ソシエダ戦でカウンターから豪快な得点を決めたベイル。本人もチームメイトも歓喜した。(C)REUTERS/AFLO

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 9月17日のレアル・ソシエダ戦(リーガ・エスパニョーラ4節)、レアル・マドリーのガレス・ベイルが61分にチーム3点目となるゴールを決めると、ベンチから一斉に選手、スタッフたちが飛び出して祝福した。チームにとっても待ちに待ったゴールだったことが伺えるシーンだった。
 
 すでにマドリーが試合をコントールしていた時間帯の貴重な追加点ではあったが、値千金というほどのものではなかった。それよりも、最高時速が実に35.6キロに達するスピードで後方から敵をぶっちぎって70メートルを走破し、絶妙なフィニッシュでネットを揺らしたこの“らしい”ゴールを復調のきっかけにしてもらいたいという、チーム全体の願いが歓喜の輪から伝わってきた。
 
 普段のベイルはピッチ外でも孤立気味で、表情も決して豊かとは言えない。そんな彼が舌を出しながらチームメイトの抱擁を受ける姿からも、いつにも増した喜びの気持ちが滲み出ていた。
 
 そのゴールまでは、指揮官のジネディーヌ・ジダンがいつ彼をベンチに下げるだろうかという重苦しいムードがベイルを取り巻いていたが、得点を機に状況は一変。その後、再び豪快なスプリントを見せたかと思えば、守備にも奔走するなど、完全に吹っ切れたかのようなプレーを披露した。
 
 バルデベバス(マドリーの練習場)の関係者によると、ベイルのコンディションは現時点でまだ60%の状態だという。そんな中でもイスコがあの場面でパスを出したのは、ベイルなら必ずボールに追いつけるという確たる信頼関係が根底にあったからだ。「毎日一緒に練習をしていれば、ベイルのコンディションは把握しているはずだからね。コンディションが万全でなくても、ベイルのスプリント力はチーム随一だ」と前述の関係者も認める。
 
 ベイルは昨年11月、右足首にメスを入れた。2月中旬に戦列復帰を果たしたが、後に本人が認めたように回復を急ぎすぎたため、その後も練習、あるいは試合に臨むために痛み止めの薬を飲む日々が続いた。さらに4月下旬のクラシコで左足を痛め再び戦線離脱。地元カーディフ開催のチャンピオンズ・リーグ決勝戦でも、77分からの13分間しか出場機会が与えられなかった。
 ジダンはソシエダ戦前日の記者会見で、それまで低空飛行が続いたベイルに関して、「4か月間も戦列を離れていたのだから、怪我をする前のコンディションに取り戻すには同じ期間が必要だ」と擁護。さらに過去5試合で6得点をマークと相性のいいスタジアム(アノエタ)でプレーすることを追い風に、ゴールを期待するとも語っていた。
 
 ベイルのゴールにジダンも歓喜したのは、そんな親心も込められていたからだった。試合後に指揮官は「とても嬉しい。ガレスはゴールを必要としていた。しかも彼らしいゴールだったしね」と笑みを浮かべた。
 
 両チームの選手のスタミナや体力が落ちる60分過ぎ、しかも雨でピッチが重くなった中での70メートルの独走弾は、ベイルがマドリーで決めた中で最も価値のあるゴールの一つ。60メートルを7.2秒で駆け抜けて対峙するマルク・バルトラ(現ドルトムント)を置き去りにし、左足で流し込んだ2013-14シーズンのコパ・デル・レイ決勝戦での優勝ゴールを彷彿とさせるものだった。
 
 しかしジダンは、ベイルの現状についてこう分析する。
 
「まだまだ本来の姿ではない。少しずつ調子を取り戻していってもらいたい。ガレスはもっといいプレーができる。ただ、それには我慢が必要だ」
 
 ジダンには確固とした根拠がある。マドリーでは全ての選手に対し練習中にGPSを装着することを義務付けており、毎日その結果を詳細に分析。ベイルについてもスピードを含めた様々な数値に伸びしろがあることを把握しており、それを前提とした発言なのである。
 
 いずれにせよ、ベイルが復調するには継続した出場機会が不可欠だ。だからこそ不要論が叫ばれる中でも、ジダンは継続して起用しているのであり、こうした主力に対する一貫した信頼は、アルバロ・モラタ(現チェルシー)が猛烈なアピールを見せる中でも、先発起用を続けた昨シーズンのカリム・ベンゼマのそれと相通じるものがある。
 
 こうした指揮官の一貫性は、若手の抜擢にも見られる。ソシエダ戦のボルハ・マジョラルの先発起用はその一例で、このスペインU-21代表FWも先制ゴールという結果でその期待に応えた。
 
 チームという車輪に組み込めば、選手たちは期待に応えてくれる――。それがジダンの掲げる流儀のひとつなのだ。
 
文:エレオノラ・ジオビオ(エル・パイス紙/レアル・マドリー番記者)
翻訳:下村正幸
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