過去30年を見ると日本株よりも米国株のほうが圧倒的にパフォーマンスが高い(写真:Rawpixel / PIXTA)

米国株が注目を集めている。「トランプラリー」と呼ばれる株価高騰の動きもすでに半年が経過し、実際にドナルド・トランプ氏が大統領に就任すればラリーは終わって暴落するのではないかと予想されていた。

ところが、米国株はここにきて5日連続で史上最高値を更新するなど好調を保っている。中央銀行のFRB(米国連邦準備制度理事会)による政策金利引き上げ懸念やトランプ政権の迷走、北朝鮮問題、相次いで米国を襲ったハリケーン被害――。もろもろの問題を抱えつつも、米国株のベンチマークとして最もよく知られている「S&P500」は、ついに2500ポイントの大台に乗せてきた。

過去30年を見ると、日本株より米国株のパフォーマンスのほうが圧倒的に高い。そんな状況を見て、日本の個人投資家が「米国株投資」に動いているといわれる。証券会社によっては個人投資家による取引の大半が米国株取引というところもあるそうだ。

日本の株式市場は、株価が下落すると日本銀行のETF(株価指数連動型投資信託)買いが入る「官製相場」が続いており、適正な株価水準がわからなくなっている。不透明なマーケットよりも、クリアな米国市場のほうがわかりやすい。そんな投資家が多いのかもしれない。

時代を引っ張る優良企業

混迷を極める国際経済の中で、現在はあらゆる面で大きな構造改革が進行している。これまでの価値観や既存のシステムが、イノベーションによって覆されて、まったく新しい世界が広がりつつある。

たとえば、世界最大のオンラインストアである「アマゾン・ドット・コム(米国株式市場のティッカー:AMZN、以下同)」の躍進は、世界最大の玩具販売会社「トイザらス(Toys"R"Us)」さえも経営破綻に陥らせたとされる。アマゾンの株価はいまや1000米ドル近い。

日本が最も得意としてきた自動車産業も、いまやアメリカ企業躍進の前に危機感は募るばかりだ。トヨタ自動車やホンダといった自動車メーカーが、エンジンとモーターを併用して走るハイブリッド車(HV)の開発に躍起になっている間に、イギリスやフランス、中国では将来的にエンジン車を禁止する政策が示された。

自動車業界の将来トレンドは、エンジン車からEV(電気自動車)や燃料電池車といった電動車へと向かっている。EV専門メーカーの「テスラ(TSLA)」は、すでに株価が375ドル前後となっている。

自動運転システムの関連銘柄としても「エヌビディア(NVDA)」や「デルファイ」「インテル」「アルファベット(グーグル)」といった企業が注目されている。たとえば、コンピュータの画像処理や演算処理の高速化を可能にするGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)のトップメーカーであるエヌビディアは、日本の個人投資家も相当買っているといわれる人気銘柄だ。

どんな大企業であろうと未来の姿を見誤れば、今後はどんどん淘汰されていく。そしてその変革の中心は米国であり、米国市場に上場している企業群といってよい。

もともと、米国株と日本株には大きな違いがある。簡単に列記すると……。

ストップ高、ストップ安といった「値幅制限」がない
株主への利益還元が厚い。配当は四半期ごとが多い
売買単位は1株が多く、購入しやすい

この中で注目したいのは、値幅制限がないこと。市場全体が大きく動いて売買が停止される「サーキットブレーカー制度」と呼ばれる機能はあるが、個別銘柄には値幅制限がない。そのため特定の銘柄が短時間で爆上げすることもあれば、逆に暴落することもある。配当利回りは、年4〜5%の企業も少なくない。同1%台後半が平均的な水準である日本株と比べて高い。

売買単位も1株単位という銘柄が多く、気軽に投資できる。幸いなことに、現在はオンライン証券が米国株を扱っており、ある程度リアルタイムで売買できる。むろん、投資した銘柄にニュースがあったときなど、英語がわからないとリスクを認識できないといった可能性はつきものだが、インターネットの発達によって、現地とリアルタイムでニュースを得られる環境は整っている。

わずかなタイムラグはあるが、日本語に変換されてニュースとして流されることも多い。情報の格差は、米国市場のほうが日本市場よりも少ないかもしれない。

オンライン証券が便利だが、銘柄が限定される

米国株はかつて手数料が高く、取引時間の違いによるタイムラグなどがあって、そう簡単に取引する機会は少なかった。しかし、現在は以下のようなオンライン証券が米国株を扱っており、気軽に投資できるようになった。簡単にその概要と特徴をまとめておこう。

