理系で1位になったパナソニック。2018年に創業100周年となり、それを記念した家電シリーズを8月に発表した (撮影:風間仁一郎)

就職活動では、説明会・セミナーに参加することから、企業とのコンタクトが始まる。ここでの印象が就活に大きな影響を与えるといっても過言ではない。

8月24日の配信記事「学生が選ぶ『社員が好印象な会社』ランキング」では、就活を通して、社員の印象がよかった会社を取り上げた。今回は、説明会やセミナーを通して、学生がどんな企業によい印象を持ったかを調べてみた。

好印象なのはメガバンクやエアライン


HR総研が今年6月に楽天「みんなの就職活動日記」と共同で2018年卒業予定の就活生を対象に行った調査結果だ。まず、説明会への参加社数を平均すると、文系学生は20社近く、理系学生は10数社にのぼる。

今回の調査ではその中から1社のみを選んでもらっている。つまりもっとも強い印象を持った企業が調査結果に表れているわけだ。調査結果を見てみよう。

まず文系ランキングは、1位みずほフィナンシャルグループ、2位日本航空(JAL)、3位損害保険ジャパン日本興亜、以下、4位東京海上日動火災保険、同三菱東京UFJ銀行、6位JTBグループ、7位三菱UFJ信託銀行、同三井住友海上火災保険、9位ジェーシービー、10位りそなグループという順位になっている。

目立つのは銀行だ。11位の三井住友銀行を入れると、りそなを含む4大銀行がすべて上位に顔を出している。三菱UFJ信託銀行も7位と健闘している。なかでも目立つのは文系1位のみずほフィナンシャルグループである。他の銀行は理系ランキングでは名前がないが、みずほは理系でも25位にもランクインしている。

なぜ支持が多いのか、コメントから見てみよう。

まず演出のうまさが目立つのがみずほだ。「職種ごとにブースが分かれており、テーマパークを回っているようでワクワクしたから」(京都産業大学、文系)、「かなり大規模な座談会という感じで、業務の幅が広いぶん迫力があった」(東北大学、文系)、「採用におカネをかけていて、空間がハイカラ。そしてみずほの人と話せることが魅力」(学習院大学、文系)、「派手だった」(東京工業大学、理系)と評判がいい。

もうひとつの魅力はトップの登場である。「佐藤社長が登壇されて直接お話を聞く機会を得られたから。あれだけ大きい企業のトップの話を直接聞かせてもらえたのはみずほだけでした」(東京大学、文系)と感激している。ベンチャー企業で社長が登場することは珍しくないが、みずほのような規模の企業では珍しいかもしれない。

文系の評価は、トップ登場やお土産、親身な相談・・・


他の銀行への評価も見てみよう。4位の三菱東京UFJ銀行は気前がいい。みずほへのコメントでプレゼントに関する記載はなかったが、三菱東京UFJは参加者にふるまっており、学生の評判はいい。

「行くたびに就活グッズを貰えて嬉しかったです。また、ネットで毎回アンケートがあり、私たちの意見を聞いてくれている気がした」(駒澤大学、文系)、「人数が多いのに会場運営がスムーズであったところ。またノートなどをくれたところ」(早稲田大学、文系)、「5月にもセミナーに呼んでくれたから。お菓子とジュースが出てきて財力を感じたから」(立命館大学、文系)。

11位の三井住友銀行に対しては、「行員の方が親身に相談に乗ってくれたから」(九州大学、理系)、「内定者や若い年次の方の話も聞けて、就職の決め手や働いた後のことがとてもわかりやすく、ここで働きたいと思ったから」(法政大学、文系)と評価は高いが、やや地味な印象がある。

同じメガバンクでも、みずほの説明会はエンターテインメントに富み、三菱東京UFJではお土産があった。三井住友へのコメントではそうした記述が見られなかった。

近年になって就職人気ランキングの常連になっているのが、エアライン系の企業だ。支持が多い理由は、やはり、女子学生からの人気が集中しているからだろう。

ランキング2位のJALは、学生への接し方がよいようだ。「学生を緊張させない工夫が素晴らしく、その気持ちがとても強いので、とても楽しめた」(龍谷大学、文系)。また、「名前も覚えてくださり、フレンドリーに接して下さったから」(東北大学、理系)というコメントもある。自分の名前を覚えてもらえれば、学生の喜びは大きいだろう。

現場感も大事である。理系学生に対して「説明会のなかに格納庫見学もあり、普段見ることのできない業務を見ることができた」(早稲田大学、理系)と整備の現場を見せ、女子学生に対しては「実際に制服で登場して、目でも楽しめる説明会だったから」(上智大学、文系)と憧れの制服姿を見せている。

