仕事と恋愛、キャリアとプライベート、有能さと可愛げ……女性が日々求められる、あるいは自分に求めてしまうさまざまな両立。理想の自分になるためにがんばってはいるけれど、時々しんどくなってしまうことも。

今回、ウートピでは、そんな悩ましい両立について、改めて問い直してみるキャンペーンを始めました。その両立は貴女の人生に本当に必要なものなの? 貴女が幸せになれる両立ってどんなカタチ? 一度、一緒に考えてみませんか?

コンピュータ周辺機器メーカー「エレコム株式会社」(本社:大阪市)のヘルスケアデバイスチームでチームリーダーを務めている岩井眞琴さん(38)。

美容機器ブランド「エクリア」を立ち上げるなど、まだまだ男性向けというイメージが強いヘルスケア市場で女性をターゲットとしたブランドの存在感を出すべく奮闘しています。プライベートでは12歳の女の子のシングルマザーといいます。

最終回は、「緊張と弛緩」が大事という岩井さん流の「両立」について聞きます。

【1回目】先輩、わたし「両立」できる気がしないんですが…
【2回目】先輩、1人でなんでもやろうとするのはダメですか?
【3回目】「私、無理なんで」と言う勇気

岩井眞琴さん

「失敗」は失敗で終わらせない

--前回、「緊張と弛緩」という話が出ましたが、そのお話にいく前に、30代の働き女子が抱えがちな悩みについてお聞きしたいと思います。

30代になって中堅と呼ばれる立場になってくると「結果を出して当たり前」と周りも思っているだろうし、自分でもそう思っている。失敗できないプレッシャーにはどう向き合えばよいのでしょうか?

岩井:うーん、そうですねえ。振り返ってみても、私はそういう気持ちがなかったんですよね。

--えっ、そうなんですか?

岩井:すべて新しいことをやってきたので、私の仕事には前例というか事例がなかったんです。もしかしたら、ずーっと同じ仕事をしていると後輩に負けたくないという気持ちも芽生えてくるのかもしれないけれど、新しいマーケットや可能性のあるターゲットユーザーを見つけ、企画する事が仕事ですので、全てがチャレンジだったんです。

--なるほど。うまくいかないときもありますよね。それはどう乗り越えていますか?

岩井:うまくいかなかったら、その原因を追求します。製品を売る場所がダメだったのか、コミュニケーション不足なのか、様々な視点から分析して失敗で終わらせないようにしています。

--30代でぶつかった壁は?

岩井:仕事ではないですね。

--えーっ、ないんですか? 大抵こういう質問をすると皆さん何かしら答えてくださるんですが……。そうか、ないんですね。

岩井:はい(笑)。こういうと何も考えてないように聞こえるかもしれないんですが、ビジョンを設定するようにしています。だいたい3年、5年スパンでプランを決めているんです。

--どんなプランですか?

岩井:例えば、今の会社に入ったときは1年でブランドを立ち上げよう、3年以内でブランドの核となる製品を出そう、5年以内にヒット商品を出して100億を達成しようと、計画しました。

--おおー! プランは達成したんですか?

岩井:そこはあまり気にしないです。

--えっ、気にしないんですか? なぜ?

岩井:計画や目標を立てるのはいいことだと思うんです。でも、あくまでもビジョンはビジョン。製品を出して市場に影響を与えれば達成できていると考えています。達成を意識しすぎるとつまらないじゃないですか。厳密に100億円に達しなかったとしても、「100億の夢みようぜ!」のほうが楽しい。

--プランって達成しないといけないんだと思っていました。

岩井:プランっていうかビジョンですよね。では、「ビジョンは何のためにあるか?」と考えたらそこに向かって走るためにあると思っていて。

例えば「今、90億で10億足りないから、何よりも優先してすぐ発売できるものを開発し、何としてでも100億を達成しましょう」ということではないと思うんです。

--そういう考え方もあるんですね。

岩井:まあ達成したほうがいいに決まっているんですが、あまりそれに縛られてもつまらないなとは思います。そうなるとよい企画はできなくなってしまう。

「信頼」をきちんと伝えるということ

--もう一つ、お話を聞いていて気になったことがあるんですが……。

岩井:何でしょう?

