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●「伊藤園」を店舗名に入れた本気度

お茶の伊藤園として、『お茶はこんなに美味しいんだ』と知らせたい――。こう語るのは、伊藤園 特販営業本部 取締役本部長の石坂 健一郎氏だ。伊藤園は三越日本橋本店の本館地下1階食品フロアに「日本橋 和の茶 伊藤園」を9月22日にオープン。日本茶にこだわった希少価値あるお茶の提供をコンセプトに据え、富裕層への伊藤園ブランドの浸透を図る。

○1本2000円、シングルオリジンの玉露茶を用意

伊藤園は1977年に第一号の直営店舗「茶十徳」をオープン。現在170店舗以上を運営しているが、「店舗名に『伊藤園』を冠したのはこの店舗だからこそ。三越日本橋本店と交渉して、ブランド価値向上のために社名を入れた」(石坂氏)と特別な店舗であることを強調する。

それもそのはず、「お〜いお茶」で有名な伊藤園が、日本茶のみを取り扱う店舗はこの店舗のみ。長年の事業で培ってきたお茶農家のネットワークを活かし、35種類にもおよぶ茶葉を取り揃え、緑茶や紅茶、ウーロン茶を提供する。茶葉は温暖な気候でしか栽培できないため、新潟が北限とされる。一方で、南は鹿児島でも生産されており、オープン時には屋久島で生産された茶葉を用いた「屋久島紅茶」も提供する。

さらに伊藤園が目玉とするのが、375ml瓶ながら税込みで2160円を値付けた「和の茶 玉露」。ブレンド茶ではなく、福岡県八女産「伝統本玉露」をシングルオリジン(単一品種・単一生産者)による100%使用した高級茶で、ガラス瓶に入れ、化粧箱も付けた手土産にうってつけの商品に仕上げた。

福岡県の八女茶は、一体の玉露生産量が全国一位とも言われており、定評のある茶葉産地。石坂氏によると、茶葉は100gで1万円を超える上級品とのことで「旨味が口の中で広がる」(石坂氏)と自信を見せる。もちろん、屋久島や八女以外の産地の茶葉も拡充していくとしており「年末に向けてラインナップは拡充していく。スペースは限られるが、入れ替えも含め100種類程度の茶葉を用意していきたい」(石坂氏)と話す。

また、イートインコーナーも用意しており、ほうじ茶や抹茶をベースにしたロールケーキ、マカロンを提供。急須などの関連商品も取り揃えることで、お茶の世界観を楽しんでもらい「和茶の"伝統"と"今"に出会い、体感していただけるようにしたい」(三越日本橋本店 食品・レストラン営業部 部長 田中 清氏)としていた。

●コンビニやECにはない価値提案、来店富裕層は年々拡大

一方、スペースを提供する三越日本橋本店は和の茶と同時に「ジュリス ティールームス」をオープンする。ジュリスは紅茶の本場、英国で優秀なティールームを提供した紅茶店を表彰する「TOP TEA PLACE」の賞を2008年に受賞した、宮脇 樹里氏がオーナーシェフを務める店舗。宮脇氏も週に2、3度は店頭に立つ予定で、本場の紅茶の楽しみ方を伝えるワークショップも開催する予定だ。

三越日本橋本店の田中氏はこれらの店舗展開について、「本場・本格・本物の価値を提供する」という百貨店ならではの魅力を最大限に活かすものだと説明する。日本橋という土地柄、顧客ターゲットは訪日外国人かと思いきや「我々が抱える優良顧客や、さらにその先の国内富裕層を狙いたい」(田中氏)。

実は、三越日本橋本店と同じ、三越伊勢丹ホールディングス傘下の新宿伊勢丹などはインバウンド需要によって好調な来店客数を誇るものの、「日本橋にはあまり外国人が訪れない」(田中氏)。日本茶専門店というコンセプトは、ふらっと立ち寄った外国人への訴求ポイントになるとは認めたものの、「基本的には頻繁に訪れていただくお客さまへの提案として用意した」(田中氏)。

現在、同社が定義する優良顧客は「半期で7回以上来店し、7万円以上の買い物」をする顧客だという。1万3000人いるこの顧客は、来店客数のうち7.1%に過ぎないが、購買金額ベースでは26.6%にも達する。しかも、好調な経済状況を背景に、この数年は優良顧客が二桁%を超える割合で成長しているといい「2020年までに2万人といった数字はクリアできるのではないか」(田中氏)。

○"実験"で成果、トマトや甘酒が次の主役?

三越日本橋が進める「本場・本格・本物の価値提案」は、コンビニエンスストアやECには実現できないものだと田中氏は強調する。

同社はEC大手のAmazonと連携し、日本橋本店で提供する一部商品をPrime Nowサービスで宅配している。しかし、「物品を購入する"目的購買"はECなどで済むかもしれない。だが、体験価値を提供して『心を満たす』ことが三越に来ていただく理由、いい体験ができる場所としての三越を目指していきたい」とメリットを強調する。

お茶をコンセプトにした店舗を一気に2店舗オープンした背景には、数年前から続けている"実験"がある。

「2週間に1回、テーマを決めてお客さまに季節の食材などを楽しんでいただく催しを開催してきた。特に良い反応をいただいたのが、お茶やトマト。かつては衣食住の衣食に偏重していた顧客意識が、今後は"食"中心へと変化していくはず。『食楽』というただ食べるだけではない、食事を感じる体験の価値を見出していただけるような場にしたい」(田中氏)

飲食は、地下の食品フロアだけでなく、ほかの階でも利用者の回遊を目指す上で効果的に配置していると田中氏。今回の2店舗も、買い回りの休憩場所として設置することで、体験価値の訴求とあわせた"おもてなし"を突き詰めていく狙いだ。お茶やトマト以外にも、甘酒、ローストビーフといった催しが好評だったそうで、これらをどのように"体験"と結びつけるのか、三越の手腕が問われることとなりそうだ。