9月22日に発売される「Apple Watch Series 3」は単体で通話や通信が可能となる(筆者撮影)

アップルは米国時間9月12日、第3世代となるスマートウォッチ「Apple Watch Series 3」を発表した。この製品はApple Watchとしては初となるセルラー通信に対応した製品だ。

5日間、セルラー対応のApple Watch Series 3、アルミニウムスペースグレイモデルを試したが、今回のアップデートは非常に重要かつ大きなものだと感じた。

これまでどおり、iPhoneユーザーのためのスマートウォッチという位置づけは変わらないが、独自にセルラー通信に対応したことから、Apple Watchだけを身に着けて外出しても、音声通話やメッセージングを途切れることなくこなすことができるようになるからだ。

デザインは前モデルを引き継いでいる


Apple Watch Series 3のアルミニウムスペースグレイ。サイズはSeries 2と共通だが、セルラー対応を果たし、デジタルクラウンは赤く塗られている(筆者撮影)

Apple Watchは、有機ELディスプレーと感圧マルチタッチディスプレーを備えたwatchOSが動作するスマートウォッチだ。

iPhoneアプリにWatchアプリが入っていれば、Apple Watchでもそのアプリを利用できるほか、iPhoneに届く通知を手首だけで受け取ることもできる。

2016年9月に第2世代となる「Apple Watch Series 2」を発売し、プロセッサーのデュアルコア化、GPSの内蔵を実現した。GPSの内蔵は、屋外でジョギングやウォーキングを楽しむ人々にとって、Apple Watchだけで正確な距離と経路を計測できるようになることを意味しており、人気のある機能となった。

Apple Watch Series 3は、Apple Watch Series 2で高速化したプロセッサーをさらに高速化し、またワイヤレス機能の高速化と省電力化のため、アップルが設計したW2チップを搭載した。そして、LTE通信もサポートした。

さらに、先代とはサイズの変更はなく、これまでと同じ感覚でセルラーモデルを利用することができる。もちろん交換バンドも、38ミリ、42ミリの違いはあるが、同じサイズであればそのまま引き継ぐことができる。

これまでどおり、アルミニウム(4万5800円〜)、ステンレススチール(6万4800円〜)、セラミック(13万9800円〜)の3種類の素材が用意されるが、アルミニウムのゴールドは1色に統一され、またセラミックにもグレイが追加された。光によっては少し緑っぽい色みも見せる面白い色だ。

セルラーモデルと通常モデルの区別は、デジタルクラウンが赤く塗られているかどうか。赤いデジタルクラウンがセルラーモデルということになる。なお、ステンレススチールとセラミックには、GPS単体モデルの用意はない。


新製品に合わせて登場した新しいバンド「スポーツループ」。金具がなく、マジックテープで固定する仕組みで、より軽く、また手首にフィットさせるのも簡単だ(筆者撮影)

またApple Watch Series 3に合わせて、新たに「スポーツループ」というバンドが登場した。

このバンドは金属パーツを排除しウーブンナイロンバンドよりも軽量で、ちょうどスポーツ用のリストバンドのようにやわらかな素材をマジックテープで固定するバンドだ。

Apple Watchが驚くほど軽い装着感になり、さまざまなスポーツや日常を軽快に過ごすことができるようになる。既存のユーザーにもぜひ、試してみてほしいバンドだ。

Apple Watchの「セルラー通信」でできること

Apple Watchは通常、iPhoneのセルラー通信もしくはWi-Fiでのネット接続を、Bluetoothを介して利用している。あるいは既知のWi-Fiネットワークであれば、Apple Watch単体でも利用することができる。

セルラーモデルのApple Watch Series 3では、iPhoneとのBluetoothペアリングやWi-Fiネットワークへの接続が解除されると、自動的にWatchのセルラー通信で、Apple Watchを接続する。

