9月15〜18日に、大阪・靭(うつぼ)テニスセンターで開催された男子テニス国別対抗戦デビスカップ(以下デ杯)・ワールドグループ(以下WG)プレーオフ(入れ替え戦)「日本vs.ブラジル」で、日本(ITF国別ランキング14位)は、3勝1敗でブラジル(19位)を破ってWG残留を決めた。


(右から)シングルスで2勝を挙げ、日本のWG残留に貢献した杉田祐一、内山靖崇、マクラクラン・ベン、添田豪

 今回、錦織圭(ATPランキング14位、大会時、以下同)が右手首のケガ、西岡良仁(123位)が左ひざのケガ、ダニエル太郎(129位)は個人戦を優先させたいという理由で日本代表に合流しなかった。

 一方、ブラジルもホジェリオ・ドゥトラ シルバ(74位)とトーマス・ベルーチ(76位)が欠場し、両チームともにベストメンバーを組めない厳しいやりくりでの戦いとなった。そんな状況で日本代表を牽引したのが、エースを初めて任された杉田祐一(42位)だ。

「(シングルス1)ワンとして、シングルスを2本取りにいかないといけないので、いい状態で入れるようにしたい。個人戦と違って、代表ではプレッシャーは常にかかっています。特にワンということで、自分がいい形で引っ張るというか、自分がいい流れをつくる立場になると思うので、その準備をしっかりやっていきたい」

 デ杯開幕前にこう語っていた杉田は、日本のシングルス1としてオープニングマッチの大役を任され、ギレルモ・クレザール(244位)を6-2、7-5、7-6(5)で破って、日本に貴重な1勝目をもたらした。


「間違いなく落としてはいけない一戦ですし、勝ちにこだわった一戦でした」という杉田は、ブラジル戦がデビスカップ初采配となった岩渕聡新監督からは「楽しんで思い切りやってくれ」と試合に送り出されていた。

 日本のエースとして、どう振る舞えばいいか考えた杉田は、試しにガッツを前面に出して練習したこともあったが、選手それぞれのやり方があると思い直し、自分は試合でいいプレーを見せることに徹しようと決めたのだった。

 さらに第2試合では、シングルス2の添田豪(139位)も杉田の勝利を受けて好プレーを披露し、チアゴ・モンテイロ(116位)を相手に、3-6、6-4、6-3、(1)6-7、6-4のスコアで3時間41分におよぶ激戦を制した。

 添田は、2015年3月のカナダ戦以来の代表復帰。これまで単複合計で37試合(日本歴代8位タイ)に出場し、シングルスでは23勝(歴代3位)を挙げた32歳のベテランだが、勝利の瞬間、両手でガッツポーズをつくりながら雄叫びをあげた。

「もしかしたらデ杯が(自分にとって)最後になるかもしれないと考えたし、これで終わってもいいぐらいの気持ちで試合に臨んだので、最後までファイトできた。僕が入ってアジア(・オセアニアゾーンI)に落ちたくないというのもあるし、WGに残りたいという気持ちをみんな持っている。プレッシャーにもなったが、うまくパワーにできたと思う」

 大会初日に2勝を挙げた日本がチームの勝利まであと1勝としたが、2日目のダブルス1試合と3日目のシングルス2試合は、台風18号の通過によって順延され、9月18日に残りの試合をすべて行なうことになった。


 第3試合のダブルスでは、内山靖崇(ダブルス461位)/マクラクラン・ベン(D138位)組が、マルセロ・メロ(D3位)/ブルノ・ソアレス(D12位)組に、(2)6-7、4-6、2-6で敗れた。だが、エース対決の第4試合で、杉田は終始落ち着いたストロークを打ち続けて、モンテイロを6-3、6-2、6-3で破って、日本の勝利を決めた(第5試合は実施されず)。シングルスで2勝を挙げた杉田は、日本のエースとしての重責をしっかり果たしてみせた。

「チームのみなに感謝したい気持ちですね。ランキングからいって、今回は僕が2勝しないといけない状況でしたが、その責任を果たせたことは本当に嬉しく思っています。添田さんの初日の1勝で、グーッとチームがいい方向に向いたので、最後決められて本当によかった。錦織と西岡が抜けている中で、WGに残れたことは本当に大きな1勝だと思います」

 岩渕監督はデ杯初采配で初勝利を手にし、安堵の表情を浮かべた。

「錦織と西岡がいないのは大きいですし、ダニエルは出場を見送りましたが、それでもWGにいられる。今の日本の層の厚さを感じてはいたものの、アジアに落ちるかもしれないというすごくプレッシャーのかかる戦いで、しっかり残れたのはすごく自信になります」

 2018年シーズンも日本は世界上位16カ国で構成されるWGで戦うことになる。2014年からWGを連続して維持できていることは、日本の実力が以前と比べて上がったことを示している。これまでの戦いでは錦織の影響が大きかったが、今回は自己最高のランキングを更新し続ける杉田のレベルアップが好影響を及ぼしたのは間違いない。


 岩渕監督は20代後半となった錦織や杉田がランキング上位を保っている間に、若手の育成と強化を軌道に乗せ、選手層をさらに厚くさせること、日本にも強いダブルスチームが将来的に必要なこと、そして、錦織や西岡の症例も参考にしながら、ケガの予防を図ることを課題に挙げた。

「上の選手にも刺激になるし、今回出られなかった若い選手も、(代表入り目指して)さらに頑張りたいという気持ちになるので、本当に意味のある残留だと思います」
 
 ただ、過密スケジュールによって個人戦と代表戦の両立が難しくなった現在、必ずしも錦織が日本代表に戻ってくる保証はない。来年28歳になる錦織は、ケガの回復具合や年齢による体力回復の衰えを踏まえ、グランドスラム初制覇のために、個人戦を優先させたいと言っても何ら不思議はないからだ。
 
 WGの常連であるデ杯強豪国の多くは、強いシングルスが2人以上いること、ツアーで活躍するダブルスペアがいること、といった条件をクリアしている。

 今後そのレベルへ少しでも近づき、さらに日本が強くなるためにも、今回のWG残留をもたらした勝利は意義深い。岩渕監督はトーマス嶋田コーチとともにニュージーランド出身のマクラクランを発掘し、日本ダブルス強化のテコ入れをしている。また、杉田のように、錦織以外でもWGプレーオフでシングルス2勝を挙げる選手が現れたことは、日本代表の財産であり、将来への大きな足跡となった。

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