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韓国の雇用労働部は先月、トークアプリ「カカオトーク」を提供するカカオ本社を訪問。退社後、多くの雇用者がカカオトークで上司から指示を受け、自宅で仕事をする羽目になっている実態を確認した。

 雇用部は、いまや多くの企業で常態化しているカカオトークを利用した勤務時間外業務指示を改善するための対策として、夜遅くに業務関連のメッセージを送信させず、朝になったら送信できるような「予約伝送機能」をカカオトークに追加してほしいと要請した。

 さらに、機能の追加に併せて退社後の業務指示をなくすためのキャンペーンも提案。雇用部は今後もカカオ側とカカオトークの改善策について意見を交換する方針だ。

 また、早ければ来週にも、退社後の業務指示の改善に向けた研究用役入札公告を出すことを発表。研究を通じて海外立法事例を見ながら、効率的な規制案の提示を目指す。

 ほかにも、具体的な指針をまとめた上で企業に伝え、社会問題になりつつある長時間労働への対策議論も推進中だという。

 文在寅大統領は「働き方改革」の一つとして、「労働時間外における業務指示を制限し(特別な場合を除く)、労働者の就業後のプライベートを保障する」と選挙公約に掲げていた。

 今回初めて具体的に提案された労働基準法改正案は、業務時間後に上司が電話やメール、SNSなどを通じて業務関連の指示を下せないようにする内容。 業務指示には直接的な指示だけでなく、グループチャットを通じた間接的な業務の指示も含まれる。

 ただし、何か正当な事由によって例外的に業務指示を出す場合にはこれを残業勤務とみなし、通常賃金の50%以上を加算する。雇用部は今年内に研究用例を通じて外国の事例などを検討した後、改正案の閣議決定を目指す。

 いまやSNSなど情報通信技術の多様化によって、勤務時間外にも仕事に追われる人が増えている。その問題性は韓国に限ったことではない。数多くの大企業を擁するGDPランキング4位のドイツでは、勤務時間外の労働の改善に積極的だ。

◆だが、時間外労働に対する線引きは難しい

 フォルクスワーゲン社では3500人以上の一般社員に社用のスマートフォンを渡しているが、勤務時間終了後にはメールサーバーを停止し、メールの送受信をできない仕組みにしている。このほかBMWやプーマなど、大手企業が積極的に時間外労働に対する対策を取り入れている。

 実のところ、日本でも業務時間外に連絡を取る行為は禁止されている。しかし徹底はされておらず、あくまでも形式上の決まり。多くの会社で、業務時間外の電話やメールにも対応しなければならないのが現状だ。

 また、日本では近年若者の過労死問題が相次ぎ、企業の過重労働の実態が明るみになっている。共通点としてあげられるのは、いずれの「過労死事件」においても、残業時間が月100時間を超えていることだ。(持ち帰り残業含む)こうした背景から、長時間労働是正の動きが加速しており、政府主導で働き方改革が進み始めた。

 しかし、働き方改革が単なる「労働時間の短縮」に議論されがちだが、そこにはもちろん企業の業績をあげて国力をあげ、最終的にはGDPをあげていくことが大前提として存在する。長時間労働是正の後には、「労働生産性の向上」や「労働意欲の向上」など、さらなる課題が待っている。

 また、全企業を対象に一括で規制するわけにもいかない。特定業種にはまた違った対策案を適用せねばならないのだが、その線引きは難しい。

 結局のところ、規定を定めて違法だったとしても厳罰や処罰対象にもならないため、どこまでも「企業任せ」な一面は不可避である。

 韓国でも、「時間外労働」に関しての法制化は慎重だ。

 事実、雇用部は違法企業の厳罰化や処罰規定の制定には消極的で、労働環境による改善を推進していきたい構え。

 今月4日、求人サイト「ジョブコリア」が企業上役717人を対象に行ったアンケート調査によると、87.8%が「労働時間外における業務指示禁止法案をつくるべきだ」と法制化へ賛成。しかしながら66.1%にものぼる回答者が「法案自体には賛成だが、現時点で我が社での適用は難しい」と、実現の可能性については消極的な姿勢を見せた。

 ちなみに、韓国では昨年にも「退社後の業務連絡の自制」などを明示している。

 しかし、あくまで管理者の認識改善や行動変化を通じて業務連絡を自制しているというのにとどまり、実効性は極めて低かった。

 「カカオトーク」が「予約伝送機能」を備えたからといって、勤務時間外労働が是正されるとは到底思えない。「カカオトーク」に次ぐ連絡手段が次々と登場するであろうことは、想像するに難くない。

 いま真っ先に是正すべきとしたら、どこまでも「他力本願」な役人と上司たちである。

<文・安達 夕 @yuu_adachi>