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もくじ

(1)アウディ・スポーツクワトロ vs TT S
ー 老兵は消え去るのみ、か
ー アウディ・スポーツのルーツ
ー RSでなくてもハイパフォーマンス
(2) アウディ・スポーツクワトロ vs TT S
ー 故障を疑うほどのターボラグ
ー 要スキルのクワトロとイージーなTT
ー まさかの楽しさを味わえるTT

故障を疑うほどのターボラグ

初めは、どこか壊れているのかと思った。エンジンは変わらず5気筒の快いサウンドを放つが、ブランティングソープのテストコースを加速していくにつれ、背後には盛大にスモークが上がり、次の瞬間にはエンジンのパワーがまったくなくなったのだ。

これ以上走らせるのは無理かと思ったが、クルマの後ろに広がった白い雲は突如消え去った。それはスモークではなく、マフラーから噴き出した単なる水蒸気だったからだ。それでも、やはりパワーは出ない。回転は2000rpmだ。

そこから回り続け、3000rpmに差し掛かるとブースト計の針がピクリと動いた。そして3500rpm。針はフルに跳ね上がると、クワトロはやや遅れてエアを鼻先から吸い込み始め、エンジンは独特のサウンドを発し始める。そこからは、現在の目で見ても速い。1983年当時なら、魔法のように感じられたことだろう。

要スキルのクワトロとイージーなTT

とはいえ、正直言って扱いにくさもある。ホイールベースの短縮は敏捷性を増す、ランチア037のようなレース専用ともいえるミッドシップのライバルへの対抗策だった。だが、クワトロはやはりノーズヘビーで、それに激しいターボラグやスローなギアボックスも加わるため、ドライビングの許容範囲が狭いのである。このクルマに合った運転を正確に行えば非常に楽しいのだが、古さを感じないといえばウソになる。

対照的にTT Sは、なににもましてイージーに感じられる。周回を重ねるほどに、それはスポーツクワトロをかすませる。この古いアウディのドライバーは、持てる時間と知力のすべてをこのクルマが走りたいように走らせることに費やさなければ、速さを得られない。

その点、TT Sはトルクで上回るだけでなく、その発生回転数は半分以下。しかも試乗車のDCTギアボックスは、それを楽に引き出せる。

まさかの楽しさを味わえるTT

少なくとも個人的には、TT Sがいかに楽しいかということに驚かされた。アウディは、楽しんで速く走るという点においては、どのメーカーにも増してしくじりを重ねてきた。そしてTT Sと同じくらい速く能力のあるどんなクルマも、ドライバーをないがしろにしかねないリスクをはらんでいる。

しかし、これは違う。単に速いだけではなく、敏捷で夢中になれるのだ。そのことこそ、今回の最大のサプライズだった。

(3)につづく