●マネックス証券

少なくともオンライン証券の中では、最も数多くの銘柄を扱っている。売買手数料も約定金額の0.45%(最低5ドル、最大20ドル)と割安。さらに、指し値のできる期間が90日間と最長で、さらに時間外取引も可能。米国株に関するレポートやセミナーが充実している。取扱銘柄は3091銘柄(2017年9月20日現在)、ETFには253銘柄(同)。

●SBI証券

取扱銘柄数は1049銘柄(8月中旬現在)、ETFは251銘柄(同)、売買手数料もマネックス同様に約定金額の0.45%(最低5ドル、最大20ドル)。指し値の有効期間は15営業日。時間外取引はできない。

●楽天証券

取り扱い銘柄数は1335銘柄(9月20日現在)、ETFは330銘柄(同)、手数料も上記2社に比べると1取引につき25ドルとやや高いうえに1回当たり1000株超の場合は、1株ごとに2セントの追加になる。また、指値有効期間が「当日のみ」というのも残念だ。ただし、海外市場に上場しているETFが充実している。日本でもETFは増えたものの、米国市場で組成されているETFやADR(米国預託証券)の多彩さでは3証券中1番だ。

このほかにも野村證券、大和証券などの対面販売中心の大手証券会社が、取引手数料は高いものの、ある程度の銘柄を扱っている。マニアックな米国株に投資したいのであれば、香港のブーム証券など海外の証券会社に口座を開設して投資する方法もある。また、株式CFD(差金決済取引)に投資する形で米国株を扱っている「IG証券」などもある。カラ売りなども可能だ。

注文方法も、以前は値段を指定せずに売買する「成り行き注文」ができなかったのだが、現在では遅れていたSBI証券も成り行き注文ができるようになった。マネックス証券に至っては、国内の株式同様に値段を指定して売買する「指し値注文」「成り行き注文」に加えて、「逆指し値」「ツイン指し値(OCO)」「連続注文」「トレールストップ注文」などが可能だ。楽天は指し値、成り行き共に可能だ。

なお、米国株の取引開始は日本時間で23時30分(夏時間)。リアルタイムで株価も見られる。マネックスは無料、SBIは月額500円(税抜)、楽天は同1000円(税抜)かかる。

大化けを狙うなら個別銘柄、リスク回避ならETF?

冒頭でもちょっと触れたが、現在の米国株は世界の最先端技術をリードする企業がずらりと並んでいる。とはいえ、ニューヨーク市場は史上最高値を更新中で、株価が割高かどうかを判断するPER(株価収益率)の平均値も21倍を超えている状態。過去の平均PERが15.5倍であることを考えると、投資するタイミングを誤るととんでもないことになりそうだ。

そもそも米国の株式市場は、ニューヨーク市場だけではなく、新興企業が多いといわれる「ナスダック(NASDAQ)」などによって構成されており、米国株式市場全体の時価総額は、全世界の株式市場全体の5割を超える。それだけ世界中のマネーが米国の株式市場に集まっていることを意味する。

かつてリーマンショック時には米国株も大きく下落した。米国市場を象徴する株価指数の「ニューヨークダウ工業株30種平均」も8000ドル台に下落。そのダウ平均は、いまや2万2000ドルを超えて史上最高値付近に張り付いている。

このダウ平均に組み込まれた30社こそが米国株を象徴している優良企業といっていい。アップルやグーグル、マイクロソフトをはじめディズニー、マクドナルド、キャタピラーといった米国を代表する企業がそろっている。初心者は、まずこの30社のリストからピックアップするといいのかもしれない。

株価指数のS&P500も、米国を代表する企業が500社組み合わされている。「バークシャー・ハサウェイ(BRKB)」「スターバックス(SBUX)」そして「アリババ」といった、よくマスコミで目にする注目株が入っている。これらの中からピックアップするのも手かもしれない。

世界最大の投資会社バークシャー・ハサウェイは、著名投資家のウォーレン・バフェット氏がCEOを務める。同社は、世界中の企業に投資している資産運用会社だ。

米国株最大の魅力は、長い時間をかけて株価が徐々に上がっていくこと。有名なところでは、50年で株価が330倍に成長したウォルト・ディズニー(DIS)などがあるが、アップルやアマゾン・ドット・コムなど、いまを象徴する銘柄もこの1年でそれぞれ6割、4割という幅で株価を急騰させている。米国経済の復活は、企業業績でも明らかだ。

もともと米国市場は、日本のように外国人投資家が主流ではなく、個人投資家が資産運用として投資していることが多く、年金などにも組み込んでいる。言い換えれば、業績の変化などに素直に反応する。

株価は、日本株よりもはるかに安定していて長期間かけて育っていく、という感覚が強い。日本人が注目している銘柄の多くも、5年後、10年後を見据えて投資する銘柄が多い。そのいくつかをちょっと紹介すると、次のようになる。

