結婚相手選びに「愛」が必要なのは言うまでもありませんが、一生涯を共にする相手ですから、愛以外にも収入や家族構成などを考慮する方もいらっしゃるでしょう。とりわけ「学歴」を気にする方は少なくないはず。良し悪しは別としても、学歴による収入格差が現実にある以上、特に女性にとっては「どうでもよい」ポイントではありません。

男性も結婚相手に高学歴を求める

 しかし最近、男性側も結婚相手に高学歴を求める傾向にあるようです。

 昨今「男性の年功序列」による給与体系が崩れ、ひと昔前の「お父さんが外で頑張り、お母さんが家を守る」という専業主婦モデルが成り立たなくなっています。そのため男性も「強いパートナー」を求め、結婚・出産後も仕事を長く続けられる女性との結婚を望んでいるのです。

 これらの条件を満たしやすい、育児休職や時短勤務などの福利厚生が整った「大手企業勤務」や資格が必要な「専門職」の女性は必然的に学歴が高くなります。内閣府男女共同参画局では、50歳時点で「一度も結婚したことがない」男女の割合である「生涯未婚率」に最終学歴の情報を加味したデータを平成2年から10年おきに発表しており、その結果は以下の通りです。

【平成2年(昭和15年生まれ)】

             女性   男性
生涯未婚率の全体平均   4.3%   5.6%
小・中学校卒       3.7%   8.2%
高等学校卒        3.9%   4.3%
大学・大学院卒      8.6%   2.9%

 戦前生まれのこの世代の女性は、小・中学校卒の未婚率が一番低く、つまり「最も多く結婚している」ことになります。一方、大学・大学院卒は8.6%と全体平均の実に2倍。それだけ「生涯独身の可能性が高い」ということです。農業などの一次産業が盛んな時代で、勉学よりも、早く家庭に入って家事や育児、家業に従事することを優先する。そうした価値観が見て取れます。

 逆に、男性は学歴が高ければ高いほど未婚率が低くなる傾向にあります。

高校進学率上昇で「高卒女子」人気に

【平成12年(昭和25年生まれ)】

             女性   男性
生涯未婚率の全体平均   5.8%   12.6%
小・中学校卒       6.4%   21.1%
高等学校卒        4.8%   11.9%
大学・大学院卒      9.0%   7.6%

 昭和22〜24年のベビーブームに生まれた、いわゆる「団塊世代」に近く、高度成長期に青春を過ごした世代です。女性の小・中学校卒は平均を上回っており、高校卒が最多に。大学卒の未婚率は引き続き高い水準にあります。高校進学率が10年前の5割から7割に上昇、女性の社会進出が進んだことから、急増した「高卒女子」がもてはやされた時代です。男性は引き続き高学歴ほど有利です。

【平成22年(昭和35年生まれ)】

             女性   男性
生涯未婚率の全体平均   10.6%  20.1%
小・中学校卒       15.5%  35.2%
高等学校卒        8.6%   20.6%
大学・大学院卒      12.8%  13.8%

 さらに10年後、世は高度成長期を終えバブルへ。高学歴・高身長・高収入の、いわゆる「三高」が結婚の条件とされ、学歴による収入格差が顕著になってきますが、生涯未婚率は全体的に上がります。全体平均は男女ともに10%を超え、「結婚は絶対にするもの」という認識から「生涯独身も選択肢」へと変化したのかもしれません。

 女性はここでも高校卒が強いのですが、小・中学校卒の未婚率が初めて大学卒を上回りました。小・中学校卒の未婚率は男女とも極めて高くなっていますが、当時の高校進学率が9割超だったことを考えると、小・中学校卒の人には貧困や非行などの問題があったのかもしれません。

女性が“吟味”される時代へ

 こうして過去のデータを見てみると、女性は高校卒、男性は大学卒が「結婚には有利」と言えますが、大卒男性がいつの時代も強いのに対し、高卒女性は少し事情が異なります。以下は、高卒女性と大卒女性の生涯未婚率の「差」を比較したものです。

      高校   大学   差
平成2年  3.9%    8.6%   2.2倍
平成12年  4.8%   9.0%   1.8倍
平成22年  8.6%   12.8%   1.5倍

 このように両者の差は時間の経過と共に縮まっており、次回調査(平成32年)でその差はさらに縮小することが見込まれます。男性の学歴や収入を“吟味”していた女性も男性から吟味され、男女ともに高学歴・高収入でなければ結婚できない時代が近づいているのかもしれません。

(株式会社あおばコンサルティング代表取締役 加藤圭祐)