堅実女子のお悩みに、弁護士・柳原桑子先生が答える本連載。本日の相談者は齋藤恵美子さん(仮名・39歳・派遣社員)。

「先日、母が71歳で亡くなりました。がんが見つかってから1年半、闘病の末に息を引き取りました。母も病気がかなり進行していることを最初に聞いてから、終活みたいなことをして、私達は家族でいろんなところに旅行に行きました。

最後は自宅看護になって、半年くらいは父と私達きょうだい3人でケアをしていたので、心の準備はできていました。ですから、家族は割と落ち着いて母の死を受け入れられたと思います。

問題は、亡くなったときに母の戸籍を見たら、実はバツイチで子供がひとりいたこと。母は18歳のときに結婚し、19歳で子供を産んで21歳で離婚していました。それから夜間大学に通って商社に勤務し、父とは28歳で結婚しています。

これは、父も全く知らなかったので、驚いています。初婚だと思い込んでいたようです。父は同じ年でありながら、実年齢よりも落ち着いている母のことを尊敬していたようですが、”そんな理由があったのか”とショックを受けているようでした。母は、知らなくていいことはあえて言わないというタイプの女性です。

母が21歳で離婚してから、おそらく50年ほど会っていない子供は、名前を見る限り男性なので私にとっては異父兄にあたります。現在52歳になっていて、母の郷里である山梨県甲府に住んでいるようです。

母の遺産は1500万円の生命保険と1000万円ほどの貯金のみです。母の遺言書はありません。これは異父兄にも相続する権利があるのでしょうか。

異父兄には全然会ったこともないし、繰り返すようですが、父も私達きょうだい3人も、結婚歴や異父兄について、母からも一言も話を聞いたことがありません。異父兄もきっと家庭があると思いますので、こちらからの連絡もきっと迷惑なはずです。無視したいのですが、その場合はどうすればいいのでしょうか」

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは……?

さて、この異父兄弟も母の子であり、母の相続人になります。生命保険については、母を被保険者としている保険で、受取人を指定されている場合は、その方に保険金の支払いがなされ、遺産分割の対象とする必要はありません。

銀行預金については、遺産分割の対象となり、相続人全員の合意で遺産分割協議を成立させる必要があるため、無視することはできません。連絡を取って、遺産を分配することが必要です。

亡くなってから家族のだれもが知らなかった血縁関係や、隠し財産などが判明し、驚く遺族も少なくない。



■賢人のまとめ
相続人の全員の合意を得てからでないと、後に大きなトラブルになるケースも。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/