たとえば、iPhoneを自宅に置いて、ジョギングに出かけたり、ちょっと買い物に出かけるとき、Apple Watchのセルラー通信を利用するというイメージだ。

セルラー通信をサポートするApple Watchでできることは、iPhoneで利用する通信サービス利用とほぼ同じだ。

音声通話はiPhoneの電話番号を用いる通常の通話と、FaceTimeオーディオなども含まれる。また、SMSやiMessage、LINEなどのメッセージのやり取りも可能だ。またSiriや音声入力、各アプリでの通信利用が含まれる。


チルデンパークのトレイルを、iPhoneなしでジョギングしてみた。新しい文字盤「エクスプローラー」には、電波強度の表示が用意されている(筆者撮影)

Apple Watch Series 3だけを身に着けて、毎日のルーチンになっている30分のウォーキングに出かけてみた。Apple Watchでは自分の電話番号での待ち受けが可能であるため、ウォーキングの帰りに家族にスーパーでの買い物を電話で頼まれても、きちんと応えることができる。

またApple Watch Series 3では、GPSに加えて気圧高度計を内蔵したため、Apple Watch単体でもエクササイズ中にどれだけの標高を上ったか、という獲得高度や階段を上った階数を計測することができるようになった。

Apple Watch Series 3での通話は、スピーカーでの相手の音声の聞き取りやすさと同時に、相手に届く声もよりクリアになった。今まではApple Watchを耳元に近づけて通話していたが、音質が向上し、その必要がなくなった。買い物の依頼がiMessageであっても、きちんと受け取ることができた。返信も音声入力で対応できる。

iPhoneなしでもSiriがしゃべるように

また、セルラー通信の恩恵を最も受けるのはSiriだ。

iPhoneでの通信が確保されていなければSiriや音声入力が利用できなかったが、これもセルラー通信によって改善された。

Apple Watch Series 3では、iPhoneが手元になくても、Siriに「ウォーキングを開始」「20分のタイマーをセット」と告げて、その機能を呼び出すことができ、いつでもそばにいるアシスタントへと昇格した。Apple Watch経由でのSiri利用が多い筆者にとっては、非常にありがたい進化だ。
また、これまでのApple WatchでのSiriは、画面の文字による情報表示やフィードバックに限られてきたが、Apple Watch Series 3ではついに、音声のフィードバックも追加された。

たとえば、Siriで「3分のタイマー」と話して、すぐにApple Watchから目を離しても、「3分にセットしました」と声での反応があるため、タイマーがきちんとセットされたかどうかがわかるようになった。iPhoneでのSiriの利用の体験により近くなっている。

そして気づいたことは、Siriや音声入力、アプリの起動を含むあらゆる動作が、非常に高速化していることだ。Apple Watch Series 3が搭載するS3プロセッサーは先代から70%高速化され、その恩恵を存分に受けることができる。

これまでどおりApple Payに対応するため、日本ではiDやQUICPay、Suicaを登録すれば、コンビニやスーパーでの買い物はもちろん、鉄道、バスなどの交通機関で利用することができる。

またアップルは、Apple Musicへのセルラー接続でのアクセスをアナウンスしている。4000万曲もの音楽を、好きなときにApple Watch Series 3のみで利用できる姿は、まるで未来のiPodを手に入れたような感覚だ。

iPhoneなしでほとんどの通信サービスを利用することができるようになったApple Watch Series 3。特にSiriを単体で利用できるようになったことで、声によるウエアラブルコンピューティングという可能性を完全な形で示し、ワークアウト、Apple Payでの買い物や交通機関の利用など、これまでApple Watchが活躍してきたシーンをさらに広げることになる。

Apple Watchが、モバイル通信の未来だと実感できるほどだ。

ストレス社会の中で、自分を知る心拍機能

Apple Watch Series 3でもう1点面白い点は、心拍計にかかわる機能の進化だ。Apple Watchではこれまでも、通常時は自動的に、ワークアウト時は連続的に、身に着けている人の心拍数を計測してきた。記録された心拍数はApple Watchの心拍数アプリや、iPhoneのヘルスケアアプリの中で確認することができた。


