W杯出場を決めた今、代表で試してほしい選手(4)
冨安健洋(DF/アビスパ福岡)

 先日開幕したUEFAチャンピオンズリーグで、1998年10月生まれの18歳がCLデビューを果たした。

 RBライプツィヒ(ドイツ)のDFダヨ・ウパメカノである。

 ウパメカノは本業である守備ではもちろん、自らボールを縦に持ち出して効果的な縦パスを打ち込むなど、攻撃の組み立て役としも十分な働きを見せた。チームはASモナコ(フランス)相手に1-1で引き分けたが、18歳の新鋭DFにとっては、上々のデビュー戦だったと言えるだろう。

 過去、若くしてW杯やユーロ、CLなどの大舞台にデビューし、名をはせるのは、FWなどの攻撃的ポジションの選手が多かった。

 誰が誰をマークし、どうなったら誰がどこをカバーするといった組織的な連係が不可欠な守備的ポジションの選手に比べると、旬なアタッカーにはスポット的にチャンスが与えられやすいのが、その理由だろう。言い換えれば、守備的ポジション、なかでもセンターバックには経験が必要であり、その裏づけがないと起用されにくい、ということになる。

 とはいえ、冒頭に挙げたウパメカノのように、若くして世界トップレベルの舞台に立つセンターバックもいる。若く経験が乏しいからといって起用をためらえば、その選手の成長を阻害することになりかねず、ひいてはチームの強化にもマイナスになりかねない。

 それは、クラブチームだけの話ではない。代表チームでも同じことだ。

 例えば、昨年のユーロ2016で決勝のピッチに立ったフランス代表のDFサミュエル・ウンティティは、1993年11月生まれの当時22歳。また、2010年W杯で優勝したスペイン代表のDFジェラール・ピケは、1987年2月生まれの当時23歳だった。

 あるいは、ドイツ代表のDFジェローム・ボアテング。2014年W杯の優勝メンバーである彼は、1988年9月生まれの当時25歳だったが、さかのぼること4年、初めてメジャートーナメントに出場した2010年W杯のときは(主に左サイドバックとしての出場だったが)、まだ21歳だったのだ。

 世界に目を向ければ、センターバックだからといって若い選手が出てきていないわけではない。起用を決断する監督にとっては、それなりに勇気が必要なことだろうが、長い目で見れば、若い選手に高いレベルでの経験を与えることはチームの強化にもつながる。ボアテングの例を見ても、21歳のときの抜擢があったからこそ、4年後に大きな成果が得られたと言ってもいいだろう。

 翻(ひるがえ)って、日本代表である。

 W杯最終予選も終盤になって、ようやくDF昌子源がセンターバックのポジションをつかんだが、その昌子でさえ1992年12月生まれの24歳。しかも最終予選終盤での台頭は、戦略的に育てられたというより、突然序列を上げた感が強く、昌子に続くセンターバックは誰か? と聞かれても、確固たる候補が見当たらないというのが現状だ。

 ならば、すぐに代表のレギュラーポジションを奪うのは難しくとも、親善試合や代表キャンプを利用して経験を積ませることで、次代を担える若手を準備しておきたい。

 そこで推したいのが、アビスパ福岡のDF冨安健洋(とみやす・たけひろ)である。


U-20W杯では「世界」相手に奮闘した福岡の冨安健洋

 福岡の主力センターバックと言っても、所詮はJ2での話だ。いきなり代表候補に推すのは無理があるのかもしれない。

 だが、それでも冨安を一刻も早く代表でプレーさせたいと思うのは、彼が高いレベルでプレーさせればさせるほど、驚異的な成長を遂げることを知ってしまったからだ。

 今年の5月〜6月、韓国で開かれたU-20W杯。グループリーグ初戦での冨安の動きは、硬かった。緊張していたのか、地に足がついていないといった様子だった。

 ところが、試合を重ねるごとに、いや、1試合90分間の中でさえ、冨安は目に見える成長を遂げていった。

 相手が背後を狙ってくれば、いち早く狙いを察知して先にポジションを下げてボールを弾き返す。かと思えば、相手のスルーパスを読んで、出足よく相手FWの前でカットすることもできる。そうした相手の先手を取るプレーが20歳以下の大会とはいえ、世界レベルでもスムーズにできていた。終わってみれば、大会を通じて吸収力の高さをうかがわせる出色の出来だった。

 しかも、冨安が魅力的なのは188cmの長身でありながら、足もとの技術にも長けていること。それも、左右両足を遜色なく器用に扱い、長短のパスを正確に蹴ることができる。本来は右利きのようだが、初めて見たときには左利きの選手だと勘違いしたほどだ。

 U-20W杯でも彼のビルドアップの出来は、少なくとも従来の日本人センターバックの水準をものさしにすれば、高評価されてしかるべきものだった。それでも冨安が、自身の課題として守備のことより先に挙げたのが「ビルドアップ」。「大会を通じて、いいパスを出せなかった」と悔しがった。

 饒舌(じょうぜつ)に強気な言葉を口にするタイプではない。大きな体に似合わぬ細い声で話す物静かなDFは、センターバックとしてはどこか頼りなげでもある。だが、そんな印象にだまされてはいけない。

 底知れぬ可能性を秘めたセンターバックを、一刻も早くレベルの高い舞台に立たせてみたい。早ければ早いほど、その見返りも大きいはずである。

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