ピロリ菌が発がんタンパク質を細胞に「注射」する(東京大学の発表資料より)

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胃がんは、2017年9月に発表された国立がん研究センターの調査でも日本人男性がかかるがんのトップで、毎年約5万人の男女の命を奪っている。

その胃がんを引き起こすピロリ菌のタイプが、欧米型ピロリ菌より100倍以上も発がん性が高い「超悪玉菌」であることを東京大学の研究チームが突きとめ、米科学誌「Cell Reports」(電子版)の2017年9月19日号に発表した。日本をはじめ東アジアで胃がん発生率が高い要因とみられ、胃がん予防や早期治療法の開発への応用が期待されている。

日本のピロリ菌と欧米のピロリ菌の差がスゴすぎ

東京大学の発表資料によると、ほとんどの胃がんはピロリ菌の感染から発症する。世界人口の約半数がピロリ菌に感染している。ピロリ菌は胃の細胞に取りつくと、針を差し込んで発がんタンパク質「CagA」を注入する。CagAは細胞を増殖させる酵素と結びつき、異常に活性化することでがんの発症を促す。

研究チームがCagAと酵素の結合のメカニズムを調べたところ、欧米などに生息するピロリ菌が産生するCagAは、1本の爪で酵素に結び付くタイプだった。ところが、東アジアのピロリ菌が産生するCagAは2本の爪を持っていることがわかった。そして、両者の結合の強さの違いを分子間の結合力を測る特殊な装置で計測すると、東アジア型の結び付きの力は欧米型より100倍以上強いことがわかった。このことが東アジアに胃がんの発症率が高く、欧米に少ない原因の一つと考えられるという。特に日本は世界最多発症国とされており、世界の年間胃がん死亡者(約72万人)の約7%を占める状態だ。

今回の研究について、研究班リーダーの畠山昌則教授は発表資料の中でこうコメントしている。

「これまで我が国の歴史の中で、徳川家康、武田信玄、山岡鉄舟、桂太郎、伊藤整、尾崎紅葉、岩崎弥太郎、手塚治虫、越路吹雪、武見太郎などの著名人を含む多くの日本人の命が(東アジア型ピロリ菌により)奪われてきました。この研究により、東アジア型CagAの構造を分子レベルで初めて明らかにしました。分子の結合を阻止する薬剤の研究を進め、胃がんの予防と早期治療の革新的な技術の開発に役立てたい」