ボールに触れないままの我が子にやきもき、どうしたらよい?【写真:Getty Images】

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【連載コラム】ドイツ在住日本人コーチの「サッカーと子育て論」――親と子の距離感

 先日、次男のトレーニングに付き添っていた時の話。夏休み明け最初の練習日とあって、グラウンドに着くとみんな練習前から思い思いに楽しそうにボールを蹴っていた。次男も久しぶりに会う友達と嬉しそうに言葉を交わしては、ボールで遊ぶ。

この日の練習は最初からミニゲームだけ。休み明けということで、まずはみんなでサッカーを楽しもうということのようだ。2組に分かれて7対7。コーチは「一学年上がってFユース(U-9カテゴリー)になったんだから、ちょっとずつサッカーっぽくやっていくぞー」と声をかけるものの、まだまだ自分のプレーが楽しい年頃。ボールに集まるのもそうだし、味方のボールまで取ってしまう子がいるのも普通にある。焦る必要はない。少しずつサッカーっぽくなっていけば、それでいい。

ただ、小さい時からサッカーが大好きで、足も速くて、ボール扱いも上手い子らはどんどんプレーに絡んでゴールをしていく一方で、次男のようにまだ始めたばかりの子らはほとんどボールに触れないまま行ったり来たり。「ボールに触れないと楽しめないじゃないか」と、僕が1人外からやきもきしていても、コーチ陣は特に気にかけたりしない。

休憩時間となり「問題ない? ボールに触れてないけど、楽しい?」と次男に聞いてみたら、次男は考え込んでしまった。続けて、僕が「できないことがあるならコーチに聞いてごらんよ。分かんないままやっていても、ボールに触れないよ」と言うと、次男はとぼとぼとコーチの元へ。でもその後の練習でも特に状況は変わらず、次男は時折こぼれ球に触ることができたくらいで終わってしまった。

我が子は特別だからと、何をしてもいいわけではない

見ていた僕は消化不良に終わったけど、本人はどうだったんだろう。帰りのバスで聞いてみたら、「Fユースに上がったら、みんな速いし、僕がもっと頑張って上手くならないとボールに触れない」と話してくれた。「楽しかった?」と聞くと、「楽しかったよ」と答える。さらに「楽しそうに見えなかったけど?」と聞くと、次男は困った顔をしてしまった。

それはそうだ。そんなことを言われても困るしかない。悪いことを言った。

「練習で気になったことがあっても、パパは黙ってた方がいいかな?」

そう聞くと次男は僕の目を見て、「うん。その方がいい。だって、いろいろ言われたら下手になっちゃうもの。僕は大丈夫だから」と答えてくれた。そうだ、そうだよね。その通りだ。せっかく楽しくサッカーをしに来ているのに、外からいろいろ言われたらやりたいこともできない。

よくぞ言ってくれた。僕は次男に謝った。

子育て論は世間に山ほどあるが、我が子に対する感情はどうしたって特別。頭で分かっていても、なかなかできないからみんな苦労する。でも特別な感情だからと、何をしてもいいわけではない。こちらがミスをしたら心から謝る。それは子どもに対しても、いや子どもに対してだからこそ大事なことだ。

次回は少し離れたところから、彼の頑張りを追いかけてみよう。良いプレーだったかどうかではなく、やろうとしていることを素直に認めて、褒めてみよう。

中野吉之伴●文 text by Kichinosuke Nakano

◇中野吉之伴(なかの・きちのすけ)

1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。