犬も認知症になる

近年、獣医療の進歩や栄養バランスの良いドッグフードの普及、そして飼育環境の変化などにより犬の平均寿命が延び、人間と同じく犬も高齢化が進んでいます。愛犬と一緒に過ごせる年月が長くなることは飼い主として喜ばしいことですが、犬の高齢化に伴って「ボケ」とも呼ばれる犬の認知症が増加しています。

犬の認知症とは?

犬の認知症は、正確には「認知機能不全症候群(CDS)」と言い、脳細胞が減少し、運動能力が低下したり、一度学習したことを忘れたり、周囲とのコミュニケーションを取ることが難しくなったり、感情が乏しくなったりした状態のことを言います。13〜15歳から症状が出やすくなります。

犬が認知症になる原因はまだはっきりとは解明されていませんが、老化に伴って脳が委縮したり、神経に毒性を持つβ-アミロイドというタンパク質などが脳に沈着することが発症に関係していると考えられています。また日本犬、特に柴犬の認知症発症率が高いことから遺伝的な素因があるとも考えられています。

高齢になったからといって全ての犬が認知症になるわけではありませんが、私たち飼い主は愛犬が認知症になる可能性を考え、犬の認知症について知識や理解を深めておくべきと言えるでしょう。

それが、早期発見と早期治療につながります。そこで今回は、認知症の症状が出てきている犬が見せる行動やしぐさについて、そして認知症の対処法と予防法についてもご紹介していきたいと思います。

認知症の症状が出てきている犬が見せる行動やしぐさ、対処法

犬が認知症を発症すると行動やしぐさに様々な変化を見せるようになりますが、症状は一気に現れるのではなく、ひとつ、またひとつ…とゆっくり現れるのが通常です。

ですが、生活環境の変化などが引き金となって、急速に症状が悪化する場合もあります。認知症が疑われる行動やしぐさに気づいたときは、早めに動物病院へ相談しましょう。

では、認知症の症状が出てきている犬が見せる行動やしぐさ、併せて対処法をご紹介していきます。

,阿襪阿襪汎韻絃貊蠅鯤發回る・徘徊をする

ぐるぐると同じ場所を歩き回ったり、徘徊(あてもなくとぼとぼと歩き続けること)をするのは、認知症の犬によく見られる行動のひとつで、何時間も歩き続けることもあります。症状が進むと方向転換や後退することができなくなるため、徘徊をして何かの角に頭をぶつけたり、家具などの隙間に入り込んで出られなくなることがあります。

対処法

歩くのを止めさせることは難しく、無理やり止めさせると大きな声で鳴いたりするため、気が済むまで歩かせてあげるのが良いでしょう。

ですが、物の隙間に入り込んでしまって身動きが取れなくなったり、何かにぶつかってケガをする危険があるので、家具などの間に物を置いて隙間を埋めたり、家具の角にはクッション材を貼るなどして安全対策をしましょう。

また、柔らかい素材のサークルや、お風呂マットなどをつなぎ合わせて円形状にしたものをサークルに入れて円形サークルを作ってあげればそれに沿ってぐるぐると歩くことができ、ぶつかってもケガをする心配がありません。

⊃後すぐに食事を欲しがる

年を取るにつれ食が細くなっていくことが多いですが、認知症になると記憶力の低下や満腹中枢の異常によって食事をしてもすぐにまた欲しがることがあります。そして、与えれば与えるだけばくばくと食べますが太らず、下痢をすることもほとんどありません。

対処法

1日に与える食事のトータル量は変えずに、与える回数を増やしましょう。また、転がしたりするとフードが少しずつ出てくる知育玩具を取り入れれば、少量のフードでも食事にかける時間が長くなり、脳の活性化にもなります。

F中寝て夜中起きている

認知症になると日中は寝てばかりいて、夜になると歩き回ったり鳴き続けたりすることがあります。いわゆる昼夜逆転になってしまうのですが、認知症によって体内時計が狂ってしまうことが原因と考えられています。

対処法

狂った体内時計を正常に戻すため、日光浴をさせましょう。そして、日中はあまり寝かせないようにこまめに声をかけたり、遊んであげたりしましょう。日中に刺激を与えて、夜はぐっすり寝かせるようにするのです。

ぬ詭弔をする

認知症になると夜中に鳴き出し、飼い主さんが止めようとしても鳴き止まないことがあります。ご近所迷惑になりますし、飼い主さんは寝不足になってしまうので、飼い主さんにとって最も負担の大きい症状と言えるでしょう。

対処法

痛みや不快感など原因があって鳴く場合は、その原因を取り除いてあげるようにしましょう。

寂しくて鳴き続ける場合は、声をかけながら優しくなでてあげたり、添い寝をしてあげたり、飼い主さんのにおいがついた衣類などをそばに置いてあげたりして気持ちを落ち着かせてあげると良いでしょう。

ですが、何をしても鳴き止まず夜鳴きが続く場合は、動物病院へ相談することもできます。サプリメントやお薬を処方してもらえるかもしれません。

イ茲ぼんやりしている

認知症になるとぼんやりしていることが多くなり、名前を呼んでも無反応であったり、以前は飼い主さんが帰って来ると喜んでお迎えしてくれていたのにそれをしなくなったりします。

対処法

こまめに声をかけたりするなどなるべくコミュニケーションを取るように心がけ、これ以上症状が進行するのを防ぎましょう。飼い主さんとのコミュニケーションは、犬にとって良い刺激になります。

犬の認知症を予防するには?

現段階では犬の認知症を完治させることは困難とされていますが、予防することができる場合もあります。発症を完全に防げるわけではありませんが、少なくとも発症や進行を遅らせることにはつながることもあります。認知症の予防法をご紹介します。

サプリメントを与える

脳細胞に働きかけたり、抗酸化作用を持つDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などのサプリメントを摂取することで認知症の予防が期待されます。

特に夜鳴きの予防が期待できる場合があります。サプリメントを購入する際はかかりつけの動物病院へ相談し、獣医師の指示に従って、定められた用法や用量を守りましょう。

脳に良い刺激を与える

脳に良い刺激を与えることで脳が活性化され、認知症の予防につながります。
例えば、

声をかけたり、なでたり、マッサージをしてコミュニケーションを取る知育玩具を与えるたまにお散歩のコースを変えるドライブや旅行などに連れて行く

などが犬の脳に良い刺激を与えます。

まとめ

人間と同様、犬の認知症も放っておくとどんどん進行してしまいます。ですから、飼い主さんが愛犬の異変に早く気づいてあげることが大切です。

現在のところ認知症を完治させることは難しいですが、適切な治療である程度進行を遅らせたり、症状を改善することは可能ですから、早期発見と早期治療ができるように努めてあげたいですね。

認知症の症状に見えても別の病気である場合もあるので、愛犬に気になる行動やしぐさが見られたときは早めに動物病院へ連れて行き、診断をしてもらいましょう。

「うちの子はまだ若いから大丈夫」と思っていても、犬は私たち人間より速いスピードで老いていくため、あっという間にシニア期を迎えます。早いうちから認知症の予防を心がけ、シニア期に備えましょう。


(獣医師監修:加藤桂子先生)