大ヒット漫画『100億の男』創作のきっかけとは…?

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 忘れられないあの漫画。そこに描かれたサラリーマン像は、我々に何を残してくれたのか。「働き方改革」が問われる今だからこそ、過去のコンテンツに描かれたサラリーマン像をもう一度見つめなおして、何かを学び取りたい。現役サラリーマンにして、週刊SPA!でサラリーマン漫画時評を連載中のライター・真実一郎氏が、「サラリーマン漫画」作者に当時の連載秘話を聞く連載企画。

 第4回目に取り上げるのは、サラリーマンを主人公にした漫画と言えばこの人、国友やすゆき先生。バブル崩壊後のサラリーマンのサバイバル状況を予見した『100億の男』、そして中年男の煩悩が哀しく炸裂する『幸せの時間』。時代ごとに異なるサラリーマンの欲望を描いてきた大ベテランは、実は働き方改革の実践者でもあった。

 今回も、前回に引き続き自由奔放な出版社社員を描いたバブルの金字塔『ジャンクボーイ』について伺った。

◆バブルと寝た漫画『ジャンクボーイ』

――最近『ジャンクボーイ』を全巻読み直したんですが、当時のバブル景気の勢いがまるまる詰まっているというか、気持ちいいくらいに男の欲望が全開なんですよね。

国友:後から担当に「この漫画は時代と寝た漫画だよね」って言われたんだけど、本当にバブルが終わったら急に売れなくなった(笑)。でもそれくらいドライブ感のある漫画だった。この前、久しぶりに原稿を引っ張り出してfacebookにあげたら、繋がっている作家さんたちで「大ファンだった」と言ってくれた人がたくさんいて、すごく嬉しかった。同じ漫画を描いても、ただ編集に渡してお金もらってる世界と、こういうリアクションがある世界と、全然違う。その快感が忘れられない。

――『ジャンクボーイ』って、出版社の編集部を舞台とした、広い意味でのサラリーマン漫画だと思うんですけど、この着想ってどうやって生まれたんですか?

国友:『ジャンクボーイ』って、僕が作ったというより、優秀なスーパー編集と出会ったから出来たんですよ。実はね、「劇団☆新感線」に中島かずきという脚本家がいるんだけど、中島が当時『漫画アクション』の編集部にいて、彼が担当だったんですよ。『ジャンクボーイ』は彼と一緒に作ったんです。

――えっ、それって公表されていることなんですか?

国友:まあ内々ではみんな知ってることなんですよ。アクションに最初に呼ばれた時に、最初は編集長が僕に弓月光さんみたいな漫画を描かせようとしたらしいの。下着メーカーの話。安易だよね(笑)。でも中島君が来て、「あれやめましょう、編集者の話をやりましょう、タイトルも『ジャンクボーイ』にしましょう」って、もう決まってるんですよ。

 彼がもうコンセプトを持ってた。僕はほとんど彼に踊らされただけだったんですよ。それで500万部のヒットになっちゃった。ただね、彼とはめちゃくちゃ打ち合わせをしました。毎回7〜8時間とか当たり前で。この時、改めて物語の作り方を再勉強しました。

――500万部と言われてますが、体感ではもっとヒットしていたような印象があるんですよね。

国友:1986年かな、『ジャンクボーイ』って、電通の出してる業界誌で「今年のトレンドを最も反映している漫画」の1番に選ばれたんですよ。世の中がバブルで、マハラジャで踊って、クリスマスに3万円のディナーに行かなきゃいけない、っていう時代だったんですよ。その中で一番時代に乗ってる漫画と言われたわけだから、実際売れた部数よりも強いインパクトがあったんだと思うんです。

――10年間苦労した後での大ヒットとなるわけですが、連載してどれくらいで手ごたえを感じましたか?

国友:連載スタートでいきなり読者アンケートが2番だったんですよ。当時の『漫画アクション』って凄く勢いがあって、相原コージ君とかジョージ秋山さん、かざま鋭二さんとか柱が4本も5本もあった。とにかくライバルがひしめいていて、そんな中でトップ5にずっと入ってたんですよ。