ドルトムントの新戦力には未知数な若手も多い。彼らの覚醒を信じつつ、ヤルモレンコ(中央)ら中堅の奮闘も求められる【写真:Getty Images】

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新戦力の若手たちは未知数。ボス新体制は既存戦力頼りか

 現地時間8月31日、欧州主要リーグの移籍市場が締切を迎えた。この夏も各チームで様々な移籍があったが、それぞれ主要クラブの動きはどうだったのだろうか。今回はボルシア・ドルトムントの補強を読み解く。(文:本田千尋)

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 毎年のようにチャンピオンズリーグ(CL)を戦いながら、完成した選手を欲しがらない。無名の有望株を発掘しては、成長させて高く売る。ボルシア・ドルトムントは、欧州最高の舞台の常連の中でも稀有な“転売型のビッグクラブ”だ。

 “慣例”に従って、今季も5人の若武者がBVBにやってきた。まずはマフムード・ダフード。3月にボルシアMGから獲得した21歳のMFは、ジネディーヌ・ジダンに憧れているという。なるほどそのプレースタイルは、かつてのフランス代表に似ていなくもない。典型的な8番タイプで、狭いスペースでの正確なトラップとパスで攻撃の起点となる。今夏はドイツ代表の一員としてU-21欧州選手権を制覇。16年にマンチェスター・シティへ移籍したイルカイ・ギュンドアンの後継者候補だ。

 2人目は、ダン=アクセル・ザガドゥ。パリ・サンジェルマンから獲得した196cmのセンターバックである。18歳のU-19フランス代表は、未完の大器と呼ぶに相応しい。プレシーズンから左サイドバックとして起用されてきたが、本職はあくまでセンターバック。巨体を活かした1対1の強さはもちろんのこと、左足の精度にも磨きをかければ、将来的には16年にバイエルンへ移籍したマッツ・フンメルスのようなDFになる可能性を秘めている。

 3人目は、マキシミリアン・フィリップ。ウイングタイプのFWだ。育成に定評のあるフライブルクから獲得した。昨季はヴィンセンツォ・グリフォ(ボルシアMGに移籍)と共にフライブルクで主軸を担った。23歳のアタッカーも、ダフードと並んでU-21欧州選手権の優勝メンバーである。

 さらに4人目にはイェレミー・トリャン。TSGホッフェンハイムから加入の23歳は、左右どちらのサイドバックもこなすことができる。トリャンも今年の6月にU-21欧州選手権の頂点に立っている。昨年はリオ五輪に参戦し、決勝で惜しくもネイマール率いるブラジル代表に敗れたが、ドイツ代表の銀メダル獲得に貢献した。マルセル・シュメルツァー、ラファエウ・ゲレイロ、エリック・ドゥルムと3人のサイドバックが負傷離脱中のドルトムントにとって、貴重な戦力だ。

 そして最後は、マンチェスター・シティから17歳のジェイドン・サンチョを獲得している。U-17イングランド代表の有望株は、左右両ウィングでのプレーが可能だという。

 もちろん一昨年のゴンサロ・カストロ、昨年のアンドレ・シュールレのように、即戦力が全く眼中にないわけではない。2月にはレバークーゼンから28歳のトルコ代表DFエメル・トプラクの獲得が内定。また、移籍市場が閉じる寸前には、ディナモ・キエフからFWアンドリー・ヤルモレンコを獲得した。

 こうしてドルトムントにやってきた7人の新戦力。玉石混交の感も否めないが、ダフードやザガドゥは大化けする可能性もある。ただ、監督もトーマス・トゥヘルからペーター・ボスに交代したばかり。若武者たちの今季中のブレイクは難しく、しばらく辛抱は必要かもしれない。そのためにトプラクやヤルモレンコら脂の乗った年齢の実力ある選手たちの力も必要なのだろう。

補強・総合力診断

IN
GK ドミニク・ライマン(ドルトムントII/昇格)
DF エメル・トプラク(レバークーゼン)
DF イェレミー・トリャン(ホッフェンハイム)
DF ダン=アクセル・ザガドゥ(パリ・サンジェルマンB)
DF ネベン・スボティッチ(ケルン/期限付き移籍期間満了)
MF マフムード・ダフード(ボルシアMG)
FW アンドリー・ヤルモレンコ(ディナモ・キエフ)
FW マキシミリアン・フィリップ(フライブルク)
FW ジェイドン・サンチョ(マンチェスター・シティU-18)
FW ヤコブ・ブルーン・ラルセン(ドルトムントU-19/昇格)

OUT
GK ヘンドリック・ボンマン(1860ミュンヘン)
DF マティアス・ギンター(ボルシアMG)
MF ウスマヌ・デンベレ(バルセロナ)
MF スベン・ベンダー(レバークーゼン)
MF ミケル・メリーノ(ニューカッスル/期限付き移籍)
MF ジェニス・ブルニッチ(シュトゥットガルト/期限付き移籍)
MF フェリックス・パスラック(ホッフェンハイム/期限付き移籍)
FW エムレ・モル(セルタ)
FW アドリアン・ラモス(グラナダ/期限付き移籍期間満了→重慶力帆)

補強評価:C

 スヴェン・ベンダー、マティアス・ギンター、アドリアン・ラモス、そしてウスマヌ・デンベレら前トゥヘル政権を支えた面々を放出。一方で獲得した選手たちは未知数の若者が多い。本当の意味でチームにフィットした新戦力は、まだ1人もいない。16年のフンメルス、ギュンドアン、ヘンリク・ムヒタリアンの移籍以来、チームはスケールダウンの一途を辿っている。

 デンベレの代わりに獲得したヤルモレンコは、前所属ディナモ・キエフ時代にCLなど欧州の舞台での実績も十分。13日のCLトッテナム戦では早速1ゴールを決めた。27歳のFWの起用には一定の目処が立ったと言えそうだ。しかしヤルモレンコと並んで即戦力候補のエメル・トプラクは、トッテナム戦でのパフォーマンスを振り返ると、ソクラティスとバルトラの両CBの控えの域を出ないかもしれない。

 ダフード、ザガドゥ、フィリップが今季中にブレイクしてくれるならば問題はないが、やはり時間は必要だろう。今季の戦いに向け、多少の不安が残る補強となった。

総合評価:D

 デンベレがバルセロナに移籍したことで、ウィングのポジションの戦力値が大幅に低下。ヤルモレンコの起用で急場を凌ぎ、マルコ・ロイスの復帰を待つばかりだ。

 また前線では、オーバメヤンのバックアッパーが不在であるのも不安要素。昨季のブンデスリーガ得点王に万が一負傷などのアクシデントがあった場合、1トップのポジションは誰が務めることになるのだろうか。

 インサイドハーフも、現段階で絶対的な主軸は見当たらない。代謝障害から復帰したマリオ・ゲッツェは、まだかつての輝きを取り戻したとは言えない。香川真司も左肩の脱臼の影響で少し出遅れた。カストロもトゥヘル時代のようなパフォーマンスを発揮できていない。

 またCBのポジションでも新戦力には頼れず、今季もソクラティスが主軸を努めていくことになりそうだ。ボランチでヌリ・シャヒンが好調なのは朗報か。ペーター・ボス新監督の戦術が浸透し切っていない影響もあるが、指揮官交代で過渡期にあるドルトムントは今季、これまで以上に苦戦するかもしれない。

(文:本田千尋)

text by 本田千尋