削り、チーム全体の闘争心を喚起していた。浪速にやってきた25歳の韓国人選手と、その姿が重なるのだ。
 
 古典的で味のあるストライカー、ファン・ウィジョ。常にマックスで闘い続ける様を見て、胸が熱くなった。そして、少しホッとした。
 
 こんな気骨のある点取り屋が、まだガンバにはいたのだ。
 
取材・文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)