--チームリーダーとしてチームをまとめようとするときにコミュニケーションは大事だと思うんですが、どうやってまとめているのかなーって。例えば飲み会を開くというのもあると思うんですが、私、正直飲み会が苦手で仕事が終わったらさっさと帰りたいんです。でも、それだと付き合いが悪いやつだと思われるんじゃないかと思っていて……。

岩井:それって日本だけだと思いますよ。私も飲み会はほとんどやってないですね。3か月に1回もないくらい。

--飲み会なしでもコミュニケーションはとれますか?

岩井:とれますよー(笑)。私もメンバーも出張が多く、顔を合わせるのも期間にしたら1か月のうち1週間くらいなんですが、コミュニケーションはちゃんと取れていると思います。わからないことはすぐにメンバーに「教えてー」ってスカイプで聞きます。あとはきちんとメンバーに「信頼をして任せているよ」ということを伝えることかな。信頼されているって思えないと責任を持って仕事ができないと思うんですよね。

--確かにそうですね。

できることだけ見つめればいい

--私の悪いところは飲み会に行かないくせにあとから「やっぱり行っといたほうがよかったかな」ってウジウジ考えちゃうところだと思うんです。

岩井:お話を聞いていると「こうしなければいけない」が多いんでしょうね。まわりの女の子を見ていてもそう思います。みんな真面目だなーって。でも前回も言ったようにどうしてもできないことは「無理」って言っていいと思うんですよね。すべてがマストではないと思います。

--そういうふうに言われるととても気が楽になります。

岩井:女性は男性と比較してやるべきことややりたいことが多くあり、時間がありません。だから与えられた仕事のすべてを完璧にこなす必要はないと思っていて。

自分の中で重要な仕事を選び、その仕事を完璧にこなすことで、達成感を自分に与えます。それが仕事を長く続けるコツだと思います。「全部完璧」なんて無理。それでできなかったら落ち込んじゃうでしょ? そうなると生産性も落ちるので、、自信があることや自分のやりたい仕事を完璧にやるほうがいい。それが前回チラッと言った「緊張と弛緩」ですね。

--緊張と弛緩!

岩井:そうです。プライベートも緊張と弛緩で。私、子どもに完璧なママじゃなくてもいいかなって思っていて。ただ、頼られたら全力で返すようにします。

できることは夢中になってやって、できないことは任せる。家事も洗濯物は娘がたたんでくれるし、他のこともできる人がやればいいんです。女の子は真面目だからプライベートでも美容院、ネイル、料理、運動ってマストを自分で増やしてしまう。でもできなくて落ち込んじゃう。できることだけを見つめればいいんです。

--そっかー。娘さんもそんな感じなんですか?

岩井:いや、娘は真面目ですね、もう少し緩めって言っているんですが……(笑)。でも、世間も女の人に無理なことを両立させようとしているし、女性自身も全部やろうとしてる。そんなの無理です。「私、無理なんで」でいいと思います。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)

「#両立って必要?」キャンペーンがスタート

「仕事と家庭」「恋愛と仕事」「有能さと可愛げ」などなど……私たち働く女性の周りにはたくさんの両立が存在します。「どっちも手に入れたい!」という人もいれば「でもそれも大変そう」という人や「そもそもそんなこと意識したことなかった」という人もいるのでは?

そんな「両立」について、ちょっと立ち止まって考えてみない? というわけで、ウートピ編集部では9月11日から「#両立って必要?」キャンペーンをスタートしました。あなたが普段感じていることをハッシュタグ「#両立って必要?」をつけてSNSでつぶやいてください。皆さまからの生の声をお待ちしております。