保有資産の縮小を決めるとみられる米国FRB(連邦準備制度理事会)。金融引き締めに転じる環境の中、米国の政治リスクは沈静化していない。財界のトランプ離れなど、政治混乱は米国株の波乱要因に転化し金価格を押し上げそうだ。

米国は利上げ観測の中で政治リスクが拡大。金価格は堅調の見通し

米国の利上げ見通しと「不確実性」と表現される政治リスクの高まりが、先行きを左右するテーマとなってきた2017年の金市場。米国FRBは今年、3月と6月に追加利上げを実行した。政治リスクは、当初懸念された欧州で沈静化する一方で、米国では時間の経過とともに深まり、市場への影響力を強めている。内政面では、トランプ大統領の政権運営に対する懸念が政策実行に対する疑念に転じ、外交面では北朝鮮情勢が不透明要因の際たるものだ。

まずFRBの政策の今後の方向性は、7月 25 〜 26 日のFOMC(連邦公開市場委員会)の声明文と議事録要旨から、おおむね明らかになった。まず9月の会合では、保有資産の縮小を打ち出すとみられる。手持ちの資産については現在すべて再投資に回している満期償還金の一部を段階的に減らすことを決め、翌 10 月から実行に移すことになりそうだ。そのうえで、 12 月の会合で今年3回目の利上げを検討する意向とされる。金市場では、ここまで放出してきた資金の回収を意味する資産縮小については織り込み済み。一方、FRBが目標としている2%のインフレ率に届かない物価上昇の鈍い状態が続いており、 12 月の追加利上げは難しいとの見方が支配的となっている。年末までには時間的余裕があることから、その間に利上げ観測が寄せては返す波のように繰り返されながら、高まった際には金は1200ドル方向への下げ、逆に後退すると1300ドル超への上昇ということになりそうだ。

もうひとつの政治リスクについては、すでに8月中に人種差別的運動に対して容認とも取れる発言をしたことから、産業界のトランプ離れが起きたため、減税策やインフラ投資の拡大という目玉政策に道筋をつけることすら難しいだろう。

今後、市場の関心事になっていると思われるものに、米国政府の債務上限引き上げ問題がある。9月末までに成立しないと 10 月2日に予定されている国債の償還は難しい。

近年、債務上限の引き上げ問題については、民主・共和両党間の政治的駆け引きの材料に使われてきた経緯があるが、それは市場には犒茲瓩蕕譴覆だ治〞の象徴として受け止められている。オバマ政権下で起きた際には、米国債が格下げされて金の急騰につながった。こうした懸念材料に加え、緊張状態が長引く北朝鮮問題がある。FRBが金融引き締めに転じるタイミングに政治リスクの高まりが重なれば、米国株も調整を深め、金は1400ドルに接近する局面が見られそうだ。

マーケット・ストラテジィ・ インスティチュート代表
亀井幸一郎 KOICHIRO KAMEI

中央大学法学部卒業。山一證券に勤務後、日本初のFP会社であるMMI、金の国際広報・調査機関であるWGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆・講演など幅広く活躍中。