ワインの産地として名高いカリフォルニア州ソノマで、今年もインディカーシリーズの最終戦が行なわれた。この時期だと雨が降ることの方が珍しく、レースは毎年、気温は高いがカラッとした清々しい気候のもとで繰り広げられる。

 全長2.385マイルのソノマ・レースウェイはアップ&ダウンが激しいだけでなく、思い切りよく駆け抜ける必要のあるブラインドコーナー、高速のS字、ハードブレーキングが求められるタイトターンと、コーナーのバラエティが豊富だ。しかも、海が近いために強風が吹くことも多く、その風の強さや向きがマシンのハンドリングに少なからぬ影響を与える。チャンピオン決定戦の舞台にふさわしい非常にテクニカルなサーキットだと言える。


ランキング8位で今季を終えた佐藤琢磨。来季はレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングで戦う

 2017年のチャンピオンとなる可能性を残して最終戦を迎えたドライバーは5人。しかし、優勝を争い、タイトルを目指す戦いを実際に演じたのはチーム・ペンスキーのドライバー4人だった。

 ストリート/ショート・オーバル/ロードコースで使われるエアロキットではシボレー勢が優勢。さらに風というファクターも大きいソノマはホンダ勢には難しいコースで、唯一チャンピオンの可能性があったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)は、予選6位、決勝4位という結果に終わった。

 ディクソン陣営はピットタイミングをずらす作戦を使って何とかペンスキー勢の前に出ようとしたが、その作戦を封じ込めるため、ペンスキー勢は同じ周にピットに入るようにしていた。ディクソンは最終戦をランキング2番手で迎えたが、それをひとつ落としてシリーズ3位で2017年シーズンを終えた。

 最終戦はポイントが通常の倍になる。このダブルポイント・システムがあるため、多少のポイントリードなどひとつ、ふたつ順位を落とせば吹き飛んでしまう。ポイントリーダーとして最終戦を迎えたジョセフ・ニューガーデンは、先輩チームメイトを相手にした予選で、見事にポールポジションを獲得した。

 逆に、ポイント4番手からタイトル防衛を狙うシモン・パジェノーは、予選3位でグリッドは2列目になった。フロントロー外側はポイントランキング5番手で、あまりタイトルの可能性が大きくないウィル・パワー。ポイント3番手のエリオ・カストロネベスは予選4位だった。

 ニューガーデンといえば、シーズン途中までは予選の戦い方が弱点だった。3人のチームメイトたちは、マシンのセットアップ能力、コンディションの読み、ソフトコンパウンドのレッドタイヤのキャラクターの把握、そしてタイヤが最大限の力を発揮するようベストのタイミングでミスなくフライングラップをまとめ上げる力、これらすべてで若いニューガーデンを上回っていた。しかし、26歳のペンスキー1年生は急成長しており、大事な最終戦の舞台で、3人のベテランを超える予選パフォーマンスを発揮した。

 日曜日の決勝レースでも、ニューガーデンの冷静さは素晴らしいものだった。

 逆転王者を狙うパジェノーは4ストップ作戦を選び、1回目のピットストップからレッドタイヤを3連投。これが見事に成功してトップに躍り出た。ライバルより一度多いピットストップを行なってもなおトップを守り、今シーズン2勝目へひた走る。そして、狙った通りにダブルポイント戦での勝利を飾った。

 しかし、チャンピオンの栄冠を掴んだのはニューガーデンの方だった。タイトル獲得経験がないながら終始落ち着いた戦いぶりを見せ、セオリー通りの3ストップ作戦をミスなく走り抜いた。最終戦を2位でゴールすればチャンピオン。その仕事をキッチリとこなし、パジェノーに13点の差をつけて初のシリーズチャンピオンとなった。

 年間王者の栄誉と、タイトル賞金100万ドル(約1億1000万円)を手にしたニューガーデンは、「夢が叶った。しかし、まさかチーム・ペンスキー入りした最初の年にチャンピオンになれるとは考えていなかった。この気持ちをどんな言葉で表していいのかわからない。一緒に働き、戦ってくれたチームメイト、そして2号車のクルーたちに感謝する」と喜びを語った。

 2012年のライアン・ハンター-レイ以来となるアメリカ人チャンピオン。26歳という若さ。これから彼はチーム・ペンスキーで自らの黄金時代を築き上げていくことになるのだろう。

 ペンスキー勢のパジェノーはタイトル防衛こそならなかったが、ランキング2位を獲得。今年でフルシーズン参戦は最後になると見られているカストロネベスはランキング4位となり、パワーはランキング5位でシーズンを終えた。

 ソノマでの佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)はホンダ勢最上位となる予選5位だった。

 しかし、レースがスタートするや1周目にチームメイトのアレクサンダー・ロッシに幅寄せされてコースオフ。その影響か右リアタイアがパンクした。スロー走行でピットへと戻ったが、マシンにはダメージがあってレース復帰後もスピードが乗らず、最終的にはトラブルが発生。85周のレースの62周を終えたところでリタイアとなった。

 今季、日本人として初めてインディ500を制した琢磨は、デトロイトのストリートとポコノの高速オーバルでポールポジションを獲得。シーズン前半戦はポイントスタンディングの上位に名を連ねた。だが、シーズン後半戦は不運続き。最終5戦すべてで予選6位以内に入りながら、そのうちの4戦が13位、19位、19位、20位。トータル441点獲得で年間ランキングは8位となった。2010年デビュー以来のベストの順位だが、そのパフォーマンスからすれば、もっと上位につけても何の不思議もなかった。

「忘れられないシーズンになりました。チームとともに素晴らしい時間を過ごし、No.26のメカニックたちと深い絆で結ばれました。アンドレッティ・オートスポーツのメンバーひとりひとりに十分なお礼を申し上げることなど、とてもできそうにありません。本当に最高のシーズンでしたし、信じられないような栄冠を獲得できたと思います。

 今日の結果は残念でした。なんとかして好成績を挙げたかったのですが、これがモーターレーシングというものです。皆さんのご声援に心からお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

 厳しくて、まるでジェットコースターのようなシーズンでしたが、僕たちは、とりわけ最後の6レースでは驚くようなスピードを示すことができました。いつもホンダのトップドライバーのひとりでいられたのは信じられないようなことです。このことは、No.26のメンバーとともに誇りに思うところで、素晴らしい1年に起きたすべてのことにお礼を申し上げたいと思います」

 このようなコメントで今シーズンを締めくくった琢磨は、週明けの9月20日、2018年はレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング (RLL)へと移籍し、グレアム・レイホールとの2カー体制で戦うことを発表した。実力を伸ばし、どのタイプのコースでも安定した速さを発揮するようになったRLLなら、琢磨の実力はより一層活かされる可能性が高い。来年も、今シーズン以上の活躍を見せることが期待できそうだ。

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