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その昔、大阪の友人から「『味園(みその)』は古き良き大阪って感じ」と聞いたことがある。昭和31(1956)年に建設されたレトロモダン感がたっぷりの「味園ビル」には、宴会場あり、ホテルあり、マッサージあり、カフェあり、バーあり、レンタルホールありと、「35万平米のレジャーシティー」と形容するだけある、なんでもありな空間が広がっている。

○宴会天国は豪華絢爛

味園は、地下鉄御堂筋線「なんば」駅/南海本線「難波」駅から徒歩5分、または、地下鉄千日前線/堺筋線「日本橋」駅から徒歩2分という好立地に位置する。赤と青のネオンが輝くその看板で、遠くからでも味園の場所を見誤ることはない。

開業当時はというと、宴会場のほか、キャバレーやスナック、ダンスホール、サウナなどで連日にぎわい、大阪・ミナミを代表する一大レジャー施設だったという。バブル経済がはじけた後は不況で低迷し、2011年にはキャバレーも営業終了となった。

その一方で、2000年半ばに入ってから個性豊かなショップやカフェー、バーが徐々に集うようになり、そうした個性に引き寄せられた若者も訪れる空間に変貌。また、キャバレーだった地下1階は現在、「ユニバース」という名称のままレンタルホールとなり、若者たちでにぎわうライブ会場としても愛されている。2015年には関ジャニ∞の渋谷すばる主演映画『味園ユニバース』も公開され、新たなファンも生まれた。

まずは5階の「宴会天国 味園」へ。2人から500人まで対応する大中小の個室宴会場を16室備えており、その大きさに合わせてエレベーターも46人までOKな大型サイズに。入り口の橋にも驚いたが、扇風機付きのエレベーターを目にするのはここが初めてだ。畳の上でくつろげるお座敷個室にはカラオケも付いているので、もしもの時に備えてのどの調整をしておこう。

メニューは大きく分けて「鍋」「肉」「中華」の3種類あり、今回は肉メニューの「スタミナ鉄板鍋セット」(ひとり2,600円/税・サービス込み)をいただいた。小鉢からメインの肉に。こんもりと盛られた野菜(タマネギ、モヤシ、ニラ、キャベツ)の上に、牛バラ肉と豚バラ肉がたっぷり。ピリ辛のダシをつぎ足しながら煮込んでいき、折を見て豆腐を投入する。〆にはうどんと中華麺が用意されていた。これで終わりかと思いきや、さらに雑炊セット(ご飯、玉子、ネギ)まで付いてくるボリューム満点のコースである。

●information

宴会天国 味園

住所: 大阪府大阪市中央区千日前2-3-9 味園ユニバースビル5F

アクセス: 地下鉄御堂筋線「なんば」駅/南海本線「難波」駅から徒歩5分、または、地下鉄千日前線/堺筋線「日本橋」駅から徒歩2分

営業時間: 16:00〜22:00(土日曜日・祝日は12:00〜)

定休日: 年中無休

○どの扉も異世界につながる

5階の宴会場ももちろん、個性を感じる空間なのだが、元スナック街の2階にはさらにディープな空間が広がっている。

まずは1周歩いてみる。怪しげなポスターに怪しげなガチャガチャ。扉が開いていなければ、永遠に自分からは扉を開けられそうにないお店から、半開きの扉からきれいなお姉さんが微笑みかけてくれるお店までさまざまだ。各店舗からは音楽や笑い声のほか、ライブの音も漏れ聞こえてくる。

ワンフロアに約40軒ほどだろうか。バーやカフェが連なっており、筆者と同じようにフロア内をぐるぐる巡る来場者に何度も遭遇した。「2周しても決められない人はこちらへどうぞ」的な殺し文句まで用意しているお店もあり、訪れる人の心理をよく理解しているなと思った。中には「会員制」と書かれた扉もあったが、味園をよく知る人に「これは大阪ジョークだから」というアドバイスをいただいた。本当なんだろうか……。

○味園の魅力「変な人がいっぱいいるところ」

結局この日、扉を開いたのは「HOTEL ADRIANO」というバー。その理由は、筆者は少なくとも100回はジブリ映画『紅の豚』を見ているのだが、ひょっとしたらこの扉の向こうにジーナかポルコがいるのかもと思ったからだ。前情報がなくても、扉を開くきっかけは「バーテンダーがイケメンそうだったから」などでも全然ありだと思う。

しかし、HOTEL ADRIANOの扉の向こうには情報量が多すぎる空間が広がっていた。このバーに関して言えば、店名よりもその看板の下にあった福岡銘菓「二○加煎餅(にわかせんぺい)」のお面の方が、情報として正しいようだ。入ってすぐ目の前にはこけしの集団が待ち構え、天井からはレコードやトランプのマークがぶら下がり、振り向けばギリシャリクガメ(名前: ザ・シャドー)がいた。

店主の山下祥一さんの肩書は「汚くてジーザス」。お客さんからは「ジーザス」と呼ばれていた。昔から写真が趣味とのことで、「セルフタイマー写真家」でもあるという。かと思えば、「週末にはコピーバンドのライブをする」という多趣味っぷり。そのあたりの話は、できれば山下さん本人からうかがってほしい。ここでは書ききれない。

オススメメニューをうかがうと、「ビール以外おいしくない」「シェーカーを振るのは恥ずかしい」という謙虚な回答だったが、店内にはさまざまなお酒を用意している。「ビール好きが注ぐビールはおいしいよ」とのことで、素直に「ビール」(600円)をオーダーした。

山下さんが味園にお店を構えたのは10年前のこと。それまでは47都道府県を制覇するような旅人だったという。ある日、友人との飲みで酔っ払いながらお互いを褒め合っている時、「一緒に何かやりたいんだよ」という言葉が飛び出し、その後、いろいろな偶然が重なって味園にバーを開くことになったという。当時はその友人と共同経営で、店名もお互い好きな『紅の豚』から響きが良さそうだという理由で、HOTEL ADRIANOを採用したようだ。何事も勢いと運命はあるものだ。

●information

HOTEL ADRIANO

住所: 大阪府大阪市中央区千日前2-3-9 味園ユニバースビル2F

アクセス: 地下鉄御堂筋線「なんば」駅/南海本線「難波」駅から徒歩5分、または、地下鉄千日前線/堺筋線「日本橋」駅から徒歩2分

営業時間: 20:00〜6:00くらい

チャージ料: 300円

定休日: お盆・年末

※火曜日は山下さんは休みで別のスタッフとなる

そんな山下さんに味園の魅力をうかがったところ、「変な人がいっぱいいるところ」と一言。HOTEL ADRIANOのように10年前から運営しているお店がある一方で、2カ月で立ち退くお店もあるという。いろいろな人が集い、いろいろな刺激をもたらしてくれるのがこの味園の醍醐味だろう。常連客を抱えているお店が多いようだが、筆者のような一見さんも温かく迎えてくれる。ぜひ勇気を出して扉を開いていただきたい。

※価格は税込