周回衛星に宇宙機を衝突させて小惑星「ディディモス」の進路を変えるAIDA計画の想像図(2015年5月15日提供)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】地球に迫る小惑星の進路をそらし、衝突の大惨事を回避するというハリウッド映画『アルマゲドン(Armageddon)』にも似た未来的な国際協力プロジェクト「Asteroid Impact & Deflection Assessment、AIDA」計画。その予行演習として進められている試験的なミッションから撤退を決めた欧州に対し、宇宙科学者らは20日、撤退の決定を見直すよう強く訴えた。

 宇宙科学者らは、宇宙から飛来する天体から地球を守るための能力を開発する上で、このAIDA計画は不可欠と指摘している。

 米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)応用物理学研究所(Applied Physics Laboratory)のアンドリュー・チェン(Andrew Cheng)氏は、ラトビアの首都リガ(Riga)で開催中の欧州惑星科学会議(European Planetary Science Congress)でAFPの取材に応じ、天体衝突について「恐るべき大惨事となりかねない類いの災害」と語った。

 チェン氏は、AIDA計画で米国側が進める「Double Asteroid Redirection Test、DART(二重小惑星進路変更実験)」計画の担当科学者だ。すでに計画の承認を受けたDARTは、最終確認を得るための「フェーズB」段階に入っている。

 DARTでは、遠方の小惑星「ディディモス(Didymos)」の進路を変えるために、その小型の周回衛星に宇宙機を衝突させる計画を立てている。これは科学史上初の試みだ。

 欧州側が担当するのは、宇宙機の衝突とその影響を観測するための小型探査機を衝突地点近くに送り込む「Asteroid Impact Mission、AIM」プロジェクト。だが、欧州の宇宙担当閣僚らが2016年12月に2億5000万ユーロ(約330億円)の予算申請を却下したため、AIMプロジェクトは撤退を余儀なくされた。

■水爆を上回る

 AIMプロジェクトの撤退をめぐりジョンズ・ホプキンス大学のチェン氏は、他の大半の自然災害とは異なり、小惑星衝突は「世界による防御が可能な事象だ。人間の力で何かができるのだ」と語気を強める。

 2013年、ロシア・シベリア(Siberia)上空の大気圏で小惑星が爆発し、約1600人が負傷する出来事があった。

 AIDA計画で標的となるディディモスの衛星ディディムーン(Didymoon)は、大きさの点ではこれよりはるかに危険度が高い部類に入る。

 ディディムーンは幅約160メートルで、この大きさの天体が地球に衝突する際のエネルギーは400メガトンの爆弾に相当する。その規模についてチェン氏は、「最大級の水爆を上回る」と説明した。

 リガの科学会議に出席した欧州の科学者らは今回、AIMの代替案として、その内容を見直し、予算を抑制させた新たな計画案を提示した。

 新しいAIM計画案は、搭載機器が1台のカメラと小型衛星だけと大きく削減され、ディディムーンの内部構造を調べるための着陸機とレーダーは搭載しない見通しだ。

 欧州担当プロジェクトの科学部門を率いるパトリック・ミシェル(Patrick Michel)氏は新予算案について問われ、約2億1000万ユーロ(約280億円)と答えた。

 そして当然ながら、計画に遅れが生じるのは避けられない。米航空宇宙局(NASA)は、ディディムーンへの宇宙機衝突の実施を2022年に計画している。

 欧州宇宙機関(ESA)のヤン・ボルナー(Jan Woerner)事務局長はAFPの取材に、2019年開催予定の次の閣僚会議で「新案を推す方針」を明らかにした。

 ボルナー局長は、取材に応じた電子メールで「小惑星の進路をそらすための手段をすぐにも手にすることが、一生物種としての人類にとって重要になる。(天体衝突が)遅かれ早かれ起きることは分かっている。もし起きたらの問題ではなく、いつ起きるかの問題なのだ」と述べた。

■AIMでは可能だが、DARTではできないものも

 ボルナー局長はAFPの取材に「小惑星の進路を変える実験はこれまで行われたことがなく、室内実験などできるはずもない。われわれのモデルが正しいかどうか、シミュレーションが予想通りに機能するか(どうか)を明らかにする必要がある」ことを説明した。

 今回の科学会議に大西洋の両岸から集結した欧米の科学者らは、参加者全員に対して、自国の代表者らにプロジェクトの重要性を認識させるよう呼びかけた。

「AIMでは実行可能だが、DARTではできない測定もある」とジョンズ・ホプキンス大学のチェン氏はその重要性を強調する。ESAのマイケル・ケッパーズ(Michael Kueppers)氏も、「われわれは一丸となって、この計画にある程度の資金を費やすことを、国家の代表者らに納得させる必要がある」と強く訴えた。
【翻訳編集】AFPBB News