私たちが「現実」だと感じている世界は、実はシミュレーションに過ぎないという「シミュレーション仮説」という概念が出されています。イーロン・マスクなどの著名人にも肯定論者のいるシミュレーション仮説がどんなものかをアニメーションムービー「Is Reality Real? The Simulation Argument」が解説しています。

Is Reality Real? The Simulation Argument - YouTube

私たちの脳は、宇宙で起こるすべての現象を知覚することは不可能です。そこで、現実世界の自然現象を把握するためには「コンセプト(概念)」を用いる必要があります。



技術の進歩は、世界観を広げるとともに、解決できない難問を気付かせることにもなります。



技術が進化する将来、宇宙全体の現象をシミュレーションできるようになるかもしれません。



しかし、「もうすでにそうなっている」という可能性はないでしょうか?



私たちは創造主ではなく、創造された産物ではないか?つまり、「私たちが生きている世界は、高度な文明をもつ宇宙人によってシミュレートされた世界ではないか?」というのが「シミュレーション仮説」です。



現在の物理への理解が正しいものだとしても、宇宙全体にある無数の物をシミュレートすることは不可能です。



現実問題として、宇宙全体をシミュレートする必要がないのも事実です。発見された「宇宙」だけで十分とも言えます。



反対に、細胞やバクテリアなどのミクロの世界についても、すべてを理解する必要はないでしょう。顕微鏡で確認できる存在で十分かもしれません。



イスの脚を原子レベルから構造を把握する必要はなし。



中身が空っぽだとしても、脚として機能する外形がある限り何の問題も起こりません。



シミュレーション仮説に関する確たる方法論はありませんが、世界がシミュレーションだとどうなるのかを検証してみましょう。



ベースとなるのはニック・ボストロムの出した仮説で、それを元に5つの仮定を考えてみます。



仮定1:「意識はシミュレートできる」



人間の持つ「意識」とは何かを正しく知る人はいません。



そこで、脳のシミュレーションによって意識を作り出せるという仮説をとってみましょう。



脳の構造はとてつもなく複雑で、シナプス間のやりとりは1秒間に1垓(10の20乗)回です。



人類の歴史を一度にシミュレートしてみると……



一人当たり平均50年間生きるとして、1年間(3000万秒/年)×50年×のべ2000億人×1垓回/人・秒=ということでとてつもない回数のオペレーションが必要になります。



人間だけでこの数字であり、全世界の現象すべてをふくめれば、計算できるコンピューターが誕生するのは不可能にも思えますが、可能かもしれません……。



仮定2:「技術の進歩はすぐには止まらない」



これまで続いてきたような技術の進歩が今後も続いていくと仮定してみます。



人間はいつしか「神」と区別が付かない存在になるかもしれません。



あり得ない数を取り扱えるコンピューターの実現は難しく感じますが……



これを実現できるとする仮説もあります。



「Matrioshka brain」は、星の軌道上を数十億のパーツで構成するという構造体の仮説ですが……



Matrioshka brainが実現するような高度な文明では、人類の数は制限されます。



さらに量子コンピューターによって、コンピューターのサイズは劇的に小さくなり、一都市で膨大な量の計算を実現できるようになるかもしれません。



仮定3:「高度に進化した文明は自滅を免れる」



文明が進化するとある時点で必ず滅びるならば、シミュレーション仮説は成立しません。



しかし宇宙空間を見れば、宇宙人によって作り出された無数の高度な文明があり得ます。



文明が高度に進化して「Great Filters」と呼ばれるバリアを築くことで、核戦争・隕石の衝突・気候変動さらにはブラックホールの生成によっても滅びない世界を作るでしょう。



仮定4:「高度に発展した文明はシミュレーションを求める」



人類の進化の先(ポストヒューマン)がどうなるのかを想像するのは難しいものですが、「神のような力を持つ」と考えるのは思い上がりです。



小さなアリや鳥について考えてみましょう。



鳥たちが「人間とは何か?」を考えるのは興味深いことですが、ジェットコースターの楽しさやアイスクリームを食べる喜びを理解することはないでしょう。



ポストヒューマンでも同様。神からすれば、ポストヒューマンさえアリのようなものなのです。科学的な興味本位からシミュレーションを走らせることは愚かなアイデアです。



しかし、ポストヒューマンが何らかの理由でシミュレーションを走らせたいと心底願うなら、その可能性はゼロではありません。



仮説5:「大量のシミュレーションがあるならば、その中の一つに人類が住む可能性がある」



シミュレーションされた文明があるならば、さまざまな種類のものがあり得ます。



結局、ポストヒューマンは際限のないコンピューターの力を手にすると仮定することになります。



数百万の宇宙をシミュレートすれば、その中には数十億の意識ある生き物が存在することになります。



ずっと先まで生きながらえる意識あるものはシミュレートされたものを意味します。



私たちは現実世界を生きていると感じていますが、シミュレートされた存在である可能性はゼロではありません。



この事実は現時点では正しいかどうか確かめられない多くの仮定に基づいていています。



そのため、多くの科学者がシミュレーション仮説自体を否定しています。



とはいえ、現実世界に生きているのであれ、シミュレーションの世界でいきているのであれ、私たちにはたいした違いはありません。私たちが願うのは「その世界でより良く生きられること」



シミュレーションを実行しているコンピューターの電源を誰かがうっかり落とさない限り、生き続けられます。