日没が早まるこの時期、歩行者や2輪車の存在をうっかり見落とす可能性があることから、秋の全国交通安全運動の重点項目としてハイビームの使用が推奨される傾向にあります。

夜間に道路横断中の死亡事故が全国で年間600件規模で発生しており、うち約96%が「ロービーム」で走行。「ハイビーム」にしていれば事前に発見出来た可能性があるからです。

しかし、現実的には安全上や商品性の観点から、輝度・照度が大幅に高められたHIDやLED式ヘッドランプの普及により、対向車や前走車、歩行者がいる場合に「ハイビーム」を使用すると、従来のハロゲンランプにも増して周囲に幻惑を与えるため、実際に使用できるシーンは、大幅に限られてしまいます。

また「ロービーム」についても、前方40mまで照射可能(ハイビームは100m)ですが、時速60km/hで走行している場合、停止距離が約40mのため、歩行者を発見した段階での衝突回避は非常に困難な状況。

現状では、こうしたジレンマを抱えたままでの「ハイビーム走行」推奨であるため、なかなか浸透しない状況となっています。また、行政が「夕方になったら早めにヘッドライトの点灯を」と言い続けていますが、残念ながらドライバーの関心度は今尚低い状況とか。

自動的にヘッドランプが点灯する「オートライト」機能の装備が2020年以降の新車から義務付けられましたが、ハイ/ロービームの選択はドライバーの意思に委ねられている点ではこれまでどおりです。

そこで今後期待されているのが、天候や周囲の交通状況に合わせて自動的に配光を制御してくれるヘッドランプの採用拡大。

2014年あたりから欧州メーカー(アウディ、BMW、メルセデス・ベンツ等)が採用を進めており、国内でもトヨタがレクサスLSやクラウンなどに、マツダもCX-8, CX-5, CX-3, アクセラ, デミオなどに採用するなど、今後の搭載車種拡大が期待されています。

わかりやすく表現すると、相手に幻惑を与える方向へのハイビーム照射を自動的にカットする技術で、ADB(配光可変ヘッドランプ)やAHS(アダプティブハイビームシステム)、ALH(アダプティブ・LED・ヘッドライト)」、「マトリクスLEDヘッドライト」などが存在します。

2種類の技術が存在しており、1つはヘッドライト内に可動シェードを設け、部分的に遮光するタイプで、もう1つは複数のLED光源をあらかじめ配置しておき、ブロックごとに照射を分割、幻惑を与える部分のLEDのみを消灯するタイプ。

コストアップは避けられないものの、既に標準装備されている「エアバッグ」や搭載が進みつつある「自動ブレーキ」などと同様に、採用車種が拡大すればコストダウンが進み、夜間事故の撲滅に大きな威力を発揮するに違いありません。

既に技術的には完成しており、装備モデルも存在するだけに、こうした次世代技術を投入したヘッドランプの早期採用拡大が望まれます。

(Avanti Yasunori)

【関連リンク】

TOYOTA 「AHS」
https://toyota.jp/anzen_anshin/gijyutu/14/index.html

MAZDA「ALH」
http://www.mazda.com/ja/innovation/technology/safety/active_safety/alh/

夜間の衝突事故撲滅に威力を発揮する「眩しくないハイビーム」テクノロジーとは?(http://clicccar.com/2017/09/21/513394/)