現在公開中の妻夫木聡主演映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』。恋に溺れる男の愚かさをポップに描いた映画ですが、同じく妻夫木聡主演で人間の愚かさを乾いたタッチで描いたのが『愚行録』!

今年2月に公開されましたが、もうDVD出てるんですね、早い。

DVDのいいところは観終わった後にすぐに観返すことができる点ですね。今作も頭から観返すと、ラストと冒頭の妻妻夫木聡の行動がリンクしてくるし、些細な仕草や表情が実は「衝撃のラスト!」への伏線になっていたことにも気づけますよ。

未解決の一家惨殺事件を追う妻夫木聡

妻夫木聡が演じるのは未解決の一家惨殺事件を追う記者です。同僚や上司は「忘れられた事件をなんで今頃……」と呆れていますが、妻夫木聡は「時間が経ったからこそ出てくる証言もあるはず」と関係者への取材を開始します。彼にはこの事件を追う本当の理由があるのですが、それはラストまでわかりません。

殺害されたのは絵に描いたような幸せな家族で近隣の住民にも感じが良かったのですが、関係者への再取材によってこの家族の「真相」が暴かれていきます。

関係者が語る愚行の数々

関係者の証言により被害者夫婦の過去の行動が明かされていきますが、同時に関係者たちのクズっぷりも露呈されます。こんな証言を誇らしげにのうのうと語る姿こそが愚行そのものではないかと思えてきます。

特に、臼田あさ美の証言が面白いです。有名私立大学には内部生と外部生で格差があるようで、その辺りでの女性同士のマウンティングが壮絶ですし、その奥に日本の階級社会の歪みが見えてきます。

証言の積み重ねによって被害家族と関係者たちの本性を描くストーリー展開がすごく上手いです。社会構造の歪みが生んだ闇と、その闇が引き起こした猟奇的な犯行の真相が次第に暴かれていきます。

臼田あさ美を筆頭にみんなのびのびと「クズ人間」を演じているのも楽しいです。特に松本若菜の演技が素晴らしくて僕に権力があったら彼女に助演女優賞を差し上げたいです!

また、わざわざポーランドからカメラマンを呼んで撮影しただけあって、引き締まった黒と淡色での色構成や、幾何学的で大胆な構図がカッコイイんですよ。

『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』』と併せて、ぜひ『愚行録』ご覧ください!