リーガエスパニョーラ第5節。よほど悔しかったのだろう。カンプ・ノウのミックスゾーンに乾貴士(エイバル)は姿を見せなかった。たとえ自身のパフォーマンスがよくない試合でも、しっかりとメディア対応をしてくれる日本代表MFだが、6対1で敗れたバルセロナ戦は、さすがに堪えたに違いない。


バルセロナ戦にフル出場、無得点に終わった乾貴士(エイバル)

 バルセロナが取った6得点のうち4得点がリオネル・メッシのもの。今シーズン開幕5試合で11得点と、アルゼンチン人FWは順調に得点を量産している。しかも、その得点の仕方はバラエティに富んでいる。

 1点目のPKは昨シーズン最終節で対戦したとき同様に議論を呼ぶものだった。乾が2得点を決めた試合と同じ審判、アレハンドロ・ホセ・エルナンデス・エルナンデスがバルセロナに得点のチャンスを与えたのだ。

 2点目は左ポスト、ギリギリのラインを正確に射抜いたシュート。3点目はカウンターからDF2人にプレッシャーをかけられながらも強引に決めたもので、メッシのサッカー選手としての力と技をあらためて感じさせた。そして試合の大勢が決まった後に決めた4点目は、アレイクス・ビダルの折り返しをダイレクトで簡単に合わせ、彼の尽きないゴールへの貪欲さを感じさせるものだった。

 6対1、結果だけを見ればバルセロナが圧倒した試合だが、最初のPKが決まるまでは、むしろエイバルが優勢に試合を進めていた。実際に前半4分には乾がチャンスにからみ、左サイドのダビド・フンカからのスルーパスを受けたセルジ・エンリッチがGKと1対1の決定機を作る。さらに10分には乾が右サイドからのクロスをエリア内でシュートするなど、エイバルが先制点を決めてもおかしくない展開だった。

 だが、この試合の主役はメッシ以外にいなかった。ヘタフェ戦に続き、組織としてシンクロしたプレーをすることのできなかったバルセロナにあって、ひとつのプレーで勝利をもたらすことのできるエースたる所以(ゆえん)を見せつけたのだから。

 バルセロナのエルネスト・バルベルデ監督も、試合後の記者会見で「試合が終われば簡単のように見えるが、試合中は目に見えるほど簡単なことではなかった。6対1の結果はエイバルを打ち負かしたように感じられるが、実際はそうではない。エイバルはプレッシャーをかけ続けてきたとても勇敢なチームだ」と、敵地でも自分たちのサッカーを貫いたエイバルの戦いを賞賛している。

 両チームの勝敗を分けたのは個の力だ。エイバルには前述のチャンス以外にも、乾のエリア内シュート、ミドルシュート、ルベン・ペーニャのポスト直撃弾などがあったが、いずれもゴールという結果に結びつけることはできなかった。一方、メッシは作り出したチャンスをしっかりとゴールにした。

 おそらく乾の心のなかには「自分が決めていれば違った結果にできたかもしれない」という思いがあったのだと思う。いとも簡単にゴールを量産していくメッシに対しての思いや、自身のシュートが相手のカウンターにつながり、チームが失点したことへの後悔などが錯綜していたのではないか。

 2得点を決めた前回のバルセロナとの対戦で掴んだ自信は、今日の試合で大きく崩された。だが、いつまでも悲観してはいられない。日曜日にはセルタとの対戦が控えており、気持ちを切り替えることが重要だ。

 レアル・マドリードの監督になったジネディーヌ・ジダンは、結果の出なかった試合の日の記者会見で「試合がすぐにあることはいいことだ。なぜなら前の試合のことを考えることなく次の試合に集中することができるし、名誉挽回をすぐにできるのだから」と語ったことがある。

 それはレアル・マドリードだけの話じゃない。エイバル、そして乾にとっても当てはまることだ。バルセロナ戦の悔しさをバネに次の試合で活躍をすることができれば、この大敗も決して無意味なものではなかったことになる。

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