心拍アプリがリニューアルし、安静時の脈拍、歩行時の脈拍をグラフ化してくれるようになった。安静時に120BPMを超えると、通知する機能も備わる(筆者撮影)

Apple Watch Series 3では、心拍数の計測とともに、モニタリングを開始している。

Apple Watchは安静時、歩行時の心拍数を自動的に計測し、グラフ化してくれる仕組みを備えた。安静時に心拍数が120を超えるようなことが起きた場合、手首に知らせてくれる機能も搭載している。

また、ワークアウトの際に連続的に心拍数を計測する仕組みは共通だが、心拍数アプリの中でワークアウト時の心拍数の動きをグラフ化し、またワークアウトが終わったあとの心拍数の推移も表示してくれるようになった。

もちろんこれだけで医学的なことは判断できないが、自分が普段どんな心拍数の変化をしているのか、運動時とリカバリーはどうなのか、そしてストレスに起因する心拍数の増加がどうなっているのか、といったことを知る目安にはなる。

心拍数が高い状態が続いているときに、Apple Watchの呼吸アプリで気持ちを落ち着ける、といったアクティブな対応を行うこともできるだろう。

Apple Watchがこれまで取り組んできた、身に着けるコンピュータの世界は、特に自分を知ること、つまりワークアウトや普段のアクティビティにフォーカスされてきた。これによって人々は、普段運動が足りないことに気づき、また自分の運動の達成度を測り、チャレンジができるようになった。

Apple Watchはこうした「自分を知ること」を、日常的なスポーツから、日常的な健康に広げつつある。ヘルスコンシャスなライフスタイルを目指すなら、Apple Watch Series 3は欠かせないデバイスとなったのだ。

Apple Watch Series 3は、未来のモバイル通信の一端を体験することができるウエアラブルデバイスであり、使う人は自分の健康や体調などにより興味を持つことができる。

ウエアラブルデバイスとして独立して動作する時間を作り出すセルラー対応は、スマートフォンが欠かせないライフスタイルを送る現代人にとって、スマホがない時間を作り出し、スポーツや子育てなどに集中する時間をもたらしてくれるだろう。

もちろん、アップルのデバイスらしく、watchOS 4に対応するアプリを開発する開発者のアイデアによって、Apple Watchとセルラー対応の新たな可能性が切り開かれていくことになる。

Apple Watch単体での連続通話は「1時間」


ペアリングはiPhoneとApple Watchを近づけるだけで始めることができ、より手軽に設定が可能となった(筆者撮影)

ただし、動作時間の問題がある。バッテリーの容量の関係から、Apple Watch Series 3がiPhoneから独立して動作できる時間は、まだまだ限られているのだ。

iPhoneとのペアリングをした状態で18時間の動作時間を確保することはこれまでと同じだが、iPhoneとのペアリングを解除しセルラー通信を利用する際は連続通話は1時間、セルラー通信とGPSを利用しながらの屋外ワークアウトは4時間のバッテリー持続時間となっている。

そのため、iPhoneを忘れて出かけて、1日の仕事を終えて帰宅するまでバッテリーを持たせることは、まだ難しいかもしれない。その分、Apple Watch単体で過ごす時間の価値から、未来のモバイルの姿を想像することが、楽しい作業になるかもしれないが……。


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最後に、セルラー契約についてだ。

米国では各キャリアとも、月額10ドルでApple Watchでのセルラー通信に対応することができる。これに対して日本では、iPhoneと同じ番号で利用するApple Watch向けのプランは月額350円から500円で利用でき、米国の半額以下と、世界で最も利用しやすい国になるだろう。

もしセルラー通信が不要という人は、セルラーなしのApple Watch Series 3(3万6800円〜)が用意されており、こちらも高度計、心拍機能などを利用することができる。未来のモバイルへの興味、iPhoneを持たない時間の充実を、セルラーの有無の判断材料にするといいだろう。