「Thinkstock」より

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 元国税局職員、さんきゅう倉田です。サンタさんにお願いするクリスマスプレゼントは「税務六法」です。

 国税局の税務調査も近代化が進み、インターネットを活用し、 経済取引のICT化(IT化と同義)に対応するため、専門部署による調査支援、デジタルフォレンジックツール(サイバー犯罪を調査する機器)を活用し、削除や書き換えられていた架空の領収証のデータを発見するなど、パソコンのデータを証拠として保全、解析を行っています。

 デジタルフォレンジックツールの活用方法としては、押収したパソコンなどから不正の裏付けとなるデータを抽出する、サーバーのログを解析して通信記録を割り出す、オリジナルのデジタルデータ改ざんの有無を調査する、削除または破損したデジタルデータの復元を行うなどがあります。

 そのような、複雑で専門性の高い情報通信技術だけではなく、スマートフォンの普及により、調査官一人ひとりがインターネットを活用して納税者や調査対象の情報を収集できるようになりました。個人事業者であれば個人名、法人であれば法人名及び代表取締役の氏名を、検索エンジンで検索、あるいはFacebook、Twitter、InstagramなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で検索することによって、調査を有利かつ効率的に進めようとしています。

 今回は、そういったSNSを活用し、増差を出した調査事例を紹介します。

●SNSで不正を発見

 TwitterやInstagramに自身の作品を投稿し、人気を得ている女性イラストレーターがいました。彼女の収入は、法人からの報酬がメインのようです。SNSで過去を遡って確認すると、有名なコミックマーケットにしばしば出展し、自作のイラスト集を販売しているようでした。その際の収入が申告書に記載されているか否かは不明でしたが、記載されていないとの前提で税務調査を行うことにしました。「イラスト集2000円です」「200冊完売しました」という投稿を表示した画面を印刷し、準備調査の資料とともにファイルして携行しました。

 調査は、彼女の事務所兼自宅で行いました。事業概況を聞き、帳簿を確認します。家賃の60%を「地代・家賃」として計上していたので、根拠を尋ねました。調査対象者いわく、このワンルームの90%を事務所用スペースとして使用しているので、それでも少ないとのこと。確かに、部屋の片隅に化粧道具と衣類が半畳ほどのスペースにまとめられており、応接セットと作業机、パソコンで区切られた空間が事務所のように装われています。床を確認したところ、絨毯には家具を大きく移動させた痕跡やソファが長期間配置されていた凹みがありました。調査に際し、家具を移動させ、事務所スペースを広げたのでしょう。事務所兼自宅の納税者がよく行う調査対策です。調査対象者から毎日の作業時間を聞き取り、按分して、40%の地代・家賃とすることとしました。

 いよいよ、売り上げについて言及します。取引先は3社あり、作業量に応じて毎月報酬が支払われているようでした。3社以外の売り上げや雑収入もなく、コミックマーケットでの売り上げの記載はありません。

 しかし、消耗品費を確認すると、印刷業者への支払いを年に数回行っていました。これについて聞き取りを行うと、「それはプライベートでつくった作品に関する出費です」と、経費算入が認められないような回答。粘り強く説得しましたが、売上除外を認めないので、ファイルからSNSの画面を印刷したものを取り出し、眼前に突きつけました。それを見て観念したのか、コミックマーケットで自作したイラスト集を販売、売り上げは除外していることを認めました。印刷代金をすべて経費にしており、印刷業者とのメールのやりとりから印刷部数を確認、販売金額を乗じて除外金額を算出しました。

 国税局内のパソコンはインターネットが制限されているので、スマートフォンが普及していなければ、この不正の発見は難しかったかもしれません。
(文=さんきゅう倉田/元国税職員、お笑い芸人)