「名前動後」をマスターしましょう!(写真 : tada-taka / PIXTA)

先日、桐生祥秀選手が日本学生陸上競技対校選手権大会の男子100メートル決勝で日本人初となる9秒台を公式に記録したというニュースがありました。

近年、桐生選手やケンブリッジ飛鳥選手が追い風参考記録ながら10秒台の壁を超えた記録を出していましたので、「いずれ近いうちに誰かが……!」と思っていた矢先のうれしいニュースでした。

筆者が英語を教える、研修生のタロウさんは、高校生のとき陸上部だったというだけあり、このニュースのことを大喜びで語っていました。2020年には東京でオリンピックが開催されますが、そのときにはみんながこんなふうに英語でさまざまなスポーツの話ができるようになっているといいなぁと思いながら、筆者も耳を傾けていました。

今回はこのニュースをもとに、英語を学んでみましょう。

受験勉強で覚えた発音の知識が大活躍


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タロウさんが話しているときに、どうしても気になって直してしまった発音があります。それがrecord(記録)という単語。スポーツの話では頻出の単語で、皆さんも日頃よく見聞きすると思いますが、動詞で使うときと名詞で使うときで発音が変わるというのは知っていますか。

受験勉強中にセンター試験のアクセント問題対策として「名前動後(めいぜんどうご)」を習った方も多いのではないでしょうか。記憶にあるという皆さんは、「ああ、あれね!」と思い出してほしいところです。でも、「名前動後」を知らない方もご安心ください。ここで簡単に説明いたします。

実はこれ、名詞と動詞が同じ綴りの単語の多くに当てはまる、「名詞は前、動詞は後ろ」にアクセントを置くという法則のことなんです。例を見てみましょう。ほかにもたくさんありますが、今回はよく使う単語だけを挙げてみますね。声に出して読んでみて、自分が「名前動後」を実践できているかチェックしてみてください。

チェックしてみよう!「名前動後」の単語

名詞 (前にアクセント)動詞 (後ろにアクセント)cónduct /ˡkɑndʌkt/
行為condúct /kənˡdʌkt/
〜を行うcrease /ˡdikris/
減少decréase /dɪˡkris/
減少するímport /ˡɪmpɔɚt/
輸入品impórt /ɪmˡpɔɚt/
〜を輸入するínsult /ˡɪnsʌlt/
侮辱insúlt /ɪnˡsʌlt/
〜を侮辱するóbject /ˡɑbʤekt/
物objéct /əbˡʤekt/
反対するpérmit /ˡpɚmɪt/
許可証permít /pɚˡmɪt/
〜に許可するprésent /ˡpreznt/
贈り物presént /priˡzent/
〜を口頭発表するprótest /ˡproʊtest/
抗議protést /prəˡtest/
抗議するfill /ˡrifɪl/
おかわり・詰め替え品refíll /riˡfɪl/
〜を詰め替えるsuspect /ˡsʌspekt/
容疑者suspéct /səsˡpekt/
〜を怪しいと思う

受験が終わってしまったら、もう必要のない知識として埋もれさせていませんか? どちらも同じアクセントで使っていたという方は、これを機に修正していきましょう。英語を話すときに「名前動後」を意識できたら、皆さんの英語の発音がグッと通じやすくなります。受験英語にだって、実践で役立つ知識がいっぱい詰まっているんです!

そして、タロウさんの使ったrecordという単語も、これらの単語同様に「名前動後」で、次のようになるのです。

名詞 (前にアクセント)動詞 (後ろにアクセント)récord /ˡrekɚd/
記録・レコードrecórd /rɪˡkɔɚd/
〜を記録する

ところがタロウさんは、名詞のrecord(記録)という単語を、動詞のアクセントの位置で言ってしまったのです。

Mr. Kiryu broke the national recórd in the 100-meter final on Saturday.

よくある発音の間違いなのですが、アクセントの間違いはネーティブに通じない可能性が高いので注意が必要です。

○ Mr. Kiryu broke the national récord in the 100-meter final on Saturday.(桐生選手が土曜日に100メートル決勝で日本記録を破った)

日本語では、懐かしの「ドーナツ盤」や「LP盤」は名詞であっても「レコード」と言いますので、英語でもなんとなく後ろを強く言ってしまいがちですが、英語では名詞は「レクッドゥ」のように前が強くなると覚えておきましょう。

研修ではrecordの発音の訂正で終わってしまいましたが、スポーツの話をネタに研修生たちに何か教えてあげようと、オフィスに戻ってから桐生選手のニュース記事をいくつか英語で読んでみました。これは次回の研修で教えようと思っているのですが、読者の皆さまにはひと足お先にシェアします。

タロウさんの使ったrecordという単語が記事でもたくさん使われていたのですが、それを読みながら、せっかくなのでよく一緒に使う動詞をセットで研修生たちに教えようと思いついたのです。これは、英語では「コロケーション」といい、自然な組み合わせで使われる単語のセットのことを指します。皆さんも、recordのコロケーションをぜひ覚えて使ってみてください。

まずは「記録を出す」というとき。

ボルト選手は100メートル走で9.58秒という世界記録を樹立した。
Bolt set a world record of 9.58 seconds in the 100-meter dash.
Bolt established a world record of 9.56 seconds in the 100-meter dash.

set、establishなどの動詞がよく使われます。「新記録」と強調してset a new recordのようにnewという形容詞もよく言われますので、一緒に覚えておくといいですね。

「記録を持っている」という場合は?

では次に、「記録を持っている」というときはどうでしょう。

ボルト選手は100メートルで世界記録を持っている。
Bolt holds the world record in the 100 meters.
Bolt has the world record in the 100 meters.
Bolt owns the world record in the 100 meters.

hold、have、ownなどの動詞が一緒に使われます。どれも「所有する」という意味を表しています。holdがもっとも一般的ですが、haveownを使用している記事もありました。

では、「記録を破る」というときはどうでしょうか。

桐生選手は100メートル競走で日本記録を破った。
Kiryu broke the national record in the 100-meter sprint.
Kiryu beat the national record in the 100-meter sprint.
Kiryu shattered the national record in the 100-meter sprint.

breakbeatshatterなどがよく一緒に使われる一般的な動詞です。

今回の桐生選手のニュース記事では「これまでの日本記録を破った」という文脈で、この表現がたくさん使われていました。上に挙げた動詞のほかにsmashという動詞もあったくらいです。

「記録を出す」「記録を持っている」「記録を破る」というそれぞれの言い方で、2〜3個くらいずつ動詞を覚えておくと便利でしょう。英語では1つの書き物の中で、極力同じ単語を繰り返さないように書くというルールがあります。同じ単語を繰り返せば繰り返すほど、語彙が少ない人が書いた幼稚な書き物という印象になってしまうからです。

ですから、今回の記事のように、何度も「記録を破る」という表現をしなくてはいけないときには、その都度違う動詞を使うというのはごく普通のことなのです。

同じ表現を繰り返すことなく、語彙のバリエーションを出すことで、より完成度の高い書き物になりますので、皆さんもプレゼンテーションやスピーチのときには意識して、極力同じ単語を使わないようにしてみるのもいいかもしれませんね。

オリンピックまでにマスターしたい表現

最後に選手が何秒で走ったかを述べるときの言い方を覚えておきましょう。これは陸上だけでなく水泳などでも使えますので便利です。いちばんシンプルなのが、

Kiryu ran a 9.98. (桐生選手は9.98秒で走った)

です。記録を表す数字の前にaが付いていて、ちょっと不思議な感じもしますが、これは記録タイムとして数字を述べているからaが付くのです。スポーツの記事では、記録などはもうすでに読み手も何のことなのかをわかっているということで、秒とか分とかタイムとか、すべて省略して書くことが多いのです。

ある記事の中でも、桐生選手のコメントに I thought it might be a 9.99 or a 10.00 at first. (初めは9.99秒か10.00秒かもしれないと思いました)というのがありましたが、タイムを表す数字のどちらにもaを付け、秒やタイムなどは省いていました。

もちろんtimeという単語を省略せずに、

Kiryu ran a time of 9.98 seconds. (桐生選手は9.98秒というタイムで走った)

と言うこともできます。タイムを使わずに、

Kiryu ran 9.98 seconds. (桐生選手は9.98秒で走った)

と秒数をそのまま言う(このときはaを付けない)ことも可能ですし、timeという単語の代わりに、走った距離や競技を表す名詞で述べることもできます。

Kiryu ran a 9.98-second race. (桐生選手は9.98秒で走った)
Kiryu ran a 9.98-second 100-meter dash. (桐生選手は9.98秒で100メートルを走った)
Kiryu ran a 9.98-second 100 meters. (桐生選手は9.98秒で100メートル競走を走った)

100-meterは「100メートルの」という形容詞として使用し、100 meters は「100メートル競走」という競技の名前で使用しています。
形容詞の時にはsがつかないこと、100 meterssがついて協議を表すので、前に冠詞のaがついていることなど、細かいですがよく見ると
意外に難しいものなのです。

水泳のときにはrunという動詞の代わりにswimを使えば同様に使用することができます。

今後も陸上や水泳競技の結果を知らせるニュースなどが出たら、これらを覚えておいて、ぜひ英語で記事を読んでみることをお勧めします。これらの言い方をマスターして、東京でオリンピックが開催されるまでに英語でスポーツの話ができるようになっていたら、外国から来た観光客と楽しく話せるかもしれませんよ!