肉体疲労時の栄養補給、滋養強壮に「ファイト!イッパーツ!」(画像は公式HPより)

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 「レッドブル」創業者の孫が、警官をひき逃げし死亡させたとして、現在、国際手配されている。その外電を読み、即座に今回紹介する商品名を連想した方は、かなりの栄養ドリンク通だ。

 いまや多くの説明もいらぬほど、日本の受験生や残業組にも人気が定着した「レッドブル」。実はオーストリアの実業家ディートリッヒ・マテシッツが、かのエナジードリンクの開発→欧米展開を考えた背景には、「リポビタンD」(大正製薬)の成功があった。

 略称「リポD」の国内市場規模や商品開発上の影響については、マテシッツ自身が認めて公言している(=ちなみに国際手配中の被疑者は共同創業者であるタイ人の御曹司)。

 母国ニホンでは「ファイト! 一発!」の謳い文句でおなじみだが、現在では16カ国以上(日本、英国、米国、中国、タイ、シンガポール、アラブ首長国連邦など)で販売中。そんな地球的人気飲料ゆえ、レッドブル誕生のヒントにされたのも、然もありなんの話だろう。

50年間で350億本を出荷

 「リポD」の発売開始時(1962年)、初代広告塔はマウイ島出身でプロ野球外野手の宮本敏雄選手(当時・読売ジャイアンツ)だったが、昭和世代の子どもには2代目・王貞治氏の出演CM(1963〜1971年)のほうが記憶に濃いだろう。

 その当時のキャッチフレーズは「ファイトで行こう!! リポビタンD」で、のちに定型化される男性コンビが「ファイト! 一発!」と叫んでは困難な状況下を克服するCM形態が現われるのは、1977年以降(1977〜1980年の勝野洋・宮内淳コンビが嚆矢)である。

 国内外で愛飲されてきたリポビタンシリーズの累計出荷本数は、ナント発売50周年(2011年10月末)時点で340億本に至っている。国内市場でも約5割のシェアを占めている「栄養ドリンク日本代表」であるが、海外仕様は(宗教上の理由や薬品規制法上)容量・成分・効能もさまざまだ。

 商品名が微妙に違ってくる点は誰もが想定内だろうが、「LIPOVITAN-D」とそのまんまのタイ版や、「D(デー)」の字が落ちた「LIPOVITAN」も多く散見(米国、メキシコ、フィリピン、アラブ首長国連邦など)される。

 中国語圏ではいずれも100mlビン製品が販売され、中国・香港が「力保健(リポゲン)」は表記し、増量型の150mlビンを好む台湾では「力保美達」と書かれている。

 また、揃って1972年から発売を開始しているマレーシアとシンガポールの場合は「LIVITA」と名称も一緒。しかも「ファイト一発!」を意味する「GET YOU GOING」の推奨弁がラベルで謳われている。

 両国の違いがマレーシアの場合、前掲・台湾の増量150mlビンも顔負けの250ml缶が存在することだ。同じ250ml缶が存在するのがベトナムだが、こちらはビン版が農薬を想起させるとの国民性を反映させての缶仕様らしい。

 ベトナムでは「LIPOVITAN HONEY」の名で親しまれ、その名のとおり蜂蜜入り甘口バージョン。インドネシアも同じ名称・仕様ながら、こちらはビン製品である点が違う。

そもそも「リポビタン」とは何ぞや?

 こうしてみると各国仕様の名称変更が施されつつも、本家の「リポ」部分だけは踏襲されているようだ。さて、話が前後したが、それではそもそも「リポビタン」とは何ぞや?

 これはリポクラシス(脂肪分解:lipoclasis)ともリポリシス(lipolysis)とも呼ばれる際の「リポ」と、ビタミンから「ビタン」を頂戴しての、いかにもジャパニーズっぽい短縮+造語の妙。「デー(D)」と呼ばせたのも、デリシャス(あるいはダイナミック)のD語源説があるけれども......。

 他にも、例の男優コンビCMの主題が実は「努力・友情・勝利」と「少年ジャンプと同じやんけ!!」という都市伝説(?)や、Dの販売当初には『リポビタンガム』なる兄弟商品というか「まぼろしの弟」的なチューインガムが存在したなんていう実話もある。

 そういえば今夏は、『リポビタンD×ドラゴンボール 限定デザインボトル』という主要コンビニでの期間限定発売商品も見かけた。

 リポビタンシリーズの商品ラインアップは昨年時点で18アイテム(指定医薬外品14、第3類医薬品3、第2類医薬品1)だったが......実は先日、それこそ肉体疲労時の栄誉補給を自覚し、近所のコンビニに寄ったら『リポビタンZERO』という見慣れない新人を発見!

 この新人はZEROの名前のとおり盗塁、いや「糖類」を使わずに甘味料で代替えさせてカロリーを約9割カットした期待株のようだ。背番号1から時代はやはり「0」へ、かな。
(文=編集部)