10代の若者たちがスマホを使う理由は

写真拡大

1995〜2012年の間に生まれた現在の米国のティーンエイジャーは、これまでのどの世代ともまったく異なる――。

20年以上、1100万人もの世代の異なる若者たちを調査研究してきたサンディエゴ州立大学心理学部のジーン・トゥウェンテ教授が、米国立精神衛生研究所(NIMH)と共同で行った最新の調査結果から、新たな若者像が浮かび上がってきた。

生まれたときからスマホが存在した世代

世代は生まれた年代で大きく区分されることが一般的だ。米国の場合、1925〜45年生まれは「沈黙の世代(サイレント・ジェネレーション)」、1946〜64年生まれは「ベビーブーマー」、1965〜1979年は「ジェネレーションX」となる。

各世代にはその時代を反映する特徴的な傾向があり、例えばベトナム戦争の終結などを経験したジェネレーションXは、個人主義的で政治や社会に対し冷笑的であると言われている。

トゥウェンテ教授は最新の世代は1999〜2017年生まれになると予想していたが、ここ数年でこれまでの若者たちとはまったく異なる変化が見られることに気がついたという。

20017年8月22日付の豪科学メディア「THE CONVERSATION」の記事中で、教授は「2010年ごろからティーンエイジャーたちの過ごし方は、それ以前の世代と大きく変わった」と指摘。次のように話している。

「それまで若者たちの変化は非常に緩やかでしたが、2010年ごろから非常に急激な変化が起き始めました。2012年には若者たちの幸福感が急速に低下し、うつや不安障害、孤独感も上昇していったのです」

詳しく調査をしてみると、急速な変化が起きていたのは1995〜2012年に生まれた層だった。この世代に共通するのは幼少または青年期にスマートフォンが登場したという事実だったのだ。

2015年にはティーンエイジャーの3人に2人はスマホを所有しており、トゥウェンテ教授はこの世代を「iGen(スマホ世代)」と命名。その行動も調査を行っている。

iGenの特徴は人生のほぼすべてがスマホからの影響を受けているという点だ。SNSやメメッセンジャー、メールを利用している時間は1日平均6時間。かつてどの世代の若者も好んでいた異性との交遊(デートやセックス回数など)や車の運転(免許の保有率)は半減しており、パーティーや外でのショッピングにも興味を持っていない。

精神的健康の悪化も顕著で、iGenの半数近くが軽〜中程度のうつ傾向にあり、米疾病管理予防センター(CDC)の報告では自殺率も上昇している。

スマホの利用時間が長くなる理由は...

ただし、トゥウェンテ教授はスマホがすべての元凶であるとするのは早計だとも注意している。教授の調査ではスマホの利用時間が長い若者は、友人と過ごす時間が長い若者に比べ幸福度が低い傾向にあることはわかっているものの、iGenに起きているすべての変化がスマホと相関もしくは因果関係にあると証明した研究や調査は存在しない。精神的健康状態が悪化している人が、スマホをよく使う傾向にあるだけかもしれないのだ。

もちろん、スマホの利用時間が伸びることで生じる問題はいくつか指摘されており、人と接して社会的スキルを発達させる時間が減少している、長文を読む習慣が失われているなどのデータも出ている。

この点についてもトゥウェンテ教授は「大人が一日に数時間もパソコンと向き合いメールを送り電話をかけている姿を若者たちに見せておいて、スマホの利用時間が長いというのは説得力に欠ける話だ」とコメントしている。

興味深い調査結果もある。iGenは「スマホやSNSではなく直接友人たちと会って過ごしたい」と考えているのだ。これに対し、iGenの親世代は「友人と会うのは無駄、悪い影響を受ける」と否定する傾向にあった。

「iGenにとってスマホは必要な物なのではないでしょうか。そうした存在にしているのは誰なのか考える必要があるでしょう」

トゥウェンテ教授の調査結果は、『iGen』という書籍(洋書)として8月22日から販売されている。