テスラ(TSLA)…… EV専門のベンチャー企業で、2017年4〜6月期の当期利益は3億3600万ドルの赤字(前年同期は2億3900万ドルの赤字)。にもかかわらず、現在の株価は379ドル81セント(2017年9月15日現在、以下同)で、明らかに先行投資タイプの銘柄といえる。世界的な活動を展開する大手自動車メーカーが、相次いでEVの販売に踏み切る中で、同社の将来性は不透明だが、夢を買う投資家は世界中に数多い。最低売買単位は1株だから、4万円程度で未来に投資しておくのもいいかもしれない。

エヌビディア(NVDA)…… 半導体の大手、同社の高性能ゲーム機向けGPUは任天堂の「スイッチ」に使用されていることで日本でも有名になった。2017年5〜7月期決算の当期利益は前年同期比2.2倍の5億8300万ドル。株価は180ドル11セント、PERは51.88倍。配当利回りは0.35%となっている。

アマゾン・ドット・コム(AMZN)…… 高級食品スーパーのホールフーズ買収やドローンによる配達など、話題には事欠かない。2017年4〜6月期の決算では当期利益が前年同期比77%減の1億9700万ドルながら、株価は986ドル79セントと1000ドルの大台前後を推移。その反面でPERは250.96倍と割高感も満載。市場全体、単独を問わず暴落したら買いたい銘柄ではある。

グーグル(GOOGL)…… 最近は、自動運転技術でも知られる多国籍テクノロジー会社。株価は920ドル29セントだが、PERは33.35倍と割高感がない。10万円程度の資金で世界の多国籍業に投資ができる。

ゼネラル・ダイナミクス(GD)…… 北朝鮮などの地政学リスクの高まりで注目されているのが軍事関連企業。潜水艦を製造する軍事船舶メーカーから、軍事関連の売上高80%超の軍事技術開発会社となった。トランプ大統領誕生と同時に株価暴騰。今年に入って200ドルの大台に。株価は198ドル27セント。PERは19.77倍。配当利回り1.36%。

チャンスは株価が暴落したとき。勇気をもって買う?

たとえば、いま日本人の個人投資家が最も注目している銘柄のひとつに「iPhoneX」を発表したアップルがある。将来、これらの新機種が売れてまた業績が上がるだろうと考えて安易に投資するのは危険だ。

米国株はいま史上最高値にあり、金利の引き上げまで検討されている状況では、近い将来やってくる「調整相場」を見て投資するほうがいいかもしれない。たとえば、米国株を時価総額の大きな順で並べてみると、他の個人投資家がどんな銘柄に投資しているかがわかる。

ベスト5は、.▲奪廛襦↓▲泪ぅロソフト、アマゾン・ドット・コム、ぅ▲螢丱弌↓ゥ侫Дぅ好屮奪という順だ(2017年9月15日現在)。

問題は、米国株への投資のタイミングだが、理想は暴落したときに勇気をもって購入することだろう。現在は、世界中が金融緩和政策を実施している状況で、カネ余りの状態。過剰流動性の中で、株価は1930年代の大恐慌時のように一直線に暴落する可能性は少ない。下げ止まる可能性が高いということだ。

米国株が、史上最高値を続けている中でも買われているのは、あり余る世界のマネーが行き場に困って米国に向かっている、という考え方がある。ある程度、下落したときに長期投資の目的で投資するのもいい方法だろう。

個別銘柄以外の銘柄に投資するという手も

また、リスクの高い個別銘柄が怖いという人は、米国市場に上場されているETFやADRといった個別銘柄以外の銘柄に投資するのもひとつの方法だ。米国市場に上場されているETFなどについては省略するが、世界をリードするヘルスケアや通信テクノロジー関連の業界に投資するETFなどに投資するのもひとつの方法だ。

ちなみに、東京証券取引所でもニューヨーク市場が下落すると株価が上がるインバース型のETFが存在する。米国の個別銘柄を買ったうえで、リスク回避のためにこうしたETFを日本で買っておく方法もある。具体的には――

●NEXT NOTES NY ダウ・ベア・ドルヘッジETN(コード:2041)

トランプ大統領の誕生で、ざわついている米国だが、企業の業績は好調で、数多くの米国の多国籍企業が世界を席巻しつつある。投資先に困っている個人投資家が多いと思うが、米国株が下落したら資産のほんの一部を米国株に投資してみるのもいい。

米国株に投資しておけば、いやでも通貨を米ドルに分散できる。何かあれば円高になる日本円を「安全資産の円買い」とメディアが言い続けているが、大きな誤りだ。本当に危ないときは「急激な円安」になる。遠い将来を考えたときに、米国株投資はさまざまな意味でリスク回避のツールとして使えるはずだ。