今、株式市場で新株予約権が売買されています。これは「ライツイシュー」という資金調達方法によって生み出されたもの。今後も時価総額の小さな企業がこの手法で資金調達を行なう見込みです。個人投資家でも売買できるだけに知っておいて損はありません。

今月の知りたがりテーマ 中小型株の救世主「ライツイシュー」とは?

今秋、東証1部の出来高ランキングに「エー・ディー・ワークス第 20 回新株予約権」という見慣れない銘柄名が現れました。発行会社は、個人富裕層向けに収益不動産の仕入れからリノベーション(大規模改修)、販売を行なう不動産会社。今回は3回目の「ライツイシュー」という手法で増資を行ないました。これによって、新株予約権が市場で売買されたのです。

ライツイシューは、既存株主に対する「新株予約権無償割当」によって増資を行なう手法。新株予約権は、保有する株式の持ち分に応じて既存株主に割り当てられ、上場されます。既存株主は、新株予約権を行使して増資に応じるか、または増資による希薄化を避けるために売却するかを選択できます。ですので、既存株主の懐にも優しい資金調達といわれています。

なぜ、第三者割当増資や公募増資で資金調達を行なわないのでしょうか。日本は先進国の中でも時価総額の小さい上場企業が多い国です。たとえば、米国ではIPO(新規株式公開)段階でも300億円程度あるのが通常です。時価総額が小さすぎる企業は、IPO後も公募増資をするのは至難の業。理由は、基本的に時価総額の 20 %程度しか公募増資ができないことに加え、サポートする証券会社にとってもうまみがないので引き受けてもらいにくいからです。

ですから、既存株主の力を借りられる、この手法は中小の上場企業に適している資金調達方法なのです。しかし、これを悪用して、債務超過企業がライツイシューを乱発する時期がありました。

昨年、東証の上場制度整備懇談会では、この手法が正しく定着するための話し合いも行なわれています。中小型株が多い日本だからこそ、ライツイシューの整備は、日本の株式市場を発展させる第一歩になるかもしれません。ライツイシューのプロ投資家が出てくるのも時間の問題かも。

Masumi Sai 崔 真淑 Good News and Companies代表

神戸大学経済学部卒業後、大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に株式アナリストとして入社。入社1年未満で、当時最年少女性アナリストとしてNHKなど主要メディアで株式解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験後、2012年に独立。現在は、日経CNBC経済解説部のコメンテーターとしても活躍している。