機械学習を使った画像解析技術を用いて将来、アルツハイマー病にかかるリスクの高い人を見抜くことができるアルゴリズムの開発にイタリアの科学者が成功しました。この手法による診断は、非侵襲的かつ安価に出来る上に、他の脳疾患への活用も期待されています。

[1709.02369v1] Brain structural connectivity atrophy in Alzheimer's disease

https://arxiv.org/abs/1709.02369v1

AI spots Alzheimer’s brain changes years before symptoms emerge | New Scientist

https://www.newscientist.com/article/2147472-ai-spots-alzheimers-brain-changes-years-before-symptoms-emerge/

いまだ有効な治療法が見つからないアルツハイマー病ですが、早期発見により病気の進行を遅らせたり、患者が身の回りの整理を行う猶予が得られたりすることから、アルツハイマー病の兆候をいち早く見抜く技術の開発は重要です。

そんな中、イタリアのバーリ大学のニコラ・アモロソ博士とマリアナ・ラ・ロッカ博士の研究チームが、アルツハイマー病に起因する脳の構造変化を識別できる機械学習アルゴリズムの開発に成功しました。

アモロソ博士らは、アメリカ・南カリフォルニア大学のデータベースから取得した38人のアルツハイマー病患者と対象群となる29人の健常者のMRIスキャン画像を使って、機械学習アルゴリズムをトレーニングしました。目的はニューロンの接続性から、健常な脳とアルツハイマー病の脳を正確に区別することでした。



スキャンする脳の画像を小さな領域に細分化して画像認識させるにあたって、分割する領域のサイズの最適解は特に指定しなかったとのこと。研究者たちは、サイズを変更することでアルツハイマー病を判別するアルゴリズムを鍛えたところ、脳領域を2250〜3200立法ミリメートルの場合に、もっとも高い判別精度が得られることを発見しています。

その後、研究者たちは148人の被験者の脳スキャン画像を使ってアルゴリズムの正確性をテストしました。被験者のうち48人がアルツハイマー病患者で、52人が健康な人、48人が軽度の認知障害患者(MCI)でしたがこれらの認知症患者は2年半から9年後にアルツハイマー病を発症した人たちでした。

アモロソ博士たちの開発したアルゴリズムは、86%という高い精度でアルツハイマー病患者と健常者の脳を区別することに成功し、さらに、健康な脳とMCIの脳を84%の精度で区別することもできたとのこと。この結果から、研究者たちは医師が患者を診断してアルツハイマー病の症状を発見できるよりもはるか以前にアルツハイマー病につながる脳の変化を見抜ける可能性が出てきています。



アルツハイマー病と脳内のベータアミロイドや神経原繊維の変化に関連性があることがわかってきており、脳脊髄液分析や放射能トレーサーを使うことで10年後にアルツハイマー病を発症するリスクの高い人を予測することができますが、これらの試験は侵襲的である上に高度な専門施設でのみ可能で試験費用も高いという欠点があります。これに対してアモロソ博士たちの開発した機械学習アルゴリズムは、非侵襲的で安価にアルツハイマー病のリスクを判別できます。

開発した機械学習アルゴリズムは非常に高い汎用性を持っているそうで、ラ・ロッカ博士はパーキンソン病などの他の神経変性状態の病気の早期診断に役立てるべく、技術を拡張する計画です。