店頭ポップのうたい文句で一見安く見えても、容量当たりで考えると実は割高。こうした失敗を防ぐためには値札に書かれた「ユニットプライス」をチェックするのが便利ですが、今、存亡の危機に瀕しています(写真:ManabuAsakawa / PIXTA)

「店長イチオシ!」「地域最安値に挑戦!」「大容量でお得!」――。スーパーやドラッグストアに行くと、売り場にはこうした推奨ポップが躍り、つい手を伸ばしてしまいがちだ。

が、このうたい文句を鵜呑みにしてはいけない。シャンプーや洗剤の詰め替え用が、本体よりも割高なのはよくある話。加えて最近では、商品のリニューアルに合わせて、ひそかに内容量を減らし、いつもより安く見せる「隠れ値上げ」が横行している。

真の「お買い得品」を見抜くユニットプライス

節約をしたつもりが、実は割高な商品を買わされていた。そんな不利益を防ぐために活用できるのが、「ユニットプライス(単位価格)」だ。牛乳100ml当たり、みそ100g当たり、トイレットペーパー10m当たり、洗濯用洗剤100g当たり、紙おむつなどの衛生用品1個(1枚)当たりに換算していくらか、商品棚の値札に表示するというものだ。

消費者にとってユニットプライスの効用は、大きく分けて2つある。1つ目は、同一ブランドの商品で容器や容量が異なる場合、価格比較を容易にできることだ。


大容量のほうがお得だと思いがちだが、ユニットプライスを見てみると、少量パックのほうが安かった(筆者撮影)

洗濯用洗剤を例に挙げてみよう。とある店頭には、ライオンの洗濯用洗剤「スーパーナノックス」が本体と詰め替え用で計4種類並んでいた。ただ、一見してどれがいちばんお得なのかはわからない。そこで、値札に記されたユニットプライスを見てみると、本体も詰め替え用も、小さいもののほうが単価が安いことがわかった。すなわち、大容量を買えばお買い得というわけではないようだ。


そして2つ目の効用は、「隠れ値上げ」を見破ることができる点だ。一例を紹介しよう。食品メーカーの明治は、2015年7月に、14品目で容量を2〜12%減量した。つまり実質の値上げである。「明治おいしい牛乳」の場合は、一部の地域から先行して、2016年9月に容器をリニューアルした際、容量を1000mlから900mlに減らしたのだ。

【9月25日11時30分追記】記事初出時、明治おいしい牛乳について「2016年9月に容器をリニューアルした際、容量を1000mlから900mlに減らしたのだ」と記述しましたが、現時点において、容量900mlの商品は関西、中国、四国、九州、一部のネット通販のみの展開であり、読者への誤解を招きかねないことから「一部の地域で先行して」という記述を追加いたしました。


「安い」の文字に思わず手が伸びるが、100ml当たりで計算すると実は安くない。写真は税抜き価格(筆者撮影)

このとき、ネット上では多くの消費者が、「容量が減ったことを知らずに買ってしまった」と不満をあらわにしていた。

実際、筆者もリニューアル後の商品を「安い」と勘違いして買ってしまった。いつもは200円を切らない商品が199円で売られていたことに加え、「地域最安値に挑戦」「安い」のポップに思わず飛びついてしまったのだ。しかし、ユニットプライスは、1000mlのときより若干高くなっていたのだ。つまり、「安い」と書くこと自体が本来おかしいのだ。

こうした「特価または価格据え置き(実は容量減)」という値上げは、明治に限らずよく行われているが、消費者の買い物の現場ではなかなか気づきにくい。日頃から単価を意識して買い物をしていると、価格変動にすぐ気づくことができるという点で、ユニットプライスは一定のバロメーター機能を果たす。

各自治体で続々廃止のユニットプライス

消費者を不当な値付けから守るユニットプライスだが、実は現在、各自治体で廃止の危機にさらされている。

精肉を買う時に100g当たりのユニットプライスが必ず表示されているが、これは「食肉の表示に関する公正競争規約」によってルールが定められているためだ。一方で、他の食品や日用雑貨品のユニットプライスを運用するのは、各自治体。昭和50年代に消費者団体が法制化を訴え、一度は経済企画庁(当時)によって検討がされたものの、事業者の負担が懸念されて実現しなかった。

そのかわり、国は地方自治体に通知を出し、取り組みを地域に委ねたという経緯がある。その結果、\度の有無、対象となる店の規模、B仂櫃箸覆詆別椶砲和腓な地域格差が見られるようになってしまった。そして、当初40近い都道府県で制度化されたものの、その後次々と廃止され、いまや制度化している自治体は20を切る。


制度の廃止は、消費者が不利益を被りかねないのに、なぜそれを断行するのか。2016年に制度を廃止した神奈川県は、その理由として「消費者の商品選びの基準が価格だけでなく品質や機能など多様化し、表示の必要性が低下したため、廃止しても消費者に不利益はない」などの理由を挙げている。ただ、不利益がないことを十分に検証したとは想像しがたく、安易な廃止はあまりに消費者視点を欠いている。

さらに問題なのが、この制度を存続させている都道府県であっても、その順守率が極めて低いことである。東京都が、2015年に行った調査では、対象店舗169店のうち、76%に当たる130店で不適切な表示(ユニットプライスの非表示を含める)が行われていた。

日用品の値上げが頻発し、消費税のさらなる増税も検討されている中、多くの消費者にとって節約は喫緊の課題になっている。総務省の家計調査によると、消費支出に占める食費の割合を示すエンゲル係数は、2016年は29年ぶりの高水準になるなど生活費高騰がいわれている。消費者ニーズの多様化に応えて企業がさまざまな容器・容量の商品を流通させるようになった現代、複雑な暗算をしなくても簡単に商品のコストを比較できる、ユニットプライス表示の必要性は高まっている。

海外では全商品で表示を法制化したところも

海外では、EU諸国やオーストラリアなど、消費者保護のためにユニットプライスの表示を法制化し、全商品に適用している国も多い。


オーストラリアのビーフジャーキー。「$59.80 per kg」がユニットプライスだ(筆者撮影)

国ごとに異なる表示方法を統一し、よりわかりやすい単価表示を目指す国際規格(ISO)の策定も進んでいる。

日本でも、私たちの家計に直結するこの制度の価値を再考し、時代に合ったあり方を検討していくべきではないか。消費者が住んでいる地域によって、また利用するスーパーによって、ユニットプライスが表示されていなかったり、単位に一貫性がないのは不便である。

消費者もまた、店頭の「お買い得」といった表示を鵜呑みにせず、こうした情報を基に品物を吟味して、主体的に選んでいく姿勢が求められている。