「Amazon HP」より

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「日本企業には優れた技術があるが、マーケティングのノウハウがないために海外企業に負けてしまう」という解説がよく聞かれ、書店にはマーケティングに関する書籍があふれている。前回の本連載は、商品が売り場に並ぶ仕組みを紹介したが、今回はその商品が売り場に並べられるまでの流通経路、さらにはそのなかでも利用者が拡大しているEC事業の今後について立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に解説してもらった。

●EC時代でも変わらない流通チャネル

――製造されてからどのような過程を経て、商品が売り場にたどり着くのでしょうか。

有馬賢治氏(以下、有馬) 当然のことながら、商品は生産者から消費者に向かって自動的に流れていくわけではなく、流通チャネルを通じて売り場に届きます。それはアマゾンなどのEC(Eelectronic Commerce:電子商取引)業者が拡大する現代でも、基本は変わりません。

――流通チャネルとは?

有馬 流通チャネルとは、商品がメーカーや小売業者から消費者に届く経路のことをいいます。そして、その流通チャネルを構成するのが「生産者」「卸売業者」「小売業者」「消費者」の4つの要素です。主な流通経路としては、以下のものがあります。

(1)「生産者」→「卸売業者」→「小売業者」→「消費者」(一般的な小売店)
(2)「生産者」→「小売業者」→「消費者」(コンビニやスーパーなど大手小売業がメーカーから直接仕入れる場合)
※コストコや業務スーパーなどは「生産者」→「卸売業者」→「消費者」
(3)「生産者」→「消費者」(セシールなどに代表される通信販売)

 そのほか、フリーマーケットやフリマアプリの「メルカリ」のように、「消費者」→「消費者」というケースもありますが、基本的な流通経路はこの3つです。

●競争激化で試される付加価値

――近年、拡大するECはどれにあたるのでしょうか。

有馬 アマゾンの多くは(2)のパターンですが、楽天の場合は出店店舗によって3つが混在していますね。

――ちなみにECの物流というと、アマゾンの配送を担うヤマト運輸からの値上げ要請などもありました。(2)の経路が問題なのですか。

有馬 (2)の経路が問題なのではなく、「消費者」に届く手前の配達にかかるお金や労力のコストが問題なのです。昨今は、時間指定や当日中の再配達などが当然のサービスとして認識され、物流業者の業務に関わるコストは非常に上昇しています。20数前から百貨店の配送が別料金になったように、今後はEC各社が物流業者からの要望で配送を明示的に別料金にしたり、売価自体を値上げしたりといった対応をせざるを得ない状況になってきそうですね。

――EC事業側はそういった値上げ要請に加えて、フリマアプリの急進などもあります。環境変化の中で、事業は新たな局面を迎えつつあるように感じますが、アマゾンを含めたネット通販業界はどのような変化が必要なのでしょうか。

有馬 今後もネット通販のキャパ自体は広がるでしょうが、それに伴いさらなる競争の激化も予想されます。ドローンによる配送など人件費を抑えた方法が普及するまでの当面の方策としては、物販以外の付加価値によって他社との差別化をすることに各社注力していくのではないでしょうか。

――最近ではアマゾン・プライムのサービス内容が充実していると話題ですね。

有馬 比較的新しい映画を自由に会員が観られるように提供するのは、企業にとってはコストのかかるサービスです。しかし、長期的に考えれば、付加価値の魅力で会員数を増加させる良い方法の一つだと思います。会員が増えれば、その会員の年会費からも利益を生み出すことができますし、指定EC業者として長期的な関係性も構築できます。EC業界もこういったリピーターをいかに多く掴めるのかが鍵となってくるでしょう。

――ありがとうございました。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)