メッシやC・ロナウドの直筆サインものは、いまや投資家たちの将来的な換金を想定する対象となっている。

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 あこがれの選手のサインをもらうと、嬉しくてやる気になったり、なんだか誇らしくなったりするもの。しかし、サッカー界のスーパースターのメッシやクリスチアーノ・ロナウドから、直筆サインをゲットするのは至難の業だ。そのため、現代のサポーターはサインを手にしようと大金を支払っている。
 
“サインは直接もらうもの”、そんな常識が崩れる中、世界で拡大する新興マーケットの動向を、欧州サッカーやメモラビリア文化の魅力を知る、株式会社モーメント代表の伊藤大也氏に伺った。
 
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 メモラビリア(=記憶すべき出来事・品物。とくにスポーツや芸能などのコレクション)市場をリードするのは、やはりアメリカだと伊藤氏は言う。
「米経済誌『フォーブス』によると、直筆サインが入ったスポーツメモラビリアの市場は2012年時点で約1,500億円と言われています。全米に広がるスポーツメモラビリアの取扱い店舗数は優に1,000を超えています」
 
 アメリカでは選手の直筆サインものは、すでにビジネスになっており、鑑定する大きな会社まで存在している。スポーツに関心の高い熱心なコレクターだけでなく、将来的な換金を想定する投資家たちも対象となっている。前者は(かなり困難だが)自分で選手に会って書いてもらったものが宝物になるが、後者にとってみれば、本物かどうか証明されていることが大切になってくる。確実に本物を手に入れるために、大金が動くというわけだ。
 
「年間約50億円〜100億円の売上を誇るメモラビリア・ブランドも多数存在し、その中の大手スタイナー社は、ニューヨーク・ヤンキースの直筆サイン入りメモラビリアの独占販売権を持つことで有名ですね。ちなみにスポーツメモラビリアの世界最高額は、2012年に約4億円で落札されたベーブルースが着用していたユニフォームです」(伊藤氏)

 それでは、日本国内におけるスポーツメモラビリア市場はどうなのだろうか。現状とその可能性ついて伊藤氏に聞いた。
 前出の伊藤氏が、日本のスポーツメモラビリア市場についてこう言う
「購入できる場所も限られていますし、流通している商品数や単価などを基に推計すると、日本の市場は数億円に満たないと思います。直筆サインが売買される風土が醸成されていないと言えます」
 
 ここでスポーツ業界全体の市場を見てみよう。日経新聞によると、日本や中国を含めたアジアのスポーツビジネス市場は、2013年の時点で97億ドル(約1兆円)となっており、北米や欧州のわずか3割にとどまっている。日本単独ではさらに低い割合となる。この数値が示すように、日本はスポーツこそ盛んなものの、ビジネスに結び付けられていない現状がある。
 
 そんななか、2016年、経産省は成長戦略の一環として、スポーツ産業市場を日本の基幹産業へと成長させるべく活性化策を発表。2025年までにスポーツ産業市場規模を2012年時点での5.5兆円から15.2兆円に拡大する目標を掲げた。
 
「その点から見ても、日本では未開拓と言ってよいスポーツメモラビリアが市民権を獲得し、より身近に楽しむことができるような時代になるかもしれません。ただ、先述のスタイナー社の創業者も語っていますが、最も大切なのは喜びを与えてくれるか否かだと思います。自分も、少年時代に集めたサッカー選手の直筆サインを眺めながら試合を観戦すると、なんともいえない格別な気分だったことを思い出します」
 
 伊藤氏が語るように、スポーツが日本に、地域に根付き、人々の日常に喜びや楽しさをもたらしてくれることが、スポーツメモラビリア市場が広がっていく条件と言える。2020年の東京オリンピックを契機に、スポーツ産業市場が拡大していくなかで、メモラビリア市場がどう変わっていくのか、その動向にも注目したい。