明浄学院高等学校(「Wikipedia」より)

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 大阪府下で4年制大学(大阪観光大学)と女子高(明浄学院高校)を運営する学校法人、明浄学院をめぐる騒動が世間の耳目を集めている。

 8月には明浄学院高の保護者たちが、学校運営を混乱させているとして、全理事の解任を求める上申書を所轄官庁の文部科学省に提出。また9月には、3月に法人側の運営に不満を持ち一斉退職をした同校元教職員の一部が、大阪地裁に退職金の減額分の支払いを求めて提訴している。「教え育むこと」を社会的使命とする学校法人で、起きている出来事とは思えない生々しさだ。

 その明浄学院は7月11日に、2016年度決算発表を行った。同法人を取り巻く尋常ならざる状況を反映しているのか、その内容についても釈然としない部分はある。以下にその決算概要の一部を引用する(同法人のHP上で全文閲覧可能)。

・収入合計:前年度比8億円増(59%増)の21億5600万円
・学納金:前年度並みの7億7300万円
・寄付金収入:前年度比4億9800万円増の5億円
・補助金収入:前年度並みの4億5200万円
・退職財団交付金収入(雑収入):前年度比8000万円増(105%増)の1億5600万円
・前受金:6400万円増(42%増)の2億1500万円

 大幅な増収になったわけだが、その要因はいささか奇異である。前期まで200万円前後で推移していた寄付金が一挙に二百数十倍にも跳ね上がり、増収分の過半を占めている。また、収入に含まれている退職財団からの交付も大幅に増加しているが、これは前述した大量の退職者の支払いに充てられたもので、何度も生じるものではない。要するに、本業である学校の運営内容が、著しく好転したとはいえないわけだ。

●決算への疑問

 不明な点を同法人に問い合わせると、担当者は不在だがFAX(文書)による質問ならば応じられるとの連絡があり、後日、法人本部財務部から次のような回答が寄せられた。

Q.16年度は寄付金が著しく増加しているが、今後もこの水準の額が維持されるのか、それとも当期だけの一過性のものなのか、見通しを聞きたい。

A.昨年5億円の寄付を頂きました。今期も3億円の寄付のお願いを致しているところです。

Q.この寄付金は日本私立学校振興・共済事業団の制度、受配者指定寄付金を利用したものなのか、そうではないのか、お教え願いたい。

A.利用致しました。
 
 16年度に巨額の寄付金はあったが、本年度は保証の限りではない、ということであろう。また受配者指定寄付金は、法人の場合、寄付金の全額損金算入ができるために税金対策としても活用できるものだ。当然、寄付する側の懐具合に左右されるもので、景気回復局面では増加するが、不況時には減少しやすい。要するに16年度決算の収入の急増は、特殊な要因に依るものが多く、今後、この状態を継続できるかは微妙なことがわかる。

 しかし、決算概要は以下のように締め括られている。

「日本私立学校振興・共済事業団が定める、『経営判断指標に基づく経営状況の区分』では『D3』(レッドゾーンの最低レベル)から7ランクアップの『B3』(イエローゾーン)となる」

 単年度ベースで試算すれば格付けは上がるにしても、その点だけを取り上げて、運営の危機が去ったかのようにアピールするのは、いかがなものであろうか。16年度の大幅増収、収支改善の大きな要因になった巨額の寄付金も今期は維持しづらいことを、先の回答で法人自身も認めているのだから、あくまで恵まれ過ぎた状態であったことを、併せて述べるのが誠実な総括だろう。

 回答の文書のなかには、運営する大阪観光大学について、16年度の赤木攻学長の就任以来、さまざまな学内改革が実を結び、17年度には定員充足率が130%まで上昇、創設した別科(日本語学校)の学生募集も順調との説明があり、「ご心配頂きましたが、今後も定員は必ず充足し、帰属収入で安定します」などとも記されていた。

 ただ、筆者は20年あまり大学業界を取材してきたが、収容定員を大幅に割り込むことが常態化していた私立大学が一気に蘇生して、中堅クラス以上の評価を受ける大学になった事例は、公立大学に転換したものを除けば、ひとつとして知らない。
(文=島野清志/評論家)