国際NGO「AAR Japan(難民を助ける会)」シリア人スタッフのラガド・アドリーさん

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強制移動を強いられた人は過去最多に


本記事はGARDEN Journarism(運営会社:株式会社GARDEN)の提供記事です

今、シリア難民支援の現場で何が起きているのか。実態を知るため、2017年6月から国際NGO「AAR Japan(難民を助ける会)」に新しく迎えられたシリア人スタッフのラガド・アドリーさんにお話を伺った。貴重な当事者の声だ。

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が6月19日に発表した報告書によると、2016年末時点で家を追われた人の数は6560万人に上り、2015年末時点と比べて約30万人増えたことがわかった。

【シリア難民支援】AARシリア人職員 ラガド・アドリーさんインタビュー「知って欲しい、本当のシリアを」

6560万人の内訳は、難民、国内避難民、庇護申請者の3つに分けられるが、難民の数は、過去最多となる2250万人に上った。パレスチナ難民のほか、550万人ものシリア難民や昨年急増した南スーダンの難民問題が特に深刻だ。南スーダンでは7月から2016年末までに73万9900人が国外に避難。難民の数は187万人に膨らんだ。

また、シリア、イラク、コロンビアなどで多く発生している国内避難民の数は、2016年末現在で4030万人。母国から逃れ、難民として国際的な保護を求めている庇護申請者の数は2016年末時点で280万人となっている。

UNHCRによると、6560万人とは、平均して、地球上の113人に1人が避難を余儀なくされていることを意味するという。これは世界で21番目に人口が多いイギリスより多い人数だ。

シリア人難民最大の引受先トルコで、困窮する難民


シリアからの避難中に親を殺されたり、親とはぐれたままの子どもも…

GARDEN Journalismでは、トルコでシリア難民支援を続けるNGO「AAR Japan(難民を助ける会)」を取材してきた。人々が安心して学んだり、過ごしたりできるコミュニティセンターを3年前に設置。シリアから逃れた人たちがトルコで暮らしていけるようさまざまなサポートを行っている。

堀 潤(以下、堀):どうしてこちらのAAR Japanで働くことになったのですか?

ラガド・アドリー(以下、アドリー):ずっと前からシリアでもいろいろ活動していて。赤新月社(赤十字)で活動していて。シリアを離れたといっても、シリア人のための活動をやめたいわけではなかったので。もともと日本語を専攻していて、日本で活躍しようと思っていまして、日本でいろいろ探したらAAR Japanがよくいろいろなところで活動していますので、AAR Japanに入ったらと思っていました。

シリア人スタッフの祖国への思い

:今シリアでは大変な状況が続いていますが、祖国にはどのような思いを抱いていますか?

アドリー:複雑な思いです。早く今の危機を終わらせるために毎日頑張っていきたいと思います。

:日本で活動してどのようなメッセージを発信したいと思いますか?

アドリー:シリアは遠く離れた国だからと、自分と関係ないという思いを持つ人がいます。日本だけじゃなくて、いろいろな世界で。私たち全員人間なので、人間が人間のために何かをやらないと。人間が困ったら、誰かが助けないと困りますので。なので、みんながみんな支え合ったほうがいいと思います。よろしくお願いします。

:どんなことをいちばん知ってもらいたいと思いますか?

アドリー:まずは知ってほしいです。本当のシリアを。戦争中のシリアではなく、本当のシリアをまずは知ってほしい。もちろんAARとかに寄付をするのも支援となりますが、いろいろなところに行ってシリアのことを伝えてくれたらと思います。

:本当のシリアというのはどんなシリアですか?

アドリー:平和なシリア。紛争の前のシリア。

:いつまでシリアにいて、いつからシリア国外に出られたんですか?

アドリー:まずは千葉大学で1年勉強をしに2010年に行って、そこで紛争が始まりました。私が離れた時と戻ってきた後のシリアは全然違っていました。それで2011年9月シリアに戻って、そこでずっと去年までシリアでずっと活動をしていました。去年日本に来ました。

:シリアの地域でいうとどのあたり?

アドリー:ダマスカス、首都。

:戻って、ご自身の国が混乱をしているというのは、悲しかった? つらかった?

アドリー:まずは、そこまでは苦しい時期ではなかったですが、初めでしたので。でもどんどん激しくなってきて、どんどんそれを目の前で、周りの人も……。もちろん誰にも影響はありましたので、だからそれを見て、自分たちが何かしないと誰もしないので、自分たちで何かをしようと赤新月社に入りました。

:ご自身の周りや、ご自身を含めて、どのような状況になったのですか?

アドリー:私は恵まれているほうというか、家族も失ってないし、家もありますので、周りの人よりはまだマシと言われますけど。でも周囲には、家をなくした親戚もいますし、家族の1人をなくした友達もいますので、影響はないとは言えないです。

シリアが再び平和な地域になるには?

:絶え間ない世界中からの支援が必要だなと思いますけど、どんなふうにすればシリアが再び平和な地域になれるのか?

アドリー:いろいろありますので。みんなが個人個人のできることをやってくれれば。たとえば、寄付金のできる人は寄付金をしてくれれば。また、何かを得意な人はシリア人にそれを教えてくれれば。あるいはメディアの人はそれを伝えてくれれば。それぞれの立場でできることがあります。

:なぜいろいろな国の中から日本に関心を持ち、そして日本に来ることを選んだんですか?

アドリー:母がJICA(国際協力機構)で働いていて、そこに日本人の方もいらっしゃって、そこで子どもの頃からいろいろと日本のことを知ったり、とても日本という国に興味を持ち始めて。それで自分も日本でいろいろ勉強したり、活躍したりできたらと。シリアに帰ったら。それは戦争の前の話でしたけど、その時からでもシリアを改善しようと思っていました。でも今はさらに問題が起きましたので、シリアに戻ったら自分は教育に興味を持っていますので、教育機関で活動しようと思っています。

:このAARで活動を学んだりして、またシリアに戻られて貢献活動したい?

アドリー:そうです。

:どれくらい日本にはいるつもりですか?

アドリー:それはまだわからない。難しい質問。

私たちのことを忘れないでください

:そのためにもやっぱりサポートが必要ですよね。いよいよ研修が始まりますが、ここでは具体的に何をやるんですか?


アドリー:トルコチームのメンバーとして報告とかリポートを書いたりとか、現地チームとのやり取りとか。最初は、できることからなんでもやりたいです。

:改めて、日本の人たちにメッセージをください。

アドリー:私たちのことを忘れないでください。これはシリア人としての話。

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マンスリーサポーターは、毎月定額のご寄付を継続的にお寄せいただく支援の方法です。継続的に活動を支えていただくことで、私たちは紛争・災害などの緊急時に、迅速に命をつなぐ支援を届けることができます。また、地雷対策や障害者支援など、息の長い活動に取り組むことも可能です。「何かしたい」というあなたの思いを、必要としている方たちのもとへ、確実にお届けします。
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障がいのあるシリア難民の家庭48世帯に1年間、家庭でできるリハビリの指導を提供することができます。


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