豪雨災害で運休が続く只見線の一部区間は、JRと地元が上下分離方式での復旧で合意した(写真:くまちゃん / PIXTA)

2011年7月の豪雨災害により、会津若松(福島県)―小出(新潟県)間135.2kmを結ぶJR只見線は、途中の会津川口―只見間(以下「休止区間」)27.6劼長期運休となっている。


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この休止区間について、復旧後に福島県が線路などの施設を保有する「第三種鉄道事業者」、JR東日本が列車運行を行う「第二種鉄道事業者」として、いわゆる上下分離方式で存続する旨の合意が、2017年6月19日にJR東日本と地元自治体との間で成立した。

すでに同様の上下分離方式を取り入れている鉄道は存在する。比較的輸送量が多かったり、優等列車や貨物列車などの運転があったりするにもかかわらず、列車を運行する鉄道事業者が施設まで保有していると収支均衡が図れないという場合、重要な公共交通機関である鉄道を維持するために上下分離方式を採用することは有効である。

しかし、只見線の前途は厳しい。

1日1km当たり利用者は370人

JR東日本の資料では、1日1km当たりの利用客数を示す平均通過人員は、2010年の数値で同社の在来線67線区中66位の370人(67位は2014年廃止の岩泉線)と発表されており、その中でも休止区間は49人とさらに少ない。定期旅客列車の運転本数も、不通になる直前は1日3往復のみだった。

災害による休止区間の2009年度の収支は、営業収益500万円に対して営業費が3億3500万円。このうち線路の保守経費が2億8000万円、信号・電気設備の保守経費が3800万円とされており、経営環境は非常に厳しい。

只見線の厳しい状況を踏まえると、一部区間で上下分離を実施した場合、JR東日本と施設保有者との間では以下のようなことが問題にならないだろうか。関係者の間では考えられているだろうとは思うものの、契約交渉を日常的に行う弁護士としてはとても気になる。

●今後、再び災害が発生して復旧が必要となった場合、路盤の復旧義務は施設保有者にある。復旧の負担が大きくても自治体の立場上復旧をしないという選択肢は取りづらく、そのたびに復旧の負担がかさむ。
●地元が復旧を望まなくても、JRから復旧を求められれば応じなければならない可能性もある。
●休止区間と隣接する区間での災害その他の理由で、JRが路線維持に消極的になった場合、地元は他区間の施設維持も引き受けるのか。
●もしもJRが運行経費の負担が大きいことを理由に列車運行をやめることになった場合、施設を保有する自治体はそれを理由に路線を廃止するのか、あるいはほかに第二種鉄道事業者を選定することになるのか。

追加支援が必要になったら…

厳しい経営環境からすれば、将来的にJR東日本が只見線の列車運行をやめる検討を行うことは十分にありうる。その場合、今回上下分離に合意した区間の隣接区間についても上下分離やその他の追加支援が求められることも考えられる。

並走する国道252号が一部冬季通行止めになることから、只見線の維持費用を自治体が負担する理由はあるかもしれないが、負担が青天井になる可能性もある。そうなったとき、沿線自治体が只見線を維持するためにどこまで負担に耐えられるか、という問題にもつながるであろう。

現時点でも休止区間の施設維持費用は年間2億1000万円が見込まれ、県が7割、17市町村が3割を負担するとされている。JR東日本と地元との合意では、線路使用料の支払いが予定されつつも、同区間のJR東日本の収支に欠損が生じないように使用料を減免することも予定されている。

只見線の利用者数は減少傾向にあり、運転本数も1日3往復程度しか予定されていないことから、線路使用料の収入は期待できず、事実上、自治体が線路を維持して無償でJRに利用させるということになるだろう(JR東日本の資料では「実質無償」とも記載されている)。

このように前途多難な状況が見込まれる路線を上下分離するときには、路線維持という消極的な理由での上下分離だけでなく「積極的な上下分離」を考えられないだろうか。只見線の将来は楽観できないが、その分いろいろな挑戦ができる。日常の生活利用だけでは路線維持は難しいから、観光列車の企画や鉄道施設の魅力を向上させることが求められる。

施設保有を生かした活性化策を

JR東日本による列車運転本数の予定が1日3往復ならば、休止区間の27.6kmが一閉塞(同時に1本の列車しか運行できない)という現状でも線路容量には比較的余裕がある。新たな第二種鉄道事業者の設立となるとハードルは高いが、福島県や沿線自治体、あるいは観光業者、さらには有志の団体その他が実質的に所有する車両の導入をJRと協力して実施するとか、積極的に列車運転に関与することも考えられる。思い切って日中に「線路閉鎖」をして線路で遊ぶことも可能であろう。

地方鉄道路線の維持はますます厳しさを増す。鉄道の施設所有だけで考えるとその維持コストは相当な負担となるであろうが、鉄道を維持することで地域全体への経済効果が図れるのであれば有用なことである。

JR東日本の資料でも「福島県は、JR東日本とともに主体的に只見線の利用を促進」とある。これまでの観光振興や利用促進策に限らず、施設保有者として鉄道の施設そのものや余裕のある線路容量を生かした、自主的かつ「攻め」の上下分離のあり方が見いだされることに期待したい。