全日本空輸(ANA)(13位)に対する評価もJALに似ている。「人事の方がみなさんやさしい! 選考のたびに先輩CAがいてくださって、お話しできたのがたのしかった」(関西学院大学、文系)というように、気配りと優しさが評価されているようだ。

理系の評価ポイントは「じっくり話せる」こと


一方、理系ランキングは、1位パナソニック、2位ライオン、3位味の素、4位NTTデータ、5位野村総合研究所(NRI)、6位トヨタ自動車、同東海旅客鉄道(JR東海)、同日立製作所、9位カゴメ、同デンソー、同東レという企業が並ぶ。

学生が評価する説明会は、文系と同じく社員なのだが、少し感じが違う。文系は社員のスマートさを評価する傾向が見え、ややキラキラしたものを好んでいるように感じる。理系では社員と「じっくりと話せる」ことを好んでいるように見える。

たとえば1位のパナソニックに対しては、「OGが沢山くる。実質のリクルーター面談になるが、技術面談をしっかり見てもらえ、大いに役に立った」(奈良女子大学、理系)、「社員の方とじっくりお話する機会を設けていただいたためです」(岡山大学、理系)。

目立つ言葉は「しっかり」「じっくり」であり、マンツーマン対応が好まれているようだ。

2位のライオンで目立つ言葉は「研究所」。「研究所見学もついており、具体的に仕事内容をイメージできた」(東京工業大学、理系)、「研究所見学ができたから」(東京大学、理系)、「研究所見学を含む、充実した内容が用意されていたから。また、帰り道で通ると危ない場所を教えてくれるなど、学生に親切」(静岡県立大学、理系)。

理系学生に対して研究所見学は王道のアプローチといえるだろう。

3位の味の素に対しては、「学生の専門分野別にブースを設けてくれたため」(京都大学、理系)、「技術職のみを集めた説明会では、実際の研究について詳しく説明してくれてイメージがわいた」(お茶の水女子大学、理系)など、学生の専門分野に応じた工夫が評価されている。

ITサービス産業のトップ企業であるNTTデータ(4位)は、説明会では人が主役のようだ。「技術職希望限定セミナーでは、具体的な話が聞けてよかった」(筑波大学、理系)、「会社説明会に参加した企業の中でも、もっとも多くの社員と情報交換する機会があったため」(長岡技術科学大学、理系)と、社員とのたくさんの出会いが得票につながっているようである。

学生アンケートで「プレゼン」という言葉が出るときは、学生による「企業に対するプレゼン」を意味することが多いが、5位の野村総合研究所では企業による「学生に対するプレゼン」が評価された。「説明会でしか得られないであろう情報が得られたと感じたため。またプレゼンテーションがうまく感動した」(東京理科大学、理系)、「プレゼンがうまかった」(東京理科大学、理系)といった声が挙がる。

文系・理系の両方にランクインする企業も


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6位のトヨタ自動車への学生の評価は微笑ましい。「昼食会」(京都大学、理系)、「楽しそうだと感じたから。」(岐阜大学、理系)、「交通費がしっかり出た」(東京大学、理系)という意見が続いた。就活には何かとおカネがかかる。そんな就活生の懐具合を察してくれていることに惹かれるのだろう。

ランキング上位の多くで、文系と理系の両方に顔を出しているのも、「印象のよかった説明会」の特徴だ。今回も、みずほフィナンシャルグループ、日本航空(JAL)、東京海上日動火災保険、サントリーホールディングス、全日本空輸(ANA)、三井物産、花王、SCSK、東海旅客鉄道(JR東海)、アサヒ飲料、伊藤忠商事、旭化成、と、計12社が文系と理系の両方に顔を出している。

ただ、文理両方に登場していても、順位はだいぶ違う。みずほフィナンシャルグループは文系1位だが、理系では25位である。理系の上位企業は文系では外れることが多く、理系6位の東海旅客鉄道(JR東海)は、文系19位である。

そんななかで目立つのはSCSKである。SCSKは住友商事系のシステムインテグレーターだが、SEの文系採用を行っており、文系ランキングで16位、理系ランキングで13位。文理の両方から好印象企業と評価されている。

今回は「印象のよい説明会」を取り上げてみた。学生のコメントを読むと、各社の説明会の様子も見えてくる。就活生はこれからの説明会選びの参考にしてほしい。そして人事担当者は、2019年卒採用の説明会の企画に、各社事例を参考にしてくれれば幸いである。