エムバペ(右)、カバーニ(中央)、そしてネイマール(左)。新生パリSGが誇る“MCNトリオ”に早くも亀裂が……。(C)Getty Images

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 いまだ収束の気配を見せていないのが、パリ・サンジェルマンが誇る2大エースの諍いだ。
 
 フランスのリーグ・アン第6節、パリSG対リヨン戦はホームチームの2-0勝利に終わった。その79分、PKのキッカーを巡って口論を繰り広げたのが、エディンソン・カバーニとネイマールだ。それまでもFKキッカーの座を奪い合うなど小競り合いを見せていた両者は、試合後のロッカールームでも一触即発。カバーニが行為をたしなめたところ、ネイマールが猛然と反論し、あわや取っ組み合いの大喧嘩になる寸前で、チアゴ・シウバやマルキーニョスが止めに入ったという。
 
 その後もフランスの国内メディアは、両者の場外バトルを頻繁にアップデート。カバーニがキッカーにこだわるのはチーム得点王に付与される特別ボーナスのためだ、ネイマールがカバーニのインスタグラムへのフォローを取りやめた、ネイマールをボスとするブラジル人グループと他の主力選手との間で派閥争いが始まった、などなど。開幕6連勝で悠々と首位を走るチームの不穏なムードを助長している。
 
 この問題を一大事にしてしまったのは、指揮官ウナイ・エメリの曖昧な対応だ。そう断じるのは、アラン・ロシュ氏だ。現役時代に屈強なCBとして鳴らした元フランス代表にして、パリSGの元キャプテン。現在はフランスの大手テレビ局『Canal+』で解説者を務め、とりわけパリSGのご意見番として人気を博している。
 
 49歳の元アイコンは、今回の騒動をこう解説する。
 
「まず、プレシーズンからエメリが確固たるスタンスを示してこなかったのが拙い。そもそも試合に向けてPKキッカーをちゃんと決めていなかったうえ、問題が起こったあとも『お互いの話し合いで決めてほしい』と丸投げした。そのおかげで傷口はより大きく広がってしまったんだ」
 
 ロシュ氏は、カバーニの心情は察するにあまりあると話す。
 
「カバーニはずっとズラタン(イブラヒモノビッチ)の陰に隠れていた。2番手のストライカーとして我慢の日々を過ごしていたんだ。そしてついにズラタンが去り、昨シーズンは公式戦50試合で49ゴールを叩き出した。当然、PKキッカーも務めて仲間の信頼も厚い。ネイマールが来たからといって、また2番手に降格するなんて耐えられないはずだ」
 
 そこで、エメリ監督の対応だ。ビッグスターとして迎えられたネイマールが、なんら決まり事もなくチームに組み込まれれば、そこにはエゴが生まれる。PKキッカーを巡る争いは起こるべくして起こったと言い切る。

「ネイマールは17歳の頃からPKを蹴っていたんだ。バルセロナに移籍してからは、チームにリオネル・メッシという王様がいたわけで、彼がボールを差し出さない限りは手を出さなかった。メッシはアンタッチャブルだからね。だが彼の目には、カバーニがアンタッチャブルには見えなかったということだ」
 
 そのうえでロシュ氏は、カバーニこそがキッカーに相応しいと結論付けた。
 
「ゲームにおけるカバーニの影響力を考えれば当然だろう。ゴールだけでなく、スペースを作る動きや献身的な守備、声出しと、どれだけのチームに貢献を示しているかを考えるべきだ。もちろん監督が決めることだが、私はそれがノーマルな考え方だと信じる」
 
 フランスの通信社『AFP』は、今回の問題について、ひとりのレジェンドのコメントを引き出している。レアル・マドリーのジネディーヌ・ジダン監督である。“将軍”の見解はこうだ。
 
「我々は試合に向けた準備をしっかりやっている。誰がコーナーキックを蹴り、誰がPKのキッカーを務めるのか、ありとあらゆるすべてを決めてある。ただ私はここで、PSGになにが起こっているのかを話すつもりはないよ」
 
 フランスの全国紙『Le Parisien』によると、9月20日水曜日にクラブ内で話し合いの場が持たれるようだ。業を煮やしたナセル・アル・ケイラフィ会長が介入を決断し、カバーニ、ネイマール、エメリ監督、スポーツ・ディレクターのアンテロ・エンリケを交えて協議するという。
 
 その情報を得て、ご意見番は最後にこう警鐘を鳴らした。
 
「いまちゃんと解決すれば、『あんなこともあった』といずれ笑い草になるだろう。だがここで決着を付けられなければ、取り返しのつかない遺恨になりかねない」