「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『ユリゴコロ』『スイス・アーミー・マン』

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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、編集スタッフ2人がそれぞれのイチオシ作品をプッシュします。

■『ユリゴコロ』

 小学生の頃、友達に借りたゲームボーイのソフト“たまごっち”を今だに返せていないことを後悔しています。そんなリアルサウンド映画部のゆとり女子・戸塚がオススメする作品は、『ユリゴコロ』。

 本作は、沼田まほかるによる同名ベストセラー小説を、『君に届け』の熊澤尚人監督が実写化した恋愛ミステリー。生まれながらに「人間の死」を“拠りどころ”にする美紗子が、絶望的な喪失を抱えながら数奇な人生をたどる模様を描く。

 「あなたの優しさには、容赦がありませんでした」。劇中で登場する美紗子(吉高由里子)のセリフです。平気で人を殺す女と優しすぎる男が出会い、愛を育む。初めて、人間の温かさを知った美紗子は、徐々に変化していきます。女として、母親として、人間らしくなっていくのです。

 平気で人を殺す女と優しすぎる男は、互いにどうしようもなく愛し合っているからこそ、過去に今に未来に悩み苦しみます。過ちを犯した過去を悔やんで仕方ないけど、皮肉なことにその過去があったからこそ今の幸せがある。どこまでもやるせなく、切ない。

 元々は原作が好きで、本作を鑑賞しました。原作を読んだ時に、率直に持った感想が「難しい」でした。物語はすべて亮介(松坂桃李)の目線から語られています。あくまで美紗子ではなく、亮介が殺人鬼のノートを読みふけっているのです。亮介が殺人鬼のノートを読んでいる、その状態を私たち読者(観客)は見ている。つまり、100パーセント本当の美紗子の想い、美紗子からの視点は描かれていないんです。だからこそ、奥が深く面白い。最後までうっすら靄がかかったような不思議な感覚でした。

 改めて感情はとても厄介だなと。罪のない人たちの命を奪っているはずなのに、なぜか殺人鬼を哀れんでしまう。愛があればすべて許されるように感じてしまう。決してそんなことはないのに。家族だから、恋人だから、友達だから、美紗子にも愛があったから。平等な視点で、客観的に観られない。そんな心の内側をじわじわ蝕まれるような作品です。そして、私の拠りどころは一体なんなのだろうかと考え込んでしまいます。

 あなたも週末映画館で、あなた自身の“ヨリドコロ”を見つけてみてはいかがでしょうか? 

■『スイス・アーミー・マン』

 ペナントレースも残り10試合、CS進出をかけ、連日の試合結果に息がつまりそうになっている横浜DeNAベイスターズファン、石井がオススメするのは、『スイス・アーミー・マン』。

 「映画の表現方法はまだまだ無数にある」先日当サイトでインタビューが掲載された矢口史靖監督の言葉ですが、本作もまた、これまで一度も作られることのなかった(誰も発想もしなかった)作品のひとつと言えるでしょう。

 なにせ、主演を務めるダニエル・ラドクリフが演じるのは“死体”役。『ハリー・ポッター』シリーズの主演で世界中にその名を知らしめたラドクリフですが、反面、いつまでも「ハリー・ポッターの」という枕詞がついてしまっていたように思います。しかし、本作の死体・メニー役は、ラドクリフが演技者として新たなステージに進んだ一作となったことは間違いありません。『賢者の石』の頃の可愛らしさは本作では“皆無”、と言っていいと思いますが、物語が後半に行くに連れ死体メニ―がとてもキュートに見えてくるから不思議です。

 メニ―は、お尻からガスを吹き出し、口から水(飲料水)を吐き、手は大木をも切断する鋭さを持ち、火炎放射器の役割まで果たします。そして、男性諸氏は爆笑必須の“特別コンパス”まで備えた万能マン。無人島でひとりぼっちのハンク(ポール・ダノ)は、彼との出会いから徐々に生きる活力を得ていきます。

 誰にも理解されない、自分は誰にも求められていない、生きている意味が分からない。そんな思いを持っていたハンクは、喋る死体メニ―によって、自分を見つめ直していきます。死体と戯れ、女装する孤独な男。文字面だけで見ると、とんでもなく奇妙な光景を想像していしまいますが、彼らふたりのやり取りは、生きていく上で大切なことを教えてくれます。

 独特の映像美と軽やかな音楽、何よりポール・ダノとダニエル・ラドクリフの好演。大きなスクリーンでこそ観てほしい青春映画です。リアルサウンド映画部では、本作の監督・脚本を務めたダニエル・シャイナート、ダニエル・クワンへのインタビューを明日掲載予定です。本作の製作の裏側が明かされるものとなっているので、こちらもお楽しみに。

(リアルサウンド編集部)