「サッカーは、ダッシュが繰り返されるスポーツだ。選手は90分間、マラソン選手のように走り続けなければならない。一方では短距離走者のように最初の10メートルで爆発的なダッシュも見せなければならない。そのあいだでトレーニングをするのがカギだ」
 
「時間とともに、厳密にトレーニングは行なわなければならない。例えば、9分間の練習を行なう時には、1分×9回で行なう時とは全く別の刺激を与える。重要なのは、練習のあいだの休憩。長すぎても短すぎても、効果は得られな」
 
「たったひとつの練習を間違って行なうことで、1週間の練習を全て無駄にすることもある。誤った負荷を与えると、チームは試合で爆発するどころか、疲れて動けない」
 
 自身のサッカーをよく知る、ユヌス・マッリがいるのも大きい。マインツ時代、シュミット監督はマッリのことを、「トランジション10番」と評していたものである。
 
 これは、スルーパスや裏への飛び出し、ライン間でボールを受けるのを得意とする従来のトップ下タイプとは異なり、攻撃への切り替え時のポジショニングが巧みで、スペースを突くドリブルで攻撃にスピードをもたらす選手として重用されていたからだ。
 
 新体制での初戦となった5節のブレーメン戦は1-1の引き分けに終わったが、時折、狙い通りのプレーがあったことは好材料だろう。
 
 課題が解決されるまでに、ある程度の時間がかかるのは仕方がない。中断期の時間をうまく利用して、チームの方向性をまとめ上げることができるか、注目したい。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。