世界ランク2位の山口茜【写真:平野貴也】

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センターコートの前試合が棄権で急きょ前倒しで焦り「思っていたよりも早まった」

 思わぬ事態で狂いが生じた。世界ランク2位の山口茜(再春館製薬所)は、焦りの生まれた初戦をどうにか勝ち切った。バドミントンの国際大会BWFスーパーシリーズ第8戦「ダイハツヨネックスジャパンオープン2017」は20日に各種目の1回戦を行い、女子シングルスの山口は、イ・ジャンミ(韓国)に2-1(17-21、21-15、21-14)の逆転で勝利した。

 山口は「思っていたよりも試合が早まって、焦りがプレーに出てしまった。低い展開で相手に捕まってしまい、試合を楽しむどころか焦ってしまった。第2ゲームから大きく展開する形にして、点差(リード)が少し開いて、心に余裕が出てきた。ファイナルゲームは、自分らしいプレーも少しは出せたと思う」と苦しんだ初戦を振り返った。

 大会会場である東京体育館では、1つのフロアに5つのコートを作り、同時に試合を進行しており、試合が終わり次第、次の試合が始まる仕組みになっている。ただし、メインコートだけは、シード選手が出場する注目試合だけが行われ、それぞれの試合予定時間が決まっている。

 ところが、この日の午後、メインコートで予定されていた第2試合で「ソノカム」の愛称を持つ男子ダブルスの園田啓悟、嘉村健士組(トナミ運輸)の対戦相手だったリッキー・カランダスワルディ、アンガ・プラタマ組(インドネシア)が棄権。第3試合だった山口の試合が前倒しで行われることになった。

リード場面で早く勝ち切りたい気持ちも…世界トップで戦うために必要な安定感

 試合では、相手に主導権を奪われる展開に追い込まれて第1ゲームを先取された。山口は、ウォーミングアップが不足したわけではないと話したが「普段やることを少し飛ばして、早く準備をしなきゃと思って、すべてを急いでしまった。試合に入ってからも、足を動かさなければと思い過ぎて、相手の球が来る前に動いてしまった場面もあった」と心理面のコントロールに苦しんだことを明かした。

 精神面の波は、プレーに影響を及ぼす。ファイナルゲームも自分のミスにいら立つ場面を見せたが、リードした場面で早く勝ち切ってしまいたいという気持ちが出ているようにも見えた。まだ20歳と若いが、世界のトップで戦い続けるためには安定感が必要になる。

 粘り強いラリーと、相手の意表を突くミラクルショットが特長の山口は、3年前の優勝者。日本女子シングルスの先頭を走る世界女王、奥原希望(日本ユニシス)とともにリオデジャネイロ五輪に出場するなど、2020年の東京五輪に向けて大きな期待を受ける選手だ。国際試合での上位進出も多く、追う立場から世界のトップに並ぼうとしている。その中で、山口は挑戦者の気持ちを持ち続けることをあらためて意識しているという。

 8月の世界選手権は、初出場で第1シードに入ったが、3回戦で敗退。「まだまだ、なんだなと教えてもらった。やっぱり、受け身じゃなくて向かって行くのが自分のプレースタイル。どんな相手にも向かって行く気持ちを持つことを、これから学ばなければいけないと思う」と話した。出直しの一戦となった先週のスーパーシリーズ第7戦、韓国オープンでは奥原に敗れたがベスト4入り。アクシデントを乗り越えた今大会も上位進出を狙う。