レアル・マドリーに真っ向勝負を挑んだベティスのキケ・セティエン監督【写真:Getty Images】

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マドリーに認められた際限のないリスク

 20日、ラ・リーガ第5節が行われ、レアル・マドリーはベティスとの一戦を迎えた。ベティスはマドリーを相手に真っ向勝負を挑み、エル・ブランコに27本のシュートを放たれたもののGKアダンの活躍もありスコアレスでアディショナルタイムに突入。するとベティスFWサナブリアが劇的決勝ゴールを奪い、レアルのホーム、サンティアゴ・ベルナベウで大金星を勝ち取った。(文:エンリケ・オルテゴ【スペイン/マルカ】、翻訳・構成:江間慎一郎)

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【レアル・マドリー 0-1 ベティス ラ・リーガ第5節】
90分+4分 1-0 サナブリア(ベティス)

 昨季、キケ・セティエン率いるラス・パルマスと対戦した際に苦辛した問題はジダンの記憶に深く刻まれ、このベティス戦では問題を生み出されるほどのリスクを冒すことを嫌っていた。にもかかわらずいざ試合となると、際限のないリスクが認められている。

 負傷しているベンゼマなしのスタメンで競技場に姿を現したレアル・マドリー。変えることのできぬまま悪癖になってしまったこと、それは守備の集中を明らかに欠きながらピッチに立ち、自ゴールにて胆を冷やすことである。

 この試合では3分に、ベティスが3回にわたってチャンスを得た。そうしてマドリーに生じたナーバスな感情は果たせるかな、攻撃を組み立てる際のボールロストに反映されることになった。あれだけの質を有した選手たちにしてみれば、考えられないほどにボールを奪われている。

 レアル・マドリーがこの一戦で演じた以上の攻撃性を目にすることは難しい。前線にはポジションが固定されておらず、まったく自由に動くことのできるクリスティアーノ・ロナウド、ベイル、イスコが位置。

 イスコは頭と心の赴くままに動き続け、またモドリッチとクロースはかなり前方に位置し、加えてカルバハルにはウィングとなる心積もりがあった。カルバハルは、それこそ逆サイドのマルセロよりも前にポジションを取っている。そのプレーにはキレがあったものの、クロスを送るときを主として、各瞬間に何をすべきかを常に解釈できていたわけではなかった。

刮目すべき、セティエンのチームに確信を与える力

 前半に見せた攻撃の姿勢は後半になってから、ジダンが企てたすべての試みによって淡いものとなる。そして行われたのは、完全なる攻囲だ。混沌とした交代から4人、5人、6人、果てには7人が相手のペナルティーエリア内に陣取った。マドリーがどうしてそうプレーすることになったのか、説明は難しい。

 ジダンの最初の意図はカゼミーロをセンターバックとすることにあった。が、その後プランを変更。ハーフウェーライン付近の最終ラインに残る義務を負ったのはカルバハル、ヴァラン、ラモスで、彼らの前にルーカス、カゼミーロ、クロース、前線には右からベイル、クリスティアーノ、マジョラル、アセンシオが並んだ。

 だが、それでも、である。ベティスのGKアダンはさらなる奮闘を見せ、ブランコス(白たち、マドリーの愛称)は然るべき時間を迎える前から慌てふためいていた。サイドからのクロス、中央からのロングフィード、あまりの性急ぶり。すべては、不安の産物である。

 キケ・セティエンは現在59歳と、ずいぶんと遅咲きながら名声をつかんだ。スペインのフットボールは彼が独自の刻印を有する人物と認めるに至っている。ボールを保持する、攻撃を仕掛ける、自陣より相手陣内のスペースを占める、守備より攻撃を好む、とどのつまり試合の主役になることを望むことにおいて、彼の率いるチームは手堅い賭けとなった。

 もちろんそのほかのすべては、フットボールの普遍なる真の実行者である選手たち、彼らがどのような特徴を持っているか、彼らが戦術コンセプトをどう飲み込むかに懸かっている。

 しかし、そこに交渉の余地は存在しない。不幸にも、セティエンが率いているのはマドリーでもバルサでもないのだ。されどもその意思は挫かれることなく、“彼の”ベティスを“彼の”ルーゴ、“彼の”ラス・パルマスに仕立てようと試みている。

セティエン、ベルナベウで“博士号”を取得する

 このマドリー戦前の4試合、ベティスの成績は2勝(ホーム)2敗(アウェイ)。まだ9月すら終わっていない段階で、ベティスにはセティエンの刻印がしっかりと刻まれている。

 ベルナベウでも第1節のカンプ・ノウでの戦いのように自分たちのプレーに固執し、なおかつ選手たちはあの頃よりも自分たちがすべきことを把握していた。

 無論、レアル・マドリー相手であればボールを保持する機会は激減する。しかし勝とうが負けようが引き分けようが、セティエンのチームが自分たちらしくあろうとすることは変わらない。変わらないのだ。この試合では終了まで30分を切ったところで最終ラインを引き上げ、疲労困憊のライバルに襲いかかるための賢明さ、規律、勢いを有していた。

 セティエンのチームがいかなるものかを、誰もが目撃したはずである。ロングボールは極力使わず後方から攻撃を組み立て、できる限りの人数を相手陣内に配置して、ボールを失った際には前線から積極的にプレッシングを仕掛ける。

 各ラインはできるだけ狭められ、常に複数の選手がボールの近くに存在していた。ベティスの選手の誰もが、自分の責任から逃れることがない。ボールを保持して攻めるときも、死に物狂いで守るときにも。

 白いチームによる支配が最大限のものとなったとき、セティエンはDFの数を増やそうとはしなかった。そうではなく、攻撃の選手をピッチに立たせたのである。チェスを趣味とし、スペイン以外の51ヶ国でチェス・オリンピアードに出場できる実力を有した人物が披露した、テクニカルエリアからの勇敢な指手。万事うまくいった。

(文:エンリケ・オルテゴ【スペイン/マルカ】、翻訳・構成:江間慎一郎)

text by エンリケ・オルテゴ