お金に苦労せず、幸せに生きていくことを目指す【脱貧困診断】。今回の相談は、島村もえさん(仮名・IT関連会社勤務・29 歳)からの質問です。

「29歳、会社員です。退職を考えていています。毎日いろいろ考えているのですが、わからないことがいっぱいです。たとえば、保険のこと。今の会社を辞めたら、健康保険はどうなるんでしょうか」

会社員の場合、保険や税金に関しては会社が代行してくれているので、自分では全然わからない……という人は多いかもしれませんね。給与明細も、「支払総額しかまともにみたことがない」という人も少なくありません。会社で入れてもらっている健康保険って、退職するとすぐに使えなくなってしまうのでしょうか。

さっそく、森井じゅんさんに聞いてみましょう。

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すぐに転職なら問題なし。でも……

会社を退職した直後に転職先で勤め始める場合には、一般的に転職先の社会保険に切り替えられます。その場合の健康保険の手続きなどは、新しい会社がやってくれるので安心です。

一方、退職後に転職まで期間があったり、転職の予定がない場合には、自分でどのような保険に加入するか検討し、手続きを行なわなくてはなりません。

どれを選択するかによって、保険料の負担が大きく変わることがあるので注意が必要です。

金銭的に有利な退職日を質問された回のときにも触れましたが、退職日を月の途中にするか月末にするかで、社会保険の加入期間がまる1か月変わります。

また、どの保険を選択するのであっても、退職後速やかに手続きをする必要があり、退職してからゆっくり検討している時間はありません。

退職したらどの保険に入るのか、しっかり考えておきましょう。

休職期間がある場合の4つの選択肢

退職直後に転職しないケースでは、大きく分けて下記の4つの選択肢があります。

1)任意継続
2)国民健康保険
3)ご家族の健康保険
4)国民健康保険組合

です。ひとつひとつ見ていきましょう。

1) 任意継続

任意継続とは、これまで加入していた健康保険に、退職後も加入し続けることになります。これは、会社加入の協会けんぽの都道県支部や健康保険組合で手続きを行なう事になります。

加入期間は最大2年間継続できます。保険料は在職中の給与水準で決まります。

給与明細の健康保険料の控除額を見てみてください。任意継続時の保険料は、給与明細に載っている額の2倍の額が目安になります。これまでは会社が保険料の半分を負担してくれていましたが、退職後は自身ですべてを負担することになるからです。

しかし保険料には上限があるため、必ずしも現在の控除額の2倍ではありません。会社の加入する健康保険により、保険料の上限や細かな加入要件などが変わってきますので、会社加入の協会けんぽや健康保険組合に確認してください。

もうひとつ注意があります。任意継続を希望する場合には、会社を辞めた翌日から、20日以内に申請しなければなりません。出し忘れに気を付けてくださいね。

2)国民健康保険

次に、国民健康保険です。

職場の健康保険に加入していない人は、一般的に国民健康保険に加入することになります。窓口は、お住まいの市区町村の役所になります。

保険料は、前年の所得や家族構成により異なります。また、自治体ごとに計算方法や保険料が変わってきますので、具体的な金額を知りたい場合には、役所に計算してもらうとよいでしょう。自治体によっては、役所のホームページでシミュレーションができるところもありますので、チェックしてみてください。

また、退職後は保険料を納める事が困難な状況になる可能性があります。そのため、国民健康保険では、解雇や雇止めなどにより、離職された方を対象に国民健康保険料が軽減される制度もあります。

認定基準は自治体により異なりますので、お住まいの自治体に相談してみましょう。

3)ご家族の健康保険

そして、3番。ご家族が勤め先の社会保険に入っている場合で、ご自身の収入が一定以下となるケースでは、その扶養に入ることができる可能性があり ます。 

扶養に入ることができれば、ご家族の保険料も変わらず、また、相談者さんの負担もありません。ちなみに、国民健康保険には扶養という考え方はありませんので、もし、ご家族が国民健康保険加入の場合には扶養に入ることはできません。

失業保険を受けながら、保険は家族の扶養に入ろうと考える人もいらっしゃるかもしれませんね。でも、失業保険の給付額によっては、扶養に入ることができなくなることもあるので、こちらも要注意です。

確かに、失業保険の給付金は所得税の対象となっていないので、税金はかかりません。税金のことは気にしなくてよいのは助かりますね。でも社会保険では、失業給付も収入として考えられます。そのため、給付額によっては扶養に入ることができないのです。

扶養に入る認定基準や年収要件の問い合わせ先は、ご家族が加入している健康保険組合です。

4)国民健康保険組合

そしてラスト、国民健康保険組合です。

退職後、自営業として身を立てていくことを考えるのであれば、国民健康保険組合も選択肢に入ってくるでしょう。

多くの自営業の方は国民健康保険に加入しています。しかし、業種によっては、国民健康保険組合があり、それに加入することができます。

現在、非常に多くの組合があります。またその種類も、士業はもちろん、美容関係から食品販売など様々です。組合によって保険料は変わってきますが、多くの組合では保険料は定額になっており、収入によっては国民健康保険よりも保険料負担が軽くなるケースが多いです。

組合の保険に入るためには、まずその組合の組合員になる必要があります。ご自身が組合員の要件を満たすものがあるか、また、その組合の保険料はどのくらいか調べてみましょう。

社会保険の変更は健康保険だけでなく……

退職直後に転職するのでなければ、健康保険だけでなく、年金の切り替えも必要です。厚生年金から国民年金となります。

国民年金保険料は現在ひと月16,490円です。しかし、退職などにより経済的に保険料を納める事が難しいときには免除などの申請もできますので、そういった事情があれば年金事務所に相談してみましょう。

病院なんて、めったに行かないけど、「万が一、行かなくちゃ行けなくなったときに自腹」はかなり困る。



■賢人のまとめ
退職から次の会社へ移るまで期間がある場合、保険には4つの選択があります。手続きをすぐに行なわなければいけないものもあるので、なにを選べばいいか、事前に心構えを持っておきましょう。また、保険だけでなく、国民年金の切り替えも忘れずに。

■プロフィール

女子マネーの達人 森井じゅん

1980年生まれ。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。

一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行なっている。