シェフのセバスチャン・ブラス氏(左)と父親のミシェル・ブラス氏(2014年1月24日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】レストラン格付け本「ミシュランガイド(Michelin Guide)」の三つ星を獲得した南仏のレストランのシェフが、この栄誉を返上したいと訴えている。完璧な料理を日々提供しなければならないという重圧から逃れたいという。

 セバスチャン・ブラス(Sebastien Bras)氏(46)が南仏ライヨール(Laguiole)村で営むレストラン「ル・スーケ(Le Suquet)」は、1999年にミシュランの三つ星を獲得し、名門レストランの仲間入りを果たした。フランスには現在、こうしたレストランが27店ある。

 しかしブラス氏は20日、「新たな章を始めるため」として、レストラン格付け本「ミシュランガイド(Michelin Guide)」2018年度版への非掲載を求めた。

 ブラス氏はAFPの取材に対し、誰もが欲しがる名声によって「大きな充実感」を得られたが、厳格な水準を維持することは「とてつもなく大きなプレッシャー」でもあったと語った。

「年に2〜3回、(ミシュランガイドの)調査があるが、それがいつかは分からない。提供する料理すべてが調査対象となる可能性がある。つまり、毎日厨房(ちゅうぼう)から出される料理500皿の中の1皿が、その調査に当たるかもしれない」

「知名度は下がるだろうが致し方ない」として、「自分の創作料理がミシュランの調査員に受けるかどうか悩むことなく」客の舌を魅了し続けたいと続けた。

 ミシュラン側によると、星を獲得したフランス人シェフで、レストラン内での立場や店舗のビジネスモデルに関する大きな変更以外の理由で自らミシュランガイドへの非掲載を求めた例は初だという。

 同ガイドの審査委員、クレール・ドーラン・クローゼル(Claire Dorland Clauzel)氏は、ブラス氏の要請について「考えは尊重する」とし、これによって「自動的に」ル・スーケがミシュランガイドから除外されるわけではないが、十分考慮されることにはなるだろうと述べた。

■自殺した三つ星シェフを思い浮かべる

 約10年前に父親のミシェル・ブラス(Michel Bras)から店を引き継いだセバスチャン・ブラス氏は、他の「シェフなら全員」皆そうだろうが、2003年に自殺したベルナール・ロワゾー(Bernard Loiseau)氏のことを時々思い浮かべずにはいられなかったと語った。

 ロワゾー氏は、ミシュランの三つ星を失うのではないかとのうわさを苦に命を絶ったとみられている。だが、ブラス氏は「私自身はそういった気持ちにはなっていない」と急いで付け加えた。

 ミシュランで星を獲得した名門レストランによる過酷な競争の世界と決別したシェフは、これまでにもいる。過去にいくつかのレストランが、三つ星の栄誉を手放している。

 2005年には、フランス料理の新潮流「ヌーベル・キュイジーヌ(Nouvelle Cuisine)」の創始者の一人、故アラン・サンドランス(Alain Senderens)氏が、客はゴージャス過ぎる料理に嫌気が差しているとして星を返上し、フランス料理界に衝撃を与えた。サンドランス氏は後に別の店名で、旧店舗の値段よりずっと安くシンプルなメニューを提供するレストランを開店した。

 ドーラン・クローゼル氏は、一流シェフが耐えている重圧について聞かれると、トップアスリートになぞらえて「卓越したものであるためには、修練とハードワークが要求される」と語った。「私たちはうちの店のシェフたちにこう言っている。『ミシュランガイドのために働いているんじゃない。客のためだ』」
【翻訳編集】AFPBB News