流暢な英語を話す三木谷氏。賛否がある中でも熱心に社内公用語化を進めてきた(撮影:今井康一)

授業時間は1回75分、毎回皆の前で英語のプレゼンテーションをする課題が出されるうえ、授業に向けては毎週150分程度の予習が必須……。子ども向けの英語レッスンとしてはなかなか“スパルタ”に見えるこのプログラムは、国内ネット通販大手の楽天が10月に開業する英語学習教室「Rakuten Super English ジュニア」で実際に行われるものだ。

自由が丘駅から徒歩5分、閑静な住宅街の中に、Rakuten Super English ジュニアの教室がある。8月中旬に開校の告知サイトを開設して以来、ここで説明会や体験レッスンを重ねてきた。10月2日からは、平日に午後2コマ(月曜は1コマ)、休日に午前と午後を合わせて6コマのレッスンが本格スタートする。

社内公用語化の知見をフル活用

楽天といえば2012年、三木谷浩史会長兼社長の肝いりで、本格的に英語を社内で公用語化し大きな話題となった。現在は会議や資料など、社内のやり取りはすべて英語を前提に行われている。また、昇進にはTOEIC基準点のクリアを条件にするなど、人事評価の面でも英語を重要視している。


クラスは学年や年齢で区切らない。学校の教育とは異なる形だ(記者撮影)

この取り組みを社内に浸透させる過程で、楽天内には独自の英語学習ノウハウが蓄積されていった。

これを外部にも提供し、事業化してみようということで、同社は今年4月、英語学習アプリの提供や法人への英語教育コンサルティングを行う「Rakuten Super English」の事業をスタート。そこに今回、リアルの教室を持つ子ども向け英語学習サービスが新しく加わった形だ。

教室の対象学年は小学3年生から中学1年生。クラスは学年で区切らず、体験授業を通じて判定する習熟度で分ける。大まかには、小学校で習う表現をいくつか話せる生徒を対象にした「レベル1」と、簡単な自己紹介ができる生徒を対象にした「レベル2」の2つを用意している。

この英語学習教室の最大の特徴は、「反転授業」と呼ばれる学習スタイルだ。子ども向けに限らず、一般的な塾や教室は、まず対面授業で基本の学習内容の説明、反復演習などを行い、生徒は自宅で宿題を解きながら復習する。

だが反転授業の場合は、生徒自身がまず教材を使って自身で学び、わからない部分を整理してから教室に来るという順番で行う。教室では疑問の解消や反復演習、応用に重点を置く。

教室ではアウトプットが中心に

この学習法について、同教室の立ち上げを担当した楽天・新サービス開発カンパニーの伴大樹氏は多くの利点を指摘する。「予習の段階で主体的な勉強の進め方を習得できる。また、授業ではわからない点を先生に自分で聞かなければならないので、疑問点の把握や論点整理、考えを伝える訓練になる。そしてこれらが習慣づけられると、授業では発話の時間を多く取れ、習得スピードが速くなる」。

教室では、テキストの内容の振り返りは前半25分のみ。あとの50分はその日のプレゼンテーションのテーマに沿って各人が準備をしたり、順番にプレゼンを行ったりという、アウトプット中心の構成で進められる。


授業はプレゼンなどのアウトプットが中心となっている。発信する力を重視した構成だ(記者撮影)

子どもが律義に予習をしてくるのかと疑問を持つかもしれないが、その対策も練られている。生徒には予習として、独自開発したアプリ「まなみ〜」を使って行う英単語学習が毎週課されるが、これには楽天で長年蓄積されてきたゲーミフィケーション(ゲーム性を盛り込んで効率化する手法)の要素が取り入れられている。

「まなみ〜」は英単語の勉強をしながら、ゲーム感覚でキャラクターを収集するというアプリになっている。各レベルのテストをクリアしていくと、そのたびにキャラクターを集めることができ、復習問題をきちんとこなすとレアキャラが出現する場合もある。各自のアプリのトップ画面にキャラを配置したり、壁紙を変えたりして楽しむこともできる。


「まなみ〜」など、ITツールを用いる勉強法はまさに楽天流(画像:楽天)

子どもだましと思うかもしれないが、「中には小学3年生にして、数カ月間で高校2年生レベルの単語まで到達するほどのめり込む生徒もいる」(伴氏)というから、学習効率がいいのだろう。

こういったITツールを用いる勉強法は、楽天が英語の社内公用語化を進める際、特に効果が出た取り組みだった。「自分の成長を短いタームで確認できることは大きなモチベーションにつながる。また、スマートフォンやタブレットですき間時間に取り組めることも効率を高めた」(楽天の新サービス開発カンパニー教育事業部ジェネラルマネージャーの葛城崇氏)。

こと子どもの英語学習においては、ITツールは保護者からのニーズを満たすのにも役立っている。「まなみ〜」とともに、生徒が予習に使うWebサイト「Rakuten Learning System」には、保護者も専用IDでログインでき、子どもの予習の進捗状況、教室での授業の進捗状況、プレゼンの動画などを閲覧することができる。

2017年初から約8カ月間行ったテスト授業の中で、葛城氏はこのシステムに一定の手応えを感じたという。「教室で何をやっているのか、ちゃんと身に付いているのかわからない、というのが、親御さんから最もよく聞かれる悩みだった。その点がシステムを共有することで解決し、とても喜ばれている。お子さんからしても、親にテストの結果やプレゼン動画を見てもらい、褒めてもらえるのはモチベーションになる」。

新しい学習法を示すショーケースに


テキストに用いられる「Rakuten Learning System」はタブレットやPCから閲覧できる(記者撮影)

授業料は1カ月あたり1万4800円(初月無料、入会金・教材費は別途必要)。「週1回75分という授業時間でこの価格なら、他社のサービスと比べても高くないはず」と、葛城氏は自信を見せる。

自由が丘校では10月のレッスン開始とともに、教育関係者の見学も受け入れていく。伴氏は「楽天流の新しい学習法を提案するショーケースとしての役割も持たせたい」と話す。2校目、3校目の展開については現段階では計画していないが、「需要があれば考えていきたい」という。

2020年からの学習指導要領では、今まで小学5・6年次で行われていた「外国語活動」の授業の開始が小学3・4年次に前倒しされ、5・6年次では、国語や算数と同様に成績がつけられる「外国語」の授業が始まる。英語学習に対する関心がいっそう高まる中、英語学習関連の事業が楽天の「新しい顔」として存在感を増すかもしれない。