これまであかね坂の憩いの場、裏天広場には、何度もみね子(有村架純)の驚きの声が木霊してきた。ビートルズ来日のため上京してきた宗男(峯田和伸)の登場、見つけてほしそうにウロウロと広場に現れた愛子(和久井映見)を目にした時、「月時計会議」にまで発展した由香(島崎遥香)の待ち伏せ……。物語も大詰めに迫った、『ひよっこ』(NHK総合)第25週「大好き」では、早苗(シシド・カフカ)の“永遠の25歳”に纏わる切ない恋の話、「美代子と一緒に生きていきてぇんだ」という実(沢村一樹)の2度目のプロポーズ、愛子の省吾(佐々木蔵之介)への片思いからの卒業と、“大好き”が溢れた女性陣の心情が描かれる。なかでも、みね子史上最大の驚きの声が上がった秀俊(磯村勇斗)との恋模様は、視聴者の朝に微笑ましい光景を見せてくれた。

(参考:『ひよっこ』見習いコック役・磯村勇斗インタビュー 「みね子ちゃんは守ってあげたくなるタイプ」

 ことの発端は、裏天広場で開かれた“あかね坂独身女性の会”。「みね子の方はどうなの?」と切り込む鈴子(宮本信子)に、同部屋の世津子(菅野美穂)がこれから“ヒデとのデート”だと畳み掛ける。うろたえるみね子であったが、女性陣の後押しもあってか、自分の気持ちに正直になり、「私、谷田部みね子はヒデさんのことが大好きです。ずっと隣にいたいと思います。そうなれたら素敵だなと思います」「大好きです。ヒデさんのこと」と笑顔で答える。それを“デート”の迎えに来たヒデが聞いてしまうという、ドラマでもなかなか見ないユニークな展開で、思いは伝えられる。

 みね子が自分の思いに向き合わなかったのは、島谷(竹内涼真)との恋があったからだ。本人の弁を借りれば、みね子は“過去がある女”。すぐに新しい男性へ、しかも島谷の友人であるヒデに乗り換えることは……と自分の気持ちを押し殺していた。けれど、みね子にとってヒデは、厳しく、それでいて真摯で、自分の気持ちに正直になれと励ましてくれた素敵な男性だ。「ヒデが好き」。鈴子をはじめとした女性陣に思いを伝える際、みね子の止まらぬ言葉がその思いの強さを表していた。

 みね子の気持ちを知ったヒデは自分からも告白。「プロポーズする時はちゃんと自分から言うから」と先走ってプロポーズまでしてしまう。“あかね坂独身女性の会”をイチ抜けしたみね子。「きゃー! お父さん! 先走ってもう、盆とお正月が一緒にやってきたって感じです!」と、茨城にいる実(沢村一樹)に伝えるみね子の語りからは、2人が幸せの絶頂にいることが伺える。島谷との恋愛でも、相合傘や壁ノック、“ほっぺたぐりぐり”など、見てるこちらが恥ずかしくなるシーンが多発したが、もちろんヒデともそう。恋は盲目とはよくいったもので、みね子とヒデは手を取り合いながら踊り出し、抱き合う始末。ナレーションの増田明美も二人を祝福しつつも、「勝手にしてって感じですね」と呆れ気味だ。

 なかでも、反響が大きかったのがみね子のアップ、カメラ目線での「大好き」というシーン。もちろん、これは隣にいるヒデに向けられたセリフであるが、およそ15秒にわたるカメラ目線での有村架純の「大好き」は凄まじいインパクトを持つ。番組はそのまま『あさイチ』(NHK総合)へ。“朝ドラ受け”でお馴染みの番組だが、この日は井ノ原快彦が「いやー、ちょっと告られちゃいましたよ……」とメロメロの状態に。全国の視聴者の幸せな気持ちを代弁してくれた瞬間だ。

 4月から半年に渡り放送してきた『ひよっこ』も次週で最終回を迎える。タイトルは「グッバイ、ナミダクン」。「おらは『嫌だ』って言いたい」という豊子(藤野涼子)の名言があるが、それは、毎日観てきた視聴者の今の心境そのものではないだろうか。クランクアップ時の会見で有村は、「登場人物がみんなそれぞれ報われていく展開」と話していた。その言葉を胸に、最終回のその日を待ちたい。

(渡辺彰浩)