【ライターコラムfrom山形】「もっと」貪欲に、「もっと」上へ…山形の地で成長を続ける安西海斗

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 7月13日に柏レイソルから育成型期限付移籍で加入した安西海斗。登録から2試合目となる7月22日の湘南ベルマーレ戦で早くもスタメンに抜擢され、ベテランの本田拓也とダブルボランチを組み山形デビューを果たした。柏の下部組織からトップ昇格したプロ2年目。柏でのリーグ戦出場はなく、今季は天皇杯1試合とルヴァンカップ2試合に出場しただけの実績だけに、山形のほとんどのファンやメディアにとっては未知数の選手だった。だが、立ち上がりの鋭い縦パスや、馬力のある守備など、加入間もない19歳とは思えぬ堂々たるプレー。「この選手、できる」という印象を残し、首位を食う3−0の勝利に貢献した。

 その後、システム変更やケガ人の復帰によるポジション争いの激化もあり、先発に定着とまではいかなかったが、ここ3試合は3ボランチの左として先発出場を続けている。前々節の京都サンガF.C.戦で阪野豊史のゴールの起点となった、鋭いクサビのパスは安西の真骨頂。木山隆之監督も「狭いエリアでも、受けて後ろに戻さずに前に差し込んで行く能力は高い」と評価する。

 それでも今、本人のコメントには「もっと」という単語があふれる。

「(縦パスが)もっと出せれば得点チャンスは増えると思うし、シュートをもっと打ちたい。得点につながる長いパスも出していきたい」

「(守備も)もっとできる。中途半端に寄せている時がある。もっとボールに行って奪うことが全然できていないので、もっとやっていきたい」

 今回の移籍の動機は「外に出て、試合に出て成長したい」というもの。山形に来て2カ月で7試合を経験し、自分への「もっと」という要求がより膨らんだのだろう。もちろん収穫の実感もある。実は、デビュー戦となった湘南戦は自分では全く満足のいかない出来だったのだそうだ。だが、今の感覚は少し違う。

「湘南戦は何も考えずに頑張っているだけみたいな感じだった。今の方が余裕を持って考えながらできるようになって、自分の良さは出せていると思います」

 また、山形では柏時代に比べ守備面で要求されることも多い。守備は自分でも課題だと意識していたようで、その意味で「自分に足りていない部分がここで伸びている」という手応えがある。

 それにしても驚かされるのは、2年目の19歳が、新しい環境の中で物怖じすることなく持ち味を出し、自分で成長の糧を見つけて貪欲に吸収していること。技術やセンスのベースはあるのだろうが、間違いなくメンタルが強い。監督もそのあたりはいち早く感じているようだ。

「あいつは根性が座ってる。少々きついことを言っても全然気にしない。聞いてるのかな?と思うくらい(笑)。でもリアクションは早いから聞いているんだろうね」

 こういう人を「心臓に毛が生えている」と言うのだろう、と思いきや、安西にも苦手があった。山形に来て、ラジオのインタビュー番組に初めて出演。収録は特にトラブルもなく行われたそうだが「緊張しちゃって、全然覚えていないです」と苦笑する。

 山形は今、プレーオフ圏内の6位を勝ち点差7で睨む。ここ5試合連続ドローと苦しい結果が続いているが、ゲーム内容は悲観するものではない。狙うはラスト9試合での大逆転。安西もまた、その気持ちの強さは変わらない。

「僕は途中からの加入ですが、本当にこのチームで勝ちたいし、上がりたい。昇格プレーオフはたぶんすごい雰囲気だと思うので、それを味わってみたいという気持ちもある。一つ一つ勝ちたいなと思っています」

 若き助っ人の貪欲さと勇気あるプレーは、間違いなく、厳しい戦いに挑むチームに新しい活力を与えている。

文=頼野亜唯子