9月2日、東京・秩父宮ラグビー場。国内最高峰のトップリーグ第3節で、昨季王者のサントリーがヤマハと激突した。

 サントリーのフルバックには現・日本代表の松島幸太朗が入り、ヤマハのフルバックには2季ぶりにトップリーグに復帰した五郎丸歩。ふたりは、2015年のワールドカップ(W杯)イングランド大会でともに戦った間柄でもある。


持ち前のスピードに加え、力強さも増した松島幸太朗

 W杯でフルバックとして活躍した五郎丸はこの大会を最後に日本代表から離れ、それまでウイングなど別のポジションをやっていた松島がそこに入った。そのため、試合前から”新旧日本代表フルバック対決”として注目を集めた。

 松島はハーフタイム直前に自陣の深い位置で防御の裏をカバーして突破する五郎丸をタックル。さらに、五郎丸が得意とするロングキックに素早く対応し、何度もハーフライン付近まで蹴り返した。

「緊迫した試合だったので、チームが勝つことにフォーカスしました。自分たちが優位に試合を進めていけば、そのなかで自分の(得意な)プレーも出てくると思ったので……」

 ボールを持てば、堅守で鳴らすヤマハの防御網へ鋭く切り込む。本来はタックラーを巧みにかわすステップワークを持ち味とする松島だが、この日はあえて直線的な動きに終始した。

「今日は細かくステップを切っても抜けない日だなと思って。フィジカルに……と切り替えて、スペースに思い切り走り込みました」

 試合は終了間際に小野晃征が逆転トライを決めて、サントリーが27-24で勝利した。その瞬間、それまでクールな表情を崩さなかった松島の顔がほころんだ。

 ジンバブエ人の父と日本人の母を持ち、神奈川・桐蔭学園高校時代からゴムボールが弾むような走りで注目を集めた。卒業後は日本の大学には進まず、南アフリカのシャークスアカデミーに武者修行に出て、同国の20歳以下代表に選出されかかるほど成長した。

 2013年にエディー・ジョーンズがヘッドコーチを務める日本代表に選ばれる。希望するフルバックのポジションに五郎丸が君臨するなか、松島はセンターやウイングなどで才能を発揮してきた。

 2015年のW杯では、過去優勝2回を誇る南アフリカ代表と初戦で対戦。松島は「知っている選手が多かった」と平常心で臨み、鋭いランで後半29分の五郎丸のトライをアシストするなど、歴史的勝利(34-32)に貢献した。

 その後、2016年の日本代表ツアーでは、7試合中6試合をフルバックとして出場した。

 昨季は、サントリーの一員としてトップリーグを15戦全勝、さらに日本選手権も制するなど、国内タイトルを総なめ。シーズン終盤、本来ならオフに行なう筋力強化メニューに着手したのは、国際舞台でより存在感を示すための挑戦だった。

 W杯イングランド大会終了後、日本ラグビー界は新たな局面を迎えた。8月から翌年1月まで国内リーグが続き、2月から7月まで国際リーグである「スーパーラグビー」に日本のサンウルブズが参戦することになったのだ。多くのトップ選手が、ほぼ無休の戦いに身を投じることとなった。

 試合数の増加に伴い、これまでのようにじっくり体を鍛えることができなくなるなかで、松島は体重の増量計画を決断。トップリーグ期間中の12月下旬に故障したのをきっかけに、計画をスタートさせた。

 81キロだった体重は、スーパーラグビーの終盤の頃になると88キロまで増えていた。今季のトップリーグ開幕前は「夏場はすごく暑いので、少し落ちて87キロ」と話していたが、本来の体のキレを保ったままパワーをつけたのは間違いない。松島は言う。

「相手に囲まれた状態でもボールを取られなくなったし、(タックルを)外せるようになった」

 それまで大男たちをかわすように走ってきた松島が、捕まっても簡単に倒れない力強さを得た。バージョンアップした体を、スーパーラグビーや今年6月に行なわれた日本代表のテストマッチ、さらにはトップリーグでも存分に生かしている。

 また松島は、チームが優勝したときなどを除き、断酒を決め込んでいる。さらに、試合中はいくら好調であっても、途中で筋肉などに違和感が出たら勇気を持って交代を申し出る。継続して高いパフォーマンスを維持すべく、コンディションには細心の注意を払っている。

「ケガをしちゃうと、4週間ほどチームから離れることになる。しっかり自分で判断しないといけない」

 視線の先には、オーストラリア代表などとの対戦を控える11月の日本代表ツアー、そして2019年のW杯日本大会がある。

 アイルランド代表に2連敗を喫した6月のツアーでは、大幅な先発メンバーの入れ替えが行なわれた。日本代表は、東海大の野口竜司がフルバックに入り、松島はウイングやセンターでプレーした。

「6月の選考の感じだと、誰が(フルバックで)使われるのかわからない」と慎重な構えをみせる松島だが、「より強みが出せる」というフルバックのポジションを簡単に明け渡すつもりはない。

「きちんと1試合1試合、自分の強みを出していけば、メンバーを選択する人たちにいい意味でプレッシャーをかけられる」

 今季のトップリーグでは、サントリーの主戦フルバックとして、第4節終了時点で5トライをマーク。誰にも流されない芯の強さを武器に、松島幸太朗は愚直にアピールし続ける。

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