関連画像

写真拡大

夏の都議選で圧勝した「都民ファーストの会」が代表の選考方法をめぐって揺れている。9月11日に、荒木千陽氏が4代目の代表となった同党。選考方法は、他の政党で見られるような代表選ではなく、党の規約に基づいた役員3人による合意だったという。

これに対し、一部議員は「代表が密室で決められた」と反発。産経新聞の記事によると、同党の音喜多駿都議は、「所属都議に規約が示されたことはない」。両角穣都議もツイッターで「党規約を見た事がなかった」と告白し、「総会にて公表を求めたところ、早速メールで送られてきました」と書いている。

都民ファーストの会の規約とはどのようなものなのか。

●党規約は4回改定、全26条とシンプル

規約は過去分も含めた全5バージョン。4月上旬まで使われていた第3版までは、会の目的やポストを定めた全10条、1ページのシンプルなもの。変更箇所も事務所の住所変更だ。

4月4日からの第4版では、項目が増えて全21条になった。前文には「本規約は創業期に鑑みた時限的なものとする」との文言が見える。今回話題になった代表の選考方法もこのときの改定で定められた(第8条)。規約はその後、8月10日に総務会などの組織の項目が追加され、全26条の今の形になっている。

規約から都民ファーストの会のどのような性質が浮かび上がって来るのだろうか。古金千明弁護士に聞いた。

●削除された「総会」の規定、役員会が実質的な最高決定機関?

都民ファーストの会の現在の規約(8月10日変更、第5版)には大きく3つの特徴があります。

一つ目は、総会や党大会に関する定めがないことです。例えば、自民党、民進党、公明党などの規約では、党大会や全国大会が最高決定機関として位置づけられています。都民ファーストの会の規約も、今年1月14日に変更された第3版までは総会の定めがありましたが、第4版からは総会の定めが削除されています。

また、今年4月4日に変更された第4版から、「役員会は代表が招集し、予算、決算、綱領、基本政策、活動報告、活動方針、細則、各級選挙の候補者への公認又は推薦、その他代表が必要と認めることを議決」するとされ、都民ファーストの会の役員会の権限が大幅に拡充されています。上記のとおり、第4版以降は、総会の定めが削除されていますので、都民ファーストの会では、役員会が実質的な最高決定機関として位置づけられているのではないかと推測されます。

この点、第4版から、前文に「この地域政党は、企業のような一体的な意思決定に基づく管理、運営を目指す」と明記されるようになっていますので、第4版から総会の定めを削除し、役員会の権限を強化したことは、こういった都民ファーストの会の政策方針の現れといえるかもしれません。

●規約では、所属議員の議決権が保障されていない?

特徴の二つ目は、所属議員(都議)の議員団についての記述がないことです。

総会の定めが規約上ないこともあいまって、役員会(代表、代表代行、幹事長、総務会長、政務調査会長)のメンバーでない都議は、意見を表明することはできても、議決権を行使できる場面が規約上、保障されていないのではないかという疑問が生じます。

都民ファーストの会の議員総会が開催されたという先日の報道がありましたが、開催された「議員総会」は規約に基づく機関ではなく、事実上の会合にすぎなかった可能性もありえるところです。

三つ目の特徴は、代表の選出方法です。他の政党の場合、党首や代表は、議員と一定の党員等の「直接選挙」で選ばれることが多いです。一方、都民ファーストの会の規約では、「代表については代表選考委員会を設置し選考する」と定められており、「代表選考委員会については細則で別に定める」とあります。

ここで、代表選考委員を誰が選んでいるのかという論点があります。選挙には、大きく分けて、直接選挙(投票者が代表を直接選ぶ)と間接選挙(投票者が中間選挙人を選挙で選び、中間選挙人が代表を選ぶ)の二つの種類があります。所属議員等が代表選考委員を選挙で選んでいれば、都民ファーストの会では間接選挙で代表を選んでいることになります。

そこで、代表選考委員会細則をみると、「代表選考委員会の委員は、幹事長、政務調査会長、特別顧問(編注:現在の特別顧問は小池百合子東京都知事)にて構成する」と規定されています。そして、規約上、幹事長、政務調査会長、特別顧問を選ぶのは代表の権限となっています。したがって、都民ファーストの会の代表の選出方法は、所属議員等による直接選挙でも、間接選挙でもない方法となっていることがわかります。

役員が代表を選ぶと考えていいのか、役員の選任権を有する代表が次の代表を事実上選べると考えるのか、評価が分かれるところですが、いずれにせよ、幹事長、政務調査会長、特別顧問ではない都民ファーストの会の所属議員には、代表を選ぶ投票権は規約上ではないということになります。

●「決められる政治」を目指した規約?

この点、都民ファーストの会のガバナンスが一部では批判されています。ガバナンスの意味は、論者によって異なりますが、民主主義の制度では、政党の代表・党首が議員等の選挙で選ばれる必要があるという立場からすると、都民ファーストの会の代表選出方法については、批判が出るのも一理あるかもしれません。特定の政党を支持する有権者が特定の政党に所属する議員を選挙で選んだわけですので、有権者の代表である議員が政党の代表を選挙で選ぶ投票権があるのは当然だという考え方を支持する人は少なくないでしょう。

他方で、政党のガバナンスとは、所属する議員の意見が最後に一つになり、所属議員は政党の方針に従って一枚岩として行動することをいうとする立場もあります。この立場からすると、代表と代表が指名した役員によって構成される役員会の決定が政党の決定となる制度は、トップダウンで意思決定できる政治を実現するためには望ましいという考え方もありえるところです。所属議員の議論がまとまらず、政党としての方針が打ち出せないという事態は、少なくとも、都民ファーストの会では起こらなさそうではあります。

いずれにせよ、「政党法」がない日本では、代表の選出方法も含めて、政党の機関をどのように設計するか、各機関にいかなる権限を付与するかは、原則として、各政党の自治に委ねられています。最高裁判決でも、「政党の内部的自律権に属する行為は、法律に特別の定めがない限り尊重すべき」と判断しています。

都民ファーストの会の規約の是非については、都民ファーストの会の規約の内容も踏まえて、有権者が次の選挙で、どのように判断するかというところに委ねられているといえるでしょう。

都民ファーストの会の規約が、所属議員に公開されていないことで批判の声もあがっているようです。報道では事実関係が判然としないところではありますが、仮に、規約が所属議員に公開されていなかったことが事実であれば、望ましいことではないとは思います。しかし、規約が公開されていなかったとして、それが「ガバナンスの上で問題がある」と考えるのであれば、都民ファーストの会の所属議員が、自らの見識に基づいて党本部に公開を求めるのが筋かとは思います。

ラフなたとえになりますが、党の規則や綱領というのは、政党と所属議員・候補者との間の「契約」のようなものです。「契約」の内容を確認し、内容について異論がある場合に意見を述べるのは、当事者である所属議員・候補者の責任の部分も大きいといえるでしょう。

報道によれば、現在、小池新党と目される全国政党の立ち上げが準備されているようですが、新しく設立される全国政党では都民ファーストの会のような「特徴」のある規約とするのか、他の全国政党が採用しているオーソドックスな規約になるのか、規約がインターネット等で公開されるのか等、興味深いところです。

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
古金 千明(ふるがね・ちあき)弁護士
『天水綜合法律事務所』代表弁護士。IPOを目指すベンチャー企業・上場企業に対するリーガルサービスを提供している。取扱分野は企業法務、労働問題(使用者側)、M&A、倒産・事業再生、会社の支配権争い。
事務所名:天水綜